マクロン前仏経済産業デジタル相の選挙陣営が、ロシアと同国国営メディアがハッキングと偽ニュースを利用し、同氏が本命候補となっているフランス大統領選に介入していると非難した。
政治家になってまだ経験の浅いマクロン氏の選対本部長を務めるリシャール・フェロン氏は、ロシア発のハッキングの試みが「数百件ないし数千件も」あり、偽ニュースの報道が「我々の民主的な生活に重くのしかかっている」と述べた。
「我々は今、事実に目を向けなければならない。ロシア国家に属するロシア・トゥデーとスプートニクという2つの主要メディアが偽ニュースを拡散している」。フェロン氏は国営テレビ「フランス2」でこう語った。
■選挙相次ぐ欧州で高まる不安
同氏の発言は、欧州情報機関の間で高まる不安を突いている。ロシアが今年のフランス大統領・議会選やオランダ、ドイツの選挙に影響を与えようとする可能性だ。ロシアが昨年、米大統領選に介入し、民主党のコンピューターを攻撃したとする米国情報機関の主張に続くものだ。
ロシアのペスコフ大統領報道官は、コメントを求める依頼に応じなかった。ロシアの当局者やアナリストらはフェロン氏の主張を、うろたえている欧米政界エリートからの空虚な発言として退けた。
米国の選挙への介入疑惑を一蹴したクレムリン(ロシア大統領府)の発言をなぞるように、プーチン政権のある高官はこう語った。「ロシアを悪者扱いすることには、際限がないようだ。これは根拠がなく、こうした戦術に頼る政界エスタブリッシュメント(支配階級)の連中は負け戦を繰り広げている」
フランスのルドリアン国防相は先月、選挙に影響を与えるために「偽情報の大量流布」が駆使される可能性があると警鐘を鳴らした。フランスの対サイバースパイ活動機関である国家情報通信システム安全庁(ANSSI)は昨年、潜在的な脅威について各陣営に説明した。
マクロン氏は、1年足らず前に立ち上げた政党から独立候補として出馬している。同氏が最有力候補に躍り出たことで、フランス政治は激変する気配を強めている。世論調査によると、同氏は中道右派候補のフィヨン元首相を第1回投票で僅差で退け、5月の決選投票に進む2人の候補の1人になる見込みだ。そのフィヨン氏の選挙運動は、いわば偽りの仕事を家族にあてがうために公的資金を使ったとの疑惑につまずいている。