ドキュメンタリーのつもりが芸能番組部。
さらにダメ押しの「のど自慢」班配属。
面接がずっと報道の人だったので、当然報道部でドキュメンタリーを担当すると思いますよね。だけど1カ月の研修期間が終わって言い渡された配属先は「芸能番組部」。
あまりに驚いて「はあ?」って言ってしまって「はあ?ってなんだ!」って怒られました。しかも芸能番組部で言い渡された配属は「のど自慢」班で。まだバブルの名残がある時代だったので、希望あふれる(笑)若者にとってはキツかったです。
大学の友人との飲み会も嫌でした。NHKに入れて良かったねーって言ってくれるんですが、それで何の番組をやってるの?ってなるわけです。「のど自慢」って答えると、「あ、あれでしょ? キンコンカーン、キンコンカンコンカンってやつでしょ? あれやってんの?」てニヤニヤされる。本当に嫌でした。
とはいえ「のど自慢」は、実際楽しいんです。おじいちゃんもおばあちゃんから若い人までが同じステージであんなに楽しそうにしてる、しかも見る人もおもしろいなんて稀有な番組です。ただドキュメンタリーを目指した若手にとっては、やりきれない気持ちでした。
1年目の大晦日、ホールを走る同期を尻目に
独りNHKホールの外で交通整理。
この時期、同期とは一切しゃべりませでした。というよりも、しゃべれなかったんですよね。他の同期は『ポップジャム』とか『歌謡コンサート』とかクイズ番組とか、みんなゴールデンタイムの番組をやってました。卑屈になってましたね。
そんな中ほんとにがっかりする出来事がありました。芸能番組部の最大のイベントは、「紅白歌合戦」です。同期がホールの中で仕事している中、僕に与えられた仕事は、車両係。外で車の誘導をするんです。目の前を同期が、きらびやかな衣装をきたアーティストたちを誘導して歩いていきます。屈辱でした。
1年経つと研修があるんです。全国から同期が一年間で作った番組を持ち寄って、いろいろ学ぶわけですが、僕が持って行ったのは「のど自慢」。またくすくす笑われました。今思えば笑っていたのは単純にのど自慢がおもしろいからなんでしょうけど、当時の僕は、その笑い声が自分に向けられていると感じました。
そんなこんなのストレスから太り98キロぐらいになってしまいました。体重計が1周回るのを初めて見ました。(吉田氏の今の体重は68キロ)
ドキュメンタリーを作ることを夢見て入ったテレビ業界だったが、いきなり挫折を味わうことになった吉田氏。今振り返ると、自分から殻に閉じこもり気味だったという。このままではいけないと考え、4年目に申し出て広島局へと転勤した吉田氏は、初めてドキュメンタリーを制作する楽しさを知ることに。