論語 公冶長第五 1

論語 公冶長第五 1

子謂公冶長。可妻也。雖在縲絏之中。非其罪也。以其子妻之。子謂南容。邦有道不廃。邦無道免於刑戮。以其兄之子妻之。

子し、公冶長こうやちょうを謂いう、妻めあわす可べきなり。縲絏るいせつの中うちに在ありと雖いえども、其その罪つみに非あらざるなりと。其その子こを以もって之これに妻めあわす。子し、南容なんようを謂いう、邦くにに道みち有あれば廃はいせられず、邦くにに道みち無なきも、刑戮けいりくより免まぬかると。其その兄あにの子こを以もって之これに妻めあわす。

謂 … ここでは批評するの意。
公冶長 … 孔子の門人。姓は公冶、名は長、字あざなは子長。
妻 … 「めあわす」と動詞に読む。娘を嫁にやる。
縲絏 … 牢獄のこと。「縲絏之中」は獄中。
絏 … 皇侃おうがん本等では「紲」に作る。唐以降、太宗の諱「世民」の「世」を避けて「絏」に改めている。避諱・改字。『十三經注疏』の校勘記では「唐人避太宗諱改作絏」と記されている。『史諱擧例』では「从世之字改从云、或改从曳」と記されている。金谷治訳注岩波文庫本では「縲紲」に作り、「通行本で『縲絏』とあるのは、唐から後の誤り」との注があるが、これは誤りであろう。ウィキペディア【避諱】参照。
其子妻之 … 孔子が自分の娘を公冶長に嫁がせた。
南容 … 姓は南宮なんきゅう、名は适かつ(括とも)、字あざなは子容。孔子の門人といわれているが異説もあり、はっきりしない。
不廃 … 見捨てられることなく、必ず用いられる。
刑戮 … 刑罰に処されること。
兄之子 … 孔子には孟皮もうひという異母兄がいた。その孟皮の娘のこと。
「子謂南容……」以下が別の一章となっているテキストもある。

宮崎市定は「孔子が公冶長について言った。彼は婿にしていい青年だ。いま未決監に収容されているが、無実の罪で嫌疑を受けただけだ、と。自分の娘と結婚させた。孔子がまた南容について言った。世の中が治まっている時には重く用いられ、世の中が乱れた時でも、刑罰にひっかからない人物だ、と。自分の兄の娘と結婚させた」と訳している(論語の新研究)。

下村湖人(1884~1955)は「先師が公冶長こうやちょうを評していわれた。あの人物なら、娘を嫁にやってもよい。かつては縄目の恥をうけたこともあったが、無実の罪だったのだ。そして彼を自分の婿むこにされた。また先師は南容なんようを評していわれた。あの人物なら、国が治まっている時には必ず用いられるであろうし、国が乱れていても刑罰をうけるようなことは決してあるまい。そして兄上の娘を彼の嫁にやられた」と訳している(現代訳論語)。


関連記事