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【言わねばならないこと】

(87)戦争は加害者も生む 児童文学作家・那須正幹さん

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 四歳の時に憲法が施行された。当時、父親が「これから日本はデモクラシーの国になる」と家族に話したのを覚えている。父親も「生まれ変わらなくちゃ」と思い、一生懸命、勉強したんだと思う。遺品にボロボロになった憲法の本があり、赤い線がいっぱい引いてあった。

 昔は誰もが戦争はこりごりだと思っていて、憲法に不満を持っている人や「米国が作った憲法だ」なんて言う人は周りにいなかった。私は広島で生まれ、三歳で被爆した。原爆で焼け野原になった広島の人々は戦争しない国を大歓迎していた。

 それが、朝鮮戦争が始まって警察予備隊ができて、あれよあれよという間に自衛隊になった。でも、憲法九条があったから朝鮮戦争に出兵しなくてよかったし、ベトナム戦争にだって自衛隊は行かなかった。その後、国連平和維持活動(PKO)などで海外に自衛隊が出るようになったが、戦闘はできませんよという歯止めは利いていた。

 安倍政権は集団的自衛権の行使を認め、安全保障関連法を成立させてしまった。もう、九条を変えたい人たちにとって、改憲しなくてもいいところまできちゃったのではないか。でも、無理が通れば道理が引っ込むというのではだめ。どこかで正さなくてはいけないという思いで、安保法違憲訴訟の原告となった。

 昨年、戊辰戦争や沖縄の地上戦で戦闘に加わった少年たちを描いた「少年たちの戦場」という児童文学を発表した。子どもたちはいつも戦争の被害者として文学で描かれてきた。でも、戦争は苦しかった、ひもじかっただけではない。加害者にもなり得る戦争の実態を子どもたちに伝えたい。私は言葉の力を信じている。

<なす・まさもと> 1942年、広島生まれ。県立島根農科大(現・島根大)卒。作家。「ズッコケ三人組」シリーズや「絵で読む広島の原爆」など著作多数。

 

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