南スーダンの国連平和維持活動(PKO)をめぐり、稲田朋美防衛相の答弁の揺らぎが目立つ。民進党など野党4党は、稲田氏の辞任を要求する方針で一致した。
防衛省は、南スーダンで昨年7月に起きた武力衝突の状況を、陸上自衛隊の派遣部隊が記録した日報を公表した。「戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘が確認される」など生々しい様子が伝わってくる。
日報に「戦闘」が頻繁に登場することについて、野党は、自衛隊の活動が、憲法9条やPKO参加5原則に抵触するのではないか、と国会で追及し、撤退を求める声も強まっている。
国会での論戦は、日報の表現ぶりや、その解釈に焦点があたっている。重要なのは、現地の情勢を正確に把握し、自衛隊としてどういう活動をしていくかの議論を深め、それと並行して有意義な活動ができなくなった時の撤退に向けた準備も整えておくことだろう。
政府は、この場合の「戦闘」は一般的な意味で使っているものであり、南スーダンには紛争当事者となるような国や国に準ずる組織はなく、法的な意味での「戦闘行為」は起きていないと説明している。
ところが、稲田氏の答弁は、憲法9条との関係が問題視されないよう、戦闘を武力衝突と言い換えていると受け取られかねないような内容だった。稲田氏が答弁に窮し、安倍晋三首相が引き取ってその場を収めることもたびたびある。防衛相の答弁が安定性を欠くようでは困る。
一方、今後、日報では「戦闘」の言葉をよく理解して使うように政府が指示したのも、本末転倒だ。現場の自衛隊員の生の報告を国会審議のために封じるようでは、正確な情報は伝わらない。
防衛省は、日報の情報公開請求を受け、当初は廃棄を理由に不開示にしたが、自民党議員から再調査を求められると、一転して電子データが残っていたとして、開示した。
電子データが残っていたことがわかった後、稲田氏に報告されるまで1カ月もかかったのは理解に苦しむ。稲田氏が省内を統率し、情報が迅速に報告される体制をとっていないことに原因があるのではないか。
防衛省の文書管理のあり方自体にも問題が多い。なぜ文書を廃棄する必要があったのか。稲田氏は「隠蔽(いんぺい)ではない」と語る。
第1次情報を廃棄すれば、都合のよい情報だけが報告されかねない。事後検証も難しくなるだろう。防衛省は半年間、保管するよう改めるというが、電子データを長期間保存するのは、難しくないはずだ。文書管理について抜本的に見直すべきだ。