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【社説】

サムスン捜査 政・財閥癒着に決別を

 韓国最大の財閥サムスングループの実質トップが贈賄の疑いなどで逮捕された。朴槿恵大統領の疑惑も追及されよう。財閥企業による不正は、歴代政権でも繰り返された。政経癒着の根は深い。

 政権から独立した特別検察官チームはサムスン電子の李在鎔副会長を逮捕した。

 李副会長はサムスングループ系列企業の合併について政府が協力する見返りに、朴大統領の友人である崔順実被告らに巨額の資金を提供した疑いがある。また、検察官チームは朴大統領が担当閣僚に対し、李副会長の希望通り合併を後押しするよう指示した疑いがあるとみている。

 朴氏は国会で弾劾訴追され職務停止中だ。サムスンの贈賄容疑は、大統領の罷免の可否を審理している憲法裁判所の判断にも影響を与えるとみられる。

 大統領の親友の女性による国政介入で始まった一連の疑惑は、贈収賄という核心部分にたどり着いたといえよう。果たして「大統領の犯罪」を立件できるか不透明な部分は多いが、韓国が抱える政経の「もたれあい体質」が問われているのは間違いない。政治と財閥の癒着構造に決別する、新たな一歩を踏み出してほしい。

 韓国経済の中核は、創業者一族が経営権を持ち多分野で活動する財閥だ。政府は一九六〇年代から特定企業を選んで投資し、国際競争力を高める戦略を進めた。その結果、短期間で繁栄を実現する「圧縮成長」が実現し、途上国の中規模企業は、財閥と呼ばれる巨大コンツェルンに姿を変えた。

 韓国経済が多くを輸出に頼る以上、製品開発や人材育成に優れる財閥企業が今後もけん引車であるのは否定はできない。

 深刻なのは、民主化を実現してから約三十年経ても財閥と政権との癒着が続いていることだ。財閥は政府に事業許認可や規制緩和を働きかけ、国会議員への不正な政治資金供与や、オーナー家の支配を守ろうとする強引な経営が批判されている。朴政権下でも、携帯電話のSKと、食品、観光が主力のロッテの最高幹部が訴追された。

 昨年暮れからの市民の大規模デモ、それに続く司法による国政疑惑の解明は、朴大統領個人や政界に対する追及だけで終わってはならない。

 政経癒着の構造をどう改めて、雇用や福祉にも手厚い社会をつくっていくか。韓国の本当の課題はそこにある。

 

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