【ゲームをアイトラッキング】某格ゲを猛者と初心者のプレイ視線を比較分析してみた
もはや『おかいもの』とは全く関係ありませんが、今回はゲーム(いわゆる格ゲ)のアイトラッキング(視線追跡)のレポートです。NHN テコラスには格ゲがとんでもなく強い方が居るということを知り、猛者と素人で視線の動きは違うのか、と考えたことがきっかけです。
元々は、『Web Daisukikko Meetup -12(#WDM12)アイトラッキングネタを仕込んだので簡易レポート』でご紹介したイベント向けに実施したものだったのですが、興味を持たれる方が多かったので別途レポートすることにいたしました。
※ゲームの開発元への許可を得ておらずゲーム画面そのものはお見せできないので、棒人間で置き換えた画面でご確認ください。
目次
調査概要
プレイ中全体で見る視線の集まり方
特徴1 瞬間瞬間で視ている場所
・Aさん 相手も自分も追いかける
・Bさん キャラの間、もしくは相手キャラを視る
・Cさん キャラの間を視る
特徴2 体力ゲージ
・Aさん 体力が気になって仕方ない
・Bさん 時々視ているが、一瞬だけ
・Cさん 勝ちを確信したときだけ
周辺視野
まとめ
ゲームのアイトラッキング調査概要
被験者さん … 3名(格ゲ初心者のAさん、やり込んでいるBさん、とんでもなく強いCさん)
タスク … オンライン上の他プレイヤーとのマッチ
その他 … ゲーム機本体からキャプチャボードを通してPCに画面を出力しているため、若干の遅延やフレームレート落ち(60fps ⇒ 30fps)が発生
※Cさんは異次元の強さを誇るのですが、Bさんもかなりのやりこみ勢です。
プレイ中全体で見る視線の集まり方
まずは、プレイ中全体を通してどこに視線が集中しているか見てみましょう。プレイ中の視線(ラウンド開始からKOまで)をヒートマップにしてみました。
初心者のAさん・やり込み勢のBさん・とんでもなく強いCさんの順番です。まずここで、Aさんに比べ、Bさん・Cさんの視線は中央に集中していることが分かります。一方、Aさんは画面の隅から隅まで目線を配っています。
なぜこのような差はできたのでしょうか。今回のアイトラッキングでは、2つほど特徴が見えてきました。
特徴1 瞬間瞬間で視ている場所
プレイ中はキャラクターが動いていますから、プレイ中全体のヒートマップだけでは理由が見えてきませんので、瞬間瞬間でどこを視ているか切り取ってみましょう。
以下、赤い点が瞬間的(約0.5秒間)の視線中央の移動を表しています。緑色は自キャラです。
Aさん 相手も自分も追いかける
Aさんの視線です。相手キャラがジャンプすればそれも追いかけますし、自キャラが飛ばされればそれも目で追いかけます。
Bさん キャラの間、もしくは相手キャラを視る
Bさんは、自キャラと相手キャラの間、もしくは相手キャラを見ているという視線の動きでした。Aさんとは異なり、ジャンプしたり飛ばれたりした場合にそれを追いかける動きは見られません。なるべく画面中央に視線を集中させ全体を見つつ、相手キャラの動きに注意を払っているような印象でした。
では、同様に視線が中央に集中していたCさんとの差はあるのでしょうか?
Cさん キャラの間を視る
Cさんの視線です。Cさんは、常に自キャラ・相手キャラの間を見ており、どちらかのキャラクターを注視することはありませんでした。
なお、プレイしているところを横から見ていた初心者の私も、動くものを目で追いかけていました。つまり、Aさんと同じですね。
体力が無くなったら負けてしまうゲームですから、私としては画面上部の体力ゲージも気になります。では、今回の3名は体力ゲージをどのように見ていたのでしょうか?
特徴2 体力ゲージ
Aさん 体力が気になって仕方ない
Aさんは、終始体力が気になって仕方ない様子でした。横から見ていた私もそうでしたが、自分が飛ばされたりすると一時的に操作を受け付けなくなるので、その瞬間に自分と相手の体力を確認しているような動きでした。
気絶してしまい間違いなく勝てないような状況になっても、まだ体力を確認するほどです。
Bさん 時々視ているが、一瞬だけ
Bさんは、Aさんと比べ体力を視る頻度は少なめですが、それでもある程度確認しながらプレイしている様子でした。
Cさん 勝ちを確信したときだけ
Cさんは、自分や相手が飛ばされようが体力ゲージには目もくれません。偶然か狙ってかは分かりませんが、大技によるKOが決まるその瞬間だけ、相手の体力を確認していました。上記の画像の2枚目が、大技が決まり、初めて体力ゲージを視た瞬間です。
周辺視野
Cさんにヒヤリングをしてみたところ、もう一つの特徴を発見することができました。
これは画面右側に『カウンター』の表示(オレンジ色の場所)が現れた瞬間なのですが、Cさんはこのカウンター表示を視ていると言います。しかし、その瞬間の視線をチェックしてみると視線は前述の通り画面中央に位置したままです(本人は意識して周辺視野を使っているわけではないようでした)。
つまり、プレイする上で重要な画面中央に目線を置いて全体を把握しながら、周辺視野で重要な情報を読み取っているということです。
これは、初心者と強い人の視線の差という観点に加え、ゲームのインターフェースデザインを考慮する上でも参考になる要素かと思います(そんな事はゲーム業界の方は百も承知かもしれませんが…)。
まとめ
今回のゲーム(格ゲ)のアイトラッキングでは、初心者とそうでない人との違いというだけではなく、ハイレベルな人同士でもそこにどういう差があるのかが見えました。
- 初心者は慣れている人に比べどこを視るべきか分からず、視線がバラける
- ハイレベルな人同士でも、視線に違いが現れる場合がある
- 周辺視野を活用して余計な目線移動を減らしている
周辺視野については、ECモールのPCサイトをアイトラッキングした際のデータにもヒントがありそうです。
楽天市場やYahoo!ショッピングのような検索結果の表示方法が画像を一つ一つなぞるように視ているのと比較し、Amazon.co.jpでは気になる商品にだけ視線が集中している=周辺視野で見えている、と想像されます。