安倍政権との対立軸を鮮明に示せるかどうか。民進党が正念場を迎えている。

 次の衆院選に向けて、蓮舫代表の執行部が検討する「2030年原発ゼロ」をめぐり、党内から賛否両論が出ている。

 従来の民進党の原発政策は、あいまいさが指摘されてきた。

 将来的な原発ゼロを目標とするものの、「30年代原発ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入」という幅のある表現を使ってきた。背景には、党内に「脱原発派」と、電力などの労働組合出身議員ら「原発容認派」が共存する実情がある。

 安倍政権は原発維持の姿勢を変えないが、世論は原発を使い続けることに否定的だ。原発再稼働の是非について聞いた昨年10月の朝日新聞の世論調査では57%が反対し、賛成は29%に過ぎない。

 蓮舫執行部が検討している「30年」への前倒しは、想定より速いスピードで節電が進んでいることなどを受けて可能と判断したという。

 「原発ゼロ」の到達目標を、具体的に示すことには意義がある。ただ、民進党に求められるのは、それにとどまらない。

 目標達成への道筋として、稼働期間を限る「40年廃炉」をどう徹底するか。核燃料サイクルや原発輸出はどうするのか。再生可能エネルギーの普及や節電をどう促していくか。

 「原発に頼らない社会」の青写真を実現可能な選択肢として描き、説得力あるかたちで国民に示すことが求められている。

 思い起こすべきは昨年10月の新潟県知事選だ。原発再稼働に慎重な米山隆一氏が、共産、自由、社民3党の推薦を受け、与党系候補を破って当選した。

 民進党はこの選挙で自主投票に終わった。支持組織である電力総連などが加盟する連合新潟が、対立候補を支持したことに配慮したとされる。

 だが、朝日新聞社が実施した出口調査では、民進党支持層の85%が米山氏に投票していた。支持層の期待と、党の判断の落差の大きさが読み取れる。

 今回、民進党が脱原発でさらに踏み込むことができれば、昨年夏の参院選で一定の成果をあげた野党3党や市民との共闘を、次期衆院選へとつなぐ旗印ともなりうるだろう。

 もちろん、党内や支持組織の労組などを丁寧に説得する努力は欠かせない。そのうえで、脱原発を望む民意にこたえる結論を出せるかどうか。

 民進党はどこに立脚し、何をめざす政党なのか。そのことが厳しく問われている。