システム開発費はなぜ高いか
はじめに
システム開発を行ったことがある経営者・担当者であれば、 システム開発費は高いという印象を持つる方が多いのではないでしょうか。
それではなぜ、IT投資に踏み切ったのかと言われれば、 「高くて仕方ないけど、必要だから投資した」というのが本音だと思います。
また、システム導入にあたって、複数の会社に相見積もりしたけど、 「全然、金額が違う。どうやって、見積もりしてるの?」 なんてことも聞いたりします。
このようなことから、システム開発費は不透明で、高いというイメージを持たれているようです。 今回はそんなシステム開発費を説明してみようと思います。
なお、本稿で説明するのは、外部のシステム開発会社(ソフトハウス・SIer)の、 システム開発を業務委託した場合の、システム開発費になります。
システム開発費の構成
システム開発費は、以下のような費用で構成されています。
- エンジニアの人件費 - 営業マンの人件費や販売・促進に係る費用 - サーバーなどのインフラ購入費 - 開発場所の家賃や開発用PCの費用 - 利益 - バッファ
一番下のバッファ以外については、おおむね理解頂けると思います。
システム開発では、原材料と成るものがなく、 そのほとんどはエンジニアの技術によって、システムは構築されます。 そのため、主な費用はエンジニアや営業マン、デザイナーなどの人件費などになります。
では、最後の「バッファ」とは、何でしょうか。 これは英語ではBufferとなりますが、緩衝材といった意味になります。
何の緩衝材かというと、 システム開発の最中に出てきた問題(リスクの顕在化)への 対応で掛かる費用となります。(主に人件費)
システムは、作り終えるまでは、完成物のイメージがつきにくいという、 厄介な性質があります。 そのため、開発の途中で、当初は予定していなかった、 発注者からの要望や、技術上の課題などで作業量が増えたりすることがあります。
これを見込んでおいて、最初に予備的な費用をとっておくものがバッファとなります。 ただ、このバッファの取り方というのは、 企業によって、また案件の難易度や、得意分野などによって、変わってくるので、 どれくらいということができません。 ですが、提示額のおおよそ10%〜30%ぐらいはバッファを見込んでいると考えられます。 ちなみにバッファを使わなかったら、そのまま利益となります。
「人月」という習慣
では、構成はわかりましたが、どうやって見積額をだしているのでしょうか?
システム開発会社が、見積を行う際に使う単位に「人月」というものがあります。 1人月とは、これは標準的な技術のエンジニアが、 一ヶ月かかってやる作業量ということを意味しています。
開発するシステムに必要な作業量を、例えば20人月などと表現します。 20人月のシステムを、2人で10か月やれば、20人月ですから、 このような計算でスケジュールなども考えていきます。
そして、このエンジニアの1人月あたりで100万などの「単価」があり、 それを掛け合わせることで 「20人月×100万 = 2,000万円」 といった計算になります。
単価は会社によって、みんな100万という固定の場合もありますし、 エンジニアのランクによって、幅をもたせるところも多数あります。 (上級エンジニア・コンサルほど高い)
また、このような「人月」という作業量を基準にしたビジネスですから、 このようなビジネスのかたちを「人月ビジネス」と読んだりします。
システム開発費の相場
1人月のシステム開発費の相場(単価)は、どれくらいでしょうか。 具体的には以下の様な感じです。
- 大手SIer・ITコンサル 100〜150万以上 - 中堅SIer 80〜100万 - 中小企業、フリーランサー 60〜80万
上記を見ると、同じシステム開発会社といっても、だいぶ幅がありますね。
そして、この大手SIerと中小企業の金額の差は何でしょうか?
もちろん、技術力が一つには揚げられます。 大手企業ですと、優秀な技術者が集まりますし、社内研修等も充実しており、 技術をより一層磨ける環境にあります。 また、大企業ですと多くの営業マンもいますから、彼らの営業費用ももちろん含まれてきます。
そして、システム開発は技術力だけでなく、業界・業務知識や コミュニケーション力など多数のスキルが求められます。 大企業ですと、そういったスキルを保持したエンジニアがいる可能性が高いです。
そして、なによりはリスクに対する許容量です。 例えば、小さい会社で担当してくれたエンジニアが、 どうもイマイチ、技術力や提案力で力を発揮してくれないケースがあったとします。
これが、いくらクレームをだしても小さい企業ですと、対応が難しいことがあります。
その一方ですと、大企業ではエンジニアの大きなプールがあります。 もし、担当者がイマイチでも、抱えている問題を解決してくれる技術者が そのプールにはいる可能性があります。
また、何らかの問題が顕在化した時、その対応に必要な財務力も有しています。 これが小さい会社ですと、対応したくとも、その財務的基盤から難しい場合もあります。
ただし、これはあくまで一般論です。
実際には、大企業に任せれば安心というわけでもなく、 小さい会社であると、失敗するというわけではないです。
小さいけど非常に優秀なエンジニアの集団の会社も多数ありますし、 小さい会社ほど柔軟に要望に答えてくれたり、対応スピードも早いことも多いです。
また、大企業に発注した場合も、実際はその発注先の企業のエンジニアが、 実際の開発には携わらずに、管理だけというようなケースは多数ありますのでご注意下さい。 (業務の再委託をしている)
やはり、高いと思ったら
上記の説明で、少しは不透明で、高い、システム開発費について、 納得いただけたかと思います。
もし、それでも高いとおもったら、見積もりをもってきた営業マン・エンジニアに、 その内訳や見積の考え方を聞いてみましょう。
役割分担や優先順位によって、 不要な部分を削ったり、選定する技術を変更したりすることで、 金額を抑えられたりすることは十分に考えらます。
不信感を持ちながら、システム開発をスタートするより、 スッキリした状態で開発プロジェクトを立ち上げられるように、 気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
今はどこも桜が満開ですね。近所のお寺です。