保険証の通称表記について「公平な対応をしてほしい」と訴えるGID当事者の会社員=東京都で2017年2月12日、鈴木拓也撮影
心と体の性が一致しない性同一性障害(GID)の人が保険証で通称名を表記することについて、自営業者が加入する国民健康保険で厚生労働省が「保険者の判断で可能」と認める一方、会社員が加入する社会保険で認めていないことが分かった。GIDの当事者は「保険の種類で通称表記の可否が異なるのはおかしい」と国に公平な対応を求めている。
神奈川県在住で戸籍上は男性だが女性として生活する40代の会社員は今月1日、京都市で自営業のGID当事者の通称表記が認められたことを知り、加入する健康保険組合を通じて同省関東信越厚生局に問い合わせたところ、「(通称表記は)認められない」と言われた。
同省は毎日新聞の取材に「国民健康保険は市町村の住民基本台帳に基づき保険証を発行している。住民基本台帳に登録した外国人は保険証で通称を使ってもいいという通達を2011年に出し、GIDに準用した。社会保険は基本台帳に基づかず、通称表記ができるとの判断に至っていない」と説明。「今後、可能とするかどうか検討したい」とする。
15年にGIDと診断された会社員は「仕事や日常生活では(女性として)問題なく生活できているが、病院などで本人確認のために戸籍名をフルネームで呼ばれるのは苦痛だ」と苦悩を明かし、「国保と社会保険で区別する理由はない」と話している。【遠藤大志、鈴木拓也】