「ビジネス書グランプリ2017」結果発表ーービジネスマンの来し方、行く末を考える TOP3は『ライフ・シフト』『<インターネット>の次に来るもの』『サピエンス全史』

内藤 順2017年02月15日 印刷向け表示
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今年で2回目を迎えた、ビジネス書グランプリ2017。このアワードのコンセプトは「ビジネス書を評価するべきは、ビジネスパーソンではないのか?」というものであり、あくまでも読者目線で本を評価していく点が最大の特長だ。

HONZとしては、そこへさらに「それがビジネス書かどうかを決めるのも、ビジネスパーソンでではないのか?」という疑問を投げかけた。その結果、多種多様な本がノミネートされ、充実したラインナップに数多くの投票をいただくことが出来た。

本日、満を持して投票結果が発表になった。まずは総合のTOP3から紹介していきたい。

1位『ライフ・シフト 100年時代の人生戦略』

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
作者:リンダ グラットン 翻訳:池村 千秋
出版社:東洋経済新報社
発売日:2016-10-21
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未来を予測することは難しい。これだけ変化が激しくなっている世の中では、それも無理はないのかもしれない。それでもさまざまな観点から考察すれば、確実に訪れるであろう不可避な未来を見つけることはできる。

個人レベルで考えれば、多くの人が人生100年時代を迎えるということがあげられるだろう。この「長寿化」を恩恵に変えるためには、これまでとは考え方を変えていく必要があるというのが本書の骨子だ。

人生のステージは、「教育→仕事→引退」という3つのままで良いのか? 本書「ライフ・シフト」は、100年時代に人生のステージをどのように構築するべきかを問いかける。

年齢の異なる3人の人物をモデルに、ライフステージをこれまでの3.0から3.5、4.0へと拡張し、シミュレーションしていく。その際に着眼点となるのが、無形の資産である。お金には換算できないが、人生にはたくさんの資産があるのだ。仲間や評判といった「生産性資産」、健康や幸福のための「活力資産」、そして新しい経験に飛び込んでいく「変身資産」。

「働き方改革」というワードが叫ばれがちな昨今ではあるが、会社主導だけで推進していっても、その効果などたかが知れているだろう。会社を人生のパーツの一部として、資産を獲得する方法の一つへと相対化し、自らの手にイニシアティブを取り戻す、そのためのヒントに満ち溢れている一冊だ。

2位『<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則』

〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則
作者:ケヴィン・ケリー 翻訳:服部 桂
出版社:NHK出版
発売日:2016-07-23
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無形の資産となる「生産性資産」や「変身資産」。これを構築するための示唆は、『インターネットの次に来るもの』からも得ることができる。 過去、現在、未来へと移り変わるテクノロジーの変化を進化論のように観察していくと、一定の法則性が見つかるという。本書は、それを「未来を決める12の法則」としてまとめた一冊だ。

12の法則は、いずれも現在進行形の動詞であり、具体的にはBecoming(なっていく)/Cognifying(認知化していく)/Flowing(流れていく)/Screening(画面で見ていく)/Accessing(接続していく)/Sharing(共有していく)/Filtering(選別していく)/Remixing(リミックスしていく)/Interacting(相互作用していく)/Tracking(追跡していく)/Questioning(質問していく)/Beginning(始まっていく)というもの。未来へ向かう世界の中で、あらゆる概念が動詞化していく。

著者のケヴィン・ケリーは、「流れの原動力であるプロセスの方が、そこから生み出される結果より重要である」と結論づける。すべては流れであり、完成品というものは来ないし、完了するというステージもない、と。

だから、我々は変身することに臆する必要はないし、テクノロジーの変化に対してどこか受け身でありながらも、ポジティブな態度を取り続けていかなければならない。それが無形の資産を形成することへとつながっていくことだろう。

3位『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
作者:ユヴァル・ノア・ハラリ 翻訳:柴田裕之
出版社:河出書房新社
発売日:2016-09-08
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サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福
作者:ユヴァル・ノア・ハラリ 翻訳:柴田裕之
出版社:河出書房新社
発売日:2016-09-08
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われわれ人類を人類たらしめているものは何か? そのようなテーマで書かれた本は実に多い。その中でも、本書のユニークネスは「虚構」に着目している点だ。そのスケール感は非常に大きく、まさに虚構が現実を生み出したと言わんばかりである。

この視点から眺めると、身の回りのことから無意識の抽象概念まで、我々の生活がいかに虚構に満ち溢れているかを痛感する。伝説や神話、神々、宗教など、認知革命に伴って生み出された虚構は、人々が協力することを可能にした。そして現代において我々を取り巻く、貨幣、会社組織、法律、国家やイデオロギーといったものもまた、虚構の一種と言えるだろう。

一見縁のなさそうな「科学」でさえも、虚構の手から逃れることはできない。「帝国」「資本」との相乗効果によって「科学」が飛躍的に進化してきた様が、これでもかと描かれていく。

さらに虚構によって生み出された現実からは、あまりにも不都合な真実が提示される。それは進化上の成功が、必ずしも個人の成功に結び付くわけではないという厳然たるメッセージだ。

これを回避するにはどのようにしたら良いのか? 著者のユヴァル・ノア・ハラリは、「幸福は客観的な条件と主観的な期待との相関関係」に注目しており、その視点は興味深い。そして、そこへ至るまでの示唆は、『ライフ・シフト』『<インターネット>の次にくるもの』からも、得ることが出来るだろう。

ビジネスマンの来し方、行く末を考える。

以前、著名なビジネスマンが「本は10冊同時に読め!」と言っているのを耳にしたことがある。本人へ直接その極意をたずねたところ、「10冊はさすがに無理だろう」という返事が返ってきたが、この3冊ばかりは同時に読むことをおすすめしたい。

我々人類を大きく進化させてきた「虚構」と「テクノロジー」、これから不可避な未来として訪れる「100年時代」。人類の繁栄と個人の幸福は、はたしてWIN−WINの関係になれるのか? 壮大なスケールの時間軸から、ビジネスマンの来し方、行く末を考えることのできる3冊だと思う。 

なお、20位までの結果は以下の通り         

順位 書物名 著者 出版社
1位 ライフ・シフト リンダ・グラットン他 東洋経済新報社
2位 <インターネット>の次に来るもの ケヴィン・ケリー NHK出版
3位 サピエンス全史 ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社
4位 やり抜く力 アンジュラ・ダックワース ダイヤモンド社
5位 ザ・会社改造 三枝 匡 河出書房新社
6位 USJを劇的に変えた、たったひとつの考え方 森岡 毅 KADOKAWA
7位 誰が音楽をタダにした? スティーブン・ウィット 早川書房
8位 これからのマネジャーの教科書 グロービス経営大学院、田久保 善彦 東洋経済新報社
9位 バブル 永野 健二 新潮社
10位 いま世界の哲学者が考えていること 岡本 裕一朗 ダイヤモンド社
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