蹴球探訪
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【スポーツ】しんちゃんと呼びたくなっちゃう 明るく前向きで面白い中日・小笠原2017年2月15日 紙面から
◇瀬川ふみ子の「ふみトーーク」本紙みんなのスポーツ中学硬式野球担当の瀬川ふみ子記者(45)が取材を通じて知り合い、追っかけてきた選手のとっておきエピソードを特集する連載第2弾は、中日の小笠原慎之介投手(19)。明るくて前向き、そして面白いところがちょっと、いや、だいぶある2年目左腕の素顔を、たっぷりと紹介します。 ◇ 「しんちゃん」と呼びたくなっちゃう小笠原慎之介。いたずらっ子で本能のまま行動する。大きな体で中身はやんちゃな男の子。クレヨンしんちゃんが大きくなった、そんな感じもある(笑)。 湘南ボーイズにいた中学2年のとき、大会で初めて見て、楽しみなサウスポーだなと思った。話をしてみたら、物おじしないで素直に思ったことを話す子だなと。カメラを向ければ、先輩を差し置いてでも前に出てポーズ。かわいくて応援するようになりました。 3年夏に中学硬式野球の最高峰の大会、ジャイアンツカップで優勝したときには興奮したな。東京ドームのマウンドで大きなガッツポーズ。大泣きしたチームメートもいたけれど、しんちゃんに涙はなく、とびっきりの笑顔を見せていた。 秋には中学硬式の日本代表に選ばれ愛媛で行われた国際大会に出場。そこに同行したことから仲良くなりました。甲子園で優勝投手になったときはテレビの前で「しんちゃーん!」と叫んでた。特に決勝でホームランを打ったときは鳥肌が…。いつも笑顔しか見せないしんちゃんが「苦しかった」と言いながら涙をキラリとさせたときは、苦しかったんだなーと感じジーンとしたのでした。 高校野球引退後、久しぶりに連絡をとるようになり、一緒にゴハンを食べにいったりした。甲子園優勝投手になり、だいぶ遠くにいっちゃったような気もしていましたが、しんちゃんは中学時代のまんま。なんでもよく話し、言いたいことを言い、嫌なことは嫌と、ニコニコしながら明るくハッキリと言う。潔ぎいいというか、さっぱりしたトークが楽しかった。 ドラフトで中日に1位指名されたまさに数日後には、日本シリーズのヤクルト−ソフトバンク戦を「見たい!」と言うので、チケットを取って一緒に神宮球場へ行きました。ドラフト後だし、甲子園優勝投手だし、球場でばれちゃうかなとも心配し、東海大相模高の男子マネジャーの加藤君と2人でガードしながら観戦したのですが、誰にも気づかれず…、しんちゃんはちょっと残念そう。 ヤクルトに点が入ったときに加藤君が持ってきた応援用の傘をさし、東京音頭に乗って振ってみたものの、それでも気づかれず(笑)、「俺もまだまだだな−」と。でも終盤、私たちのすぐ近くにファウルボールが飛んできて、そのボールを取った人に借りて左手でボールを持つと、近くの人たちに気づかれてちょっとざわざわ。「やっぱ、ボール持たないと気づかれないのかー」って。負けず嫌いなしんちゃんは、ひそかに「もっと有名になってやる」って思ったようです(笑)。 その日本シリーズでしんちゃんが興奮していたのは、試合前の柳田の打撃練習。何球も外野スタンドに打球が飛びこみ、「すげー。(笛で打球を知らせる)ピーってしかならない!」と目を見開いてました。試合では、サファテがマウンドに上がったときに、スマホを取り出し動画撮影。「はえ!」と。でも、その目は、「俺もこんぐらい投げるようになるよ」って感じかな。試合中、終始楽しみつつも、「近い未来、俺もこういう場で投げるんだ」って思いながら見ていたようです。 昨年2月は、プロで初キャンプとなるしんちゃんの陣中見舞いに北谷へ行きました。ずっと見てきたしんちゃんがドラゴンズのユニホームを着ている姿にはぐっときました。練習後、ファンの方々にまざって「しんちゃん!」と呼ぶと、振り向いてくれて、キメ顔(笑)。プロに入ろうとも、まったく変わらない愛嬌(あいきょう)のよさです。「私服の靴を持ってくるの忘れちゃったー」とのことで、オフの日、一緒に買い物へ。ちなみに、買い物をしていても誰にも気づかれず、またちょっと寂しそうでもありました(笑)。 シーズンが始まると、初勝利が見たくて登板日にはいつもテレビの前にスタンバイ。でも、なかなか勝てなかった…。最初のころは「また頑張るよ〜」って明るかったけど、8月14日の京セラドームでの阪神戦、3イニング2/3を5失点で負けたときはちょっと落ち込んでいて…。その夜に大阪で一緒にご飯を食べて、次に向けて決起会をしました。 「ジャイアンツカップで優勝して、甲子園で優勝して、決勝でホームランも打っちゃって…俺の運、使い切っちゃったかな」ってことも言っていたけど、「そんなことない! ずっと順調にきたしんちゃんに神様が試練与えてるだけ。信じていこうよ!」って。ちょうどそのころ、当時の森監督代行が「おまえのことは使い続けるぞ。1年目だし簡単には下(二軍)に落とさない。期待してるんだから」と言ってくれたそう。しんちゃんは、その言葉がうれしくて、「よしやったる!」って思ったそう。 9月4日の巨人戦、プロ12戦目の登板でようやく初勝利できたときは、私もうれしくてうれしくて。試合後、「やっと勝てたー!」というLINEにすべてが込められてた感じ。球場が東京ドームだったこと、ジャイアンツカップの決勝を実況していた日本テレビの辻堂アナがその試合を実況していたことにも運命を感じました。しんちゃんもそれは知っていて、「やっぱ、そういうつながりってあるんですね」とニンマリしてました。 昨年11月に左肘の手術をした際、「全身麻酔、気持ち良かった」「手術っていってもちょっとだけ」とケロリとしていたしんちゃん。今年1月、名古屋で会って2年目の目標を聞くと「投げて打って勝つことっす! 今、寝る間も惜しんでバッティング練習してますよ。全打席ホームラン狙ってるのにボテボテしか打てないんだもん。ホームラン打ってゆっくり走りたい」とニカっとした。 ジョークにはジョークでと、「昨年、援護があまりなかったから自分で打つつもり?」って聞いたら、また笑って「うん!」と。でも、そこからは真面目な顔をして「援護がなくてかわいそうなんてことも言われましたけど、そうじゃないんです。自分のテンポとかリズムがよくないから攻撃につながらないんですよ。もっと打ってもらえるようなピッチングをすればいいんですよね! それに、自分がゼロに抑えれば負けないんですから」と。おー、考えていないように見えて考えているしんちゃん! 大人になってきたぞー(笑)。 でもその後、「(高校JAPANで一緒だった)オコエがさ、活躍しないで地上波のテレビ出るからさ、ああいうのスゲー悔しい。自分は活躍して注目されて地上波に映りたい!」(笑)。こういうことも言っちゃうところも、かわいいところだ。明るくて、前向きで、何でもプラスに捉え、時々勘違いしながらも前に進んでいくしんちゃん。「今までもチームの中心として頑張ってきたしね」と言ったら、「自分、引っ張ってないっす。自分がよければいいっす」ってまた笑う。本当はみんなと勝ちたいくせに…という突っ込みはおいておき、2年目の飛躍に期待したいと思います。 (瀬川ふみ子) ◆「一番前で」に「端っこ」で待ってたしんちゃんと新宿駅のホームで待ち合わせをしたときのこと。LINEで「総武線の進行方向の一番前で待ってて」って送ったら、「一番前」ってとこしか読んでなくて…。ホームの最前列、黄色い線から出て、まさに「はしっこ」で待ってた。もちろん、電車が来たらしっかり下がってよけてたというけど、自分が気になるところしか読まず、仰天の勘違い(笑)。こんなしんちゃんも、すごくかわいいし、面白いです。 PR情報
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