一年程前から、脳の研究を始めた。光トポグラフィという装置を使って研究をしているが、始めて間もないにもかかわらず、面白いことがいろいろわかってきた。例えば、「ゲーム脳」のことである。テレビゲームは脳に良くないともいわれているが、一概にそうとはいえないことがわかった。単純なゲームは確かに脳に良いとは言えない。しかし、「やった!」という達成感を強く感じるゲームは、前頭連合野にドーパミン(気持ちが良い時に出る神経伝達物質)が放出されて、脳を活性化するのだ。これは、明らかに脳の健康向上になる。老化防止や認知症の予防にも効果がある。
ご存知のように、前頭連合野は、大脳の中でも特に思考や判断などを行う極めて重要な部位である。運動と脳(前頭連合野)の関係も調べている。口の運動、手・指の運動、足の運動、などの中で、最も前頭連合野を活性化するのは、口の運動、即ち、ガムなどを噛む運動であることがわかった。
それで、納得したことがある。野球選手がガムや噛みタバコを噛みながらバッターボックスに立つ姿である。あれは、咀嚼(そしゃく)運動によって前頭連合野を活性化させ、ボールに対する判断能力・判断速度を高めているのではないかと思える。野球選手は、それを経験的に知っていてガムを噛んでいるということだ。これも脳を活性化し、健康を保つにはとても効果的である。
脳の研究は古く、医学の父といわれるギリシャ時代のヒポクラテスまで遡ることができるが、今の医学・科学技術を持ってしてもまだ解っていないことが沢山ある。「脳は宇宙をしのぐ壮大なフロンティア」ともいわれている。これからいろいろなことが解ってくるだろう。脳を健康に保ち、元気で楽しく暮らしましょう。読者の方々のご健康を祈念しています。
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「ゲーム脳」の検証実験の様子