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知育ノート

赤ちゃん、幼児、子供の力を伸ばす知育、知育玩具、関わり方やそれらに関する知識を紹介しています。

アンダーマイニング効果とは?具体例は?子どものやる気を削ぐ原因は?

心理学用語 心理学用語-アンダーマイニング効果

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子供に勉強を頑張ってほしいと思ったら、どういう行動をとりますか?

テストで良い点数を取ったら褒めたり、ご褒美をあげたりするのではないでしょうか?

こうした方法は、勉強に対する子どものモチベーションを高めるためによく使われる方法です。

しかし、逆効果になってしまう場合もあります。

つまり、褒めれば褒めるほど、ご褒美をあげればあげるほど、勉強への意欲を失い、学業成績が下がることがあるのです。

こうした現象を、心理学の世界ではアンダーマイニング効果と呼びます。

多くのパパママは、子どもの教育における「褒めること」の大切さは理解しており、「褒め方」にも気を配っています。

褒めたりご褒美をあげたりするのもその一環です。

しかし、怒ることに比べると「褒めることのデメリット」には目が向きにくいところがあり、褒めることで子どもがやる気を失っているとは気づかずに褒め続けたり、我慢できずに怒ったりしてしまいがちです。

アンダーマイニング効果は何が原因で起こり、また、どうすれば解消できるのでしょうか?

この記事では、アンダーマイニング効果の概要と具体例、原因、対応について紹介します。

アンダーマイニング効果とは

アンダーマイニング効果とは、内発的に動機づけられた(自分でやる気になっていた)行為について、外発的動機づけを行った(褒めたり、ご褒美を与えたりした)結果、モチベーションが低くなる現象です。

英語では、「undermining」と表記します。

アンダーマイニング効果は、教育現場や心理学の世界(精神科や心療内科、カウンセリングなど)はもちろん、スポーツ界でも良く知られており、スポーツ選手のメンタルケアやモチベーション管理を行う上で留意されています。

外発的動機づけと内発的動機づけ

心理学の世界における動機づけ(モチベーション)とは、人が行動を起こして目標に向かう過程や、行動の原因となるもののことです。

人の動機づけにはいくつも種類がありますが、アンダーマイニング効果に関係しているのは、外発的動機づけと内発的動機づけの2つです。

外発的動機づけ

外発的動機づけとは、褒められたり、ご褒美を与えられたり、強制されたりすることでもたらされる動機づけです。

いわゆる「受動的な」動機づけで、「飴と鞭による」動機づけと言われることもあります。

外発的動機づけに基づいた行動は、行動自体が目的ではなく、物理的報酬や周囲の評価といった目的に到達するために起こるものです。

具体例としては、いじめられないように立場が強い友人のいうことを聞いたり、欲しい物を買ってもらうために勉強したり、小遣いが欲しくて家事を手伝ったりすることが挙げられます。

一方で、良い高校に入るために受験勉強を頑張ったり、試合に出場するために練習に打ち込んだりすることも外発的動機づけです。

ご褒美や小遣い目当ての外発的動機づけと比べると、自発性が高いと言えます。

内発的動機づけ

内発的動機づけとは、本人の興味関心からもたらされる動機づけです。

外発的動機づけのようにご褒美や罰に関係なく自発的に起こる「能動的な」動機づけです。

具体例としては、大好きなスポーツに熱中したり、特定の勉強が好きでたまらず打ち込んだりすることが挙げられます。

個人差はありますが、楽しさ、充実感、知的好奇心、課題を達成した時の有能感などが内発的動機づけを起こす要因となっています。

外発的動機づけと内発的動機づけの差

外発的動機づけか内発的動機づけかによって、行動の集中、効率、継続性に差が生じます。

  • 集中:内発的動機づけに基づく行動の方が、外発的動機づけに基づく行動よりも高い集中力を発揮できる傾向がある
  • 効率:内発的動機づけに基づく行動の方が、外発的動機づけに基づく行動よりも効率が良い傾向がある
  • 継続性:内発的動機づけに基づく行動の方が、外発的動機づけに基づく行動よりも継続できる傾向がある

例えば、自発的に勉強する方が、ご褒美につられて勉強するよりも集中できますし、自分なりの勉強方法で効率的に進め、途中で投げ出さずにやりきることができます。

アンダーマイニング効果の具体例

アンダーマイニング効果の具体例をいくつか挙げてみます。

  • とにかく勉強が好きで毎日勉強していたら、親がご褒美をくれるようになり、意欲が低下した
  • パパママの手伝いをしたくて風呂掃除や食器洗いをしていたら、親が小遣いをくれるようになり、小遣いをもらえないと家事を手伝わなくなった
  • 被災地の人を助けたくてボランティア活動に参加したら、やたら褒められて報酬も渡されたので、後ろめたさを感じて参加しなくなった

いずれの例も、前段は、報酬や罰とは無関係に、好奇心、達成感、充実感を得たい気持ち(内発的動機づけ)からもたらされた自発的な行動です。

一方で、後段は、内発的動機づけによって起きた行動に対して報酬(外発的動機づけ)が与えられたことで、意欲を喪失・低下させたり、外発的動機づけなしには行動しなくなったりしています。

アンダーマイニング効果の原因

アンダーマイニング効果が生じる原因は、内発的動機づけによる行動に対して、不用意に報酬や罰を与えることです。

特に子どもは、自発的な行動に対して、過剰な褒め言葉やご褒美(報酬)を与えられると、そればかりに目が向いてしまい、報酬のために行動したり、報酬がないと行動しなくなったりしやすい傾向があります。

達成感や充実感を得るという純粋な動機づけに基づく行動が、いつのまにか報酬目当てに代わってしまうのです。

その結果、行動に対する集中力、行動の効率や継続性が低下し、自発的な行動も鳴りを潜めてしまいます。

また、報酬に対する要求ばかりが高まり、思うような報酬が得られないとやる気をなくして、より一段と自発的な行動がなくなります。

パパママとしては良かれと思ってした行動が、子どもに深刻な影響を与えてしまうことになり、強い後悔の念にさいなまれることも少なくありません。

子どもがアンダーマイニング効果に陥らないために

褒めることやご褒美は、子どものモチベーションを高めるための有効な方法であることは間違いありません。

トークンエコノミーなど、報酬を与えることで子どもの行動を変える方法も存在するように、報酬によってやる気を出し、内発的動機づけを高める子どもはたくさんいます。

また、良い高校に入るために受験勉強に励む場合のように、外発的動機づけによって健全な行動が起こることも少なくありません。

そのため、子どもをアンダーマイニング効果に陥らせないために大切なのは、子どもの行動が内発的動機づけに基づくものか、外発的動機づけに基づくものかを慎重に判断し、報酬を与えるタイミングと量を見極めることです。

こうしたことは、どの子どもにも当てはまる答えがあるわけではなく、日々の生活の中で子どもの能力、個性、性格などを把握しながら、試行錯誤を続ける以外にありません。

まとめ

アンダーマイニング効果について紹介しました。

近年、心理学の世界で使われていた言葉が次々と一般社会に溶け込むようになっていますが、アンダーマイニング効果も近いうちに身近な言葉になる可能性があります。

すでに、教育現場ではおなじみになっており、学校における教師の生徒に対する関わり方の中にも取り入れられているところがありますし、ペアレントトレーニングをはじめとする親教育のプログラムにも登場することもあります。

家庭においても、アンダーマイニング効果を意識した子どもへの関わり方を考えてみてはどうでしょうか。