天台宗を開いた伝教大師最澄(767〜822年)と、真言密教を日本に広めた弘法大師空海(774〜835年)。平安仏教を勃興させた2人の高僧の人生を描いたおかざき真里さんの『阿・吽』(小学館)が、注目を集めている。テレビドラマ化もされた『サプリ』をはじめ、恋愛や仕事に揺れ動く女性の心情を描いてきた作家が初めて挑む歴史マンガだが、この意欲作の陰に意外な「協力者」の存在があり、こちらも話題になっている。(木ノ下めぐみ)
同作品は青年誌『月刊!スピリッツ』で平成26年から連載を開始。日本の仏教界の2大スター、最澄と空海の生き様を鮮烈に描き出している。
物語は奈良から京都へと遷都した平安初期から始まる。僧としてのエリートコースに進みながら、僧侶の堕落ぶりに失望し、山にこもった最澄と、非凡な才能を持ち、周囲から学者として身を立てることを期待されながら、そんな人生では飽きたらず家を飛び出した空海。若くして望まれた道を自ら外れた2人が真理を求め、もがき歩んでゆく道筋が、水と火のように好対照に表現されているのが印象的だ。
抜群の知名度でその功績こそ広く知られてはいるが、2人が宿命のライバルとしてそれぞれの人生を交錯させていたことは意外と知られていない。おかざきさんも決して仏教や歴史に詳しい方ではなかったといい、「特に晩年が面白くて、2人が弟子を取り合ったりするんです。早くそこまで行きたいですね」と意気込む。
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