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金正男氏殺害 独裁国家の非道強まる

 非道な独裁者が専横の度合いを強めている表れではないか。

     北朝鮮の金正男(キムジョンナム)氏がマレーシアの空港で殺害された。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄で、一時は父である故金正日(キムジョンイル)総書記の後継者ではないかとみられた人物だ。

     毒物を用いて殺害されたとみられる。現地報道などによると、実行犯は女を含む複数で、北朝鮮の工作員による犯行だという見方が強まっている。

     正男氏は2001年に偽造旅券を使って成田空港で摘発された。その後、後継候補から外れて権力の中枢から遠ざけられる一方、中国や東南アジア各地を往来する姿が頻繁に目撃されてきた。

     韓国の情報機関は、正男氏の暗殺指令は金正恩政権の初期から出ていたと国会に報告した。金委員長の地位が脅かされるような状況ではなかったという。

     それにもかかわらず殺害を命じたとしたら、正男氏が目障りだったからではないか。正男氏はかつて3代世襲を批判したことがある。

     金委員長は父の死を受けて5年前に権力を握った。その後、疑い深い性格から次々に高官を粛清した。

     金総書記は若い後継者を補佐する「後見役」7人を生前に指名したとみられている。この7人が葬儀で金委員長とともに霊きゅう車に寄り添ったが、現在も要職に残っているのは2人だけだ。

     文民の筆頭格で、金委員長にとっては叔父でもある張成沢(チャンソンテク)氏は、国家転覆を図った罪などで3年前に処刑された。軍人で序列最高位だった李英鎬(リヨンホ)軍総参謀長(当時)も政権発足から半年ほどで粛清された。

     粛清だけではない。軍を中心に目まぐるしい昇格と降格が繰り返されている。自らの権力を誇示する狙いのようだ。

     今回の事件が外国で起きたことも重大な問題をはらむ。北朝鮮の国家機関による犯行であれば、マレーシアの主権を侵害したことになる。

     北朝鮮はかつて外遊中の韓国大統領を殺害しようとビルマ(現ミャンマー)で爆弾テロ事件を起こした。日本では日本人拉致を繰り返した。目的のためには手段を問わない北朝鮮の本質は変わっていないのだろう。

     金正恩政権は昨年の党大会を経てますます独裁色を強めている。

     そんな政権が核実験を繰り返し、弾道ミサイルの開発を進めている。日米首脳会談の直後に弾道ミサイルを日本海へ向けて発射したばかりだ。来月の米韓合同軍事演習に向けて、北朝鮮は挑発の度合いをさらに高めてくる恐れが強い。

     政府は、北朝鮮の動向への監視を強め、警戒を怠ってはならない。

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