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魔王軍の幹部になったけど事務仕事しかできません 作者:悪一

2-3.たとえそれが誰であっても

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巧遅は拙速に如かず、らしいですよ!

2話連続投稿です(1/2)

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不評だったアキラくん暴走話最新3話を削除し、新しく書き直しました。削除したこの話は黒歴史として忘れていただければ幸いです。
それに伴い、誠に勝手ながらその話に関する感想を賛否問わず50余件削除することにしました。
これらの措置は、私の精神衛生上の問題で書くのが辛くなったこと、自分自身、これがあまりよろしくないのではないかと思い始めためです。
未読or読んでいる途中で、削除されたから読めなかった等の意見もございましたが、再掲載の予定はありません。忘れてくだされば幸いです。

この度はご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでした。(この前書きは数日後に削除する予定です)
「ありがとうレオナ、助かった」
「当然よ! 私の魔像ちゃんはどこぞの車輪と違って汎用性に優れた傑作なんだから! これは工兵隊向け魔像の開発予算がとれるかもね!」

 まったくもってその通りだった。

 街道復旧は工兵隊とレオナら魔像部隊のおかげで想定より早く終わったのである。
 アルストロメリア工兵隊向け改造も一理あるかもしれないが、兵站に負担が出そうだ。

 一方、この功績に不満を持つ者もいる。

 それがヤヨイさん。

「……私も、頑張った」

 レオナのあからさまな煽りに口を尖らせていた。

 ヤヨイさんもヤヨイさんで、故障した魔像を修理したり、タチバナの自爆機能を使って大き目の障害物を破壊するなどの作業を行っていた。

 ので、ちゃんと褒めてあげる。

「ヤヨイさんも、ありがとうございます。助かりました。今度、何か奢りますよ」
「……んぅ」

 彼女の頭を撫でると、なんとも言えない可愛い吐息が漏れる。

 そのまま頭をわちゃわちゃして、ついでに犬猫みたいに顎の下とかを撫でてあげたくなる。
 だけど、狐にそれはなんか違うだろうということでその衝動をグッと抑えた。

 しかし、ロリな彼女も年月がたてば大人になる。
 大人になったヤヨイさんはどんな人になるのか大変興味あるけれど、この可愛さは今だけでもある。今のうちに楽しむのもそれはそれで――

「んっ、あんっ、んー……だ、だめっ……」
「ハッ」

 しまった、衝動が抑え切れてなかったのかつい無意識にやってしまった。

「アキラちゃん、逮捕」
「違うレオナ、これは違うんだ」
「じゃあ私にも何か奢って、お酒でいいから」

 諸君、ロリには気を付けよう。お兄さんとの約束だ。さもないと逮捕される。


 まぁ俺の財布事情がやばくなったことはさておき、これで流通が再開した。

 通行止めになっていた地点では既に魔像と馬車が渋滞を起こしており、それを捌くのに半日以上かかってしまった。

 また予想外の事態に後方が慌てたのか、荷車の中の物資がかなり煩雑に詰め込まれていて、何がどこにあるのかが分からず、見つかっても損壊している場合があるなど、かなりグダグダだった。

 こういう時こそ落ち着いて対処しろ、ということだな。

 自分がなんとか出来ると勘違いして盗んだ物資と魔像で走り出すような愚行をしがちだが、そこは深呼吸して――なんだか胸が痛いのはなぜだろう。
 どこかで俺がやらかしたのだろうか? そんな記憶はないが、いやしかし何か思い出してはいけないような……。

 ま、まぁとにかく、次の仕事に取り掛かろう。

 まずは街道一本じゃ不安なので、もう一本も開通させて状況を安定させること。

 もうひとつは、ピエルドーラ陣地以外の兵站に関してである。

 地震が数百年ぶり、大津波はほぼ初めての経験である魔王軍にとって、戦争じゃない有事というのは不慣れだ。
 さらにその災害の特殊性も相まって、かなりてんやわんやしている。

『アキラ様、事務員が不足しています。人員補強のため、リイナさんだけでもいいので戻ってきてくれませんか?』
「残念ですが、こっちも大変なんですよ。多くの文書が流出して、現状把握ですら難しい状況でして。そちらで何とかしてください」
『無茶ですよ!』

 という感じである。
 ペルセウス作戦のような大規模戦の兵站ならまだ多少のノウハウはあるのだけれど、これが災害になると通用しない。

 津波で流出した物資や装備は数多くあり、その物資を再び手配しなければならない。

 その傍ら軍隊は救命活動や街道復旧作業などやることが膨大で、それらに使う物資も調達しないとダメ。

 街道は各所で浸水、破損、通行止めになっており物流が停滞。
 魔像と馬車、さらには廃棄予定の骨董品まで総動員させて、まだ兵站は回っていない。

 どこの部隊・基地が何をどれくらい必要としているのかさえ、情報網が各地で寸断され、混乱状態にある中では難しい作業だ。

 例えば、A地点では魔像が足りず、B地点では魔石が足りず、C地点では食糧が足りず、D地点は混乱状態にあってそういう要望が届かないとしよう。
 従来の方法であれば、A地点に魔像を、B地点に魔石を、C地点に食糧を送り、D地点には兵站関係者を本部から送る、などの対策をする。

 だがこういう状況じゃ、この方法は通用しない。
 各地域の必要物資を整理・把握するための情報網と人員がいないから。

 さらに多くの民間人に被害が出ている「災害」の場合、軍人は本当に必要な物を要望に上げないことがある。
 要は、我慢してしまうのだ。「民間人が我慢してるのに、俺らが身勝手に要望なんてあげて補給を受けていいのか。まずが民間人が優先なのに」という感じで。

 だから本当に何が必要なのかがわからなくなる。

 だから、思い切った策が必要になる。

「ソフィアさん。こうなったら『推進補給』で行きましょう」
『なんですか、それ』
「ある意味、兵站の理想とはかけ離れた補給方法ですよ」

 推進補給というのは、ひとつの部隊から要望――例えば魔像を動かす魔石が足りない――があったら、「当該地域全ての部隊から、実際に要望の有無を問わず要望があったことにする」というシステムである。

 こうすることで情報処理がある程度省けるし、指揮命令も簡略化できる。

 無論「魔石が十分にあるところにも魔石が届く」という事態もあり得るのだが、全体で見れば合理的、ということだ。

 これは、実際に日本で災害時に行われた方法でもある。

『い、いいんですか、そんなこと。アキラ様が嫌う「無駄」を助長する結果になるのでは。それに前例がありません』
「『無駄』だとは思いませんね。地域全体を俯瞰すれば『無駄が少ない』ですし。それに、有事に求められているのは完全性ではなく柔軟性ですよ」

 巧遅(こうち)拙速(せっそく)()かず、と昔の人は言った。

 完璧だが遅すぎて間に合わない補給より、不完全でも速く部隊に物資を届けることの方がいい。

「補給路と情報網、人員が安定するまではこれで行きましょう。
 確かに前例がなく戸惑うこともあるかもしれませんが、そこが我ら兵站局の腕の見せ所ですよ。兵站局本部が主導し、被災地域に対し推進補給を行ってください」
『……わかりました。やってみます』
「お願いします」

 通信を切り、目の前のことに没頭する。

 不安がないわけじゃないが、後方のことはソフィアさんに任せたのだ。
 最前線にいる以上、最前線の兵站将校として奮闘するのが俺の役目だ。

「リイナさん。到着した物資の仕分け作業の方はどうですか?」

 そう、傍にいるはずのリイナさんに聞いてみたが、返事が帰ってこなかった。

「リイナさん? って、あれ?」

 神隠し、だと? いつの間にか消えていた。

 仮司令部にいないとすると、物資の受け渡し場所だろうか。
 そういうのは別に立ち会う必要はない。師団行李にでも任せればいい。

 そう思って受け渡し場所に向かうと、そこでは涙目になりながら作業するリイナさんの姿が。

「なな、なんで赤い箱に小麦が入っているんですか! 赤は魔石用ですよ! こっちも魔石用の箱に入ってます! どういうことなんですかぁ!」

 なるほど、中身がカオスなのか。DVDとかゲームとかでありがちなやつかな?

「リイナさん、大丈夫ですか?」
「局長様、全然大丈夫じゃないですよ! 箱の中身が全然わからなくて、一々箱を開けないと何が入ってるか確認できないんです!」
「あー……」

 輸送隊の慌てぶりがこんなところにまで。

 後方の輸送総隊司令官ウルコさんに確認した所、やはり混乱があるらしい。
「急いで物資を送らないといけない!」という焦りからか、無秩序に物資を詰めてしまったようだ。

 おかげで、現場で箱を全部開けなくてはならなくなった、と。

 地獄かな? 輸送隊のゴブリンやオークたちが文字が読めない弊害がこんなところにも。

 識字率 早く上げてと 泣き叫ぶ。
 アキラ、心の俳句。

「比較的余裕のある部隊――たぶん戦闘部隊から人員を割きます。リイナさんは彼らの指揮をお願いできますか?」
「ふにゃ!? わ、わ、私が戦闘部隊の人の指揮を執るんですか!?」
「お願いします。余裕ないんで。それとも私と交代します? 今から仮司令部でオリベイラ司令官らと合同会議なんですが――」
「こっちでいいです! いえ、こっちがいいです! オリベイラ司令官さんこわいですから!」

 うむ、正直でよろしい。俺もオリベイラさん怖い。次は何の無茶を言うのだろうかと思うと戦々恐々である。

「それでは任せました。私は会議ですが、何かあれば呼んでください」
「はい! ま、任されました!」
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