情報化社会の問題


 

1.        なぜ情報倫理か

1.1.技術とマナー

     運転技術が十分でも法規知識やマナーが不十分

(小学生が公園で自転車に乗れるからといって、街路を走らせてよいのか?)

 → 引き起こす事故の重大さを知っておく必要性

1.2.さまざまなトラブル

     インターネットショッピングの雲隠れ

     買った覚えのない請求書

     有害情報の氾濫

     危険物販売

     ストーカーや犯罪事件

     個人情報の漏洩

     攻撃的コミュニケーション

     コンピュータウィルス

     クラッカーによるデータ改ざん

     不正アクセスによる個人情報流出

     なりすまし被害

1.3.知らない間に加害者に

     他人のIDを譲渡する(IDの不正使用)

     著作権侵害(著作物の無断利用、肖像権侵害、他人ページの無断コピー、ソフトウェア複製など)

例:Webページ上の新聞社の文章を無断で公開、童謡「赤とんぼ」の詩や曲を自分のページに

1.4.対策は?

     法+マナーの問題

現行法の不十分さ。自衛策必要

→ ネットワークリテラシの必要(十分な知識を持って自衛を)

 


 

2.        何が起こっているか

2.1.       誹謗中傷

     匿名掲示板による誹謗中傷

テキスト ボックス: 138 :実名攻撃大好き教育ママごんさん? :01/12/27 10:26 ID:MceFWPaO 
私の友人のXXXX出身者、ぜった〜いに娘は
XXXXへは入れたくないって言うのよね。
さがじょの方がまだいいって。
XXXXの頃から知ってる私としては、わからなくもないけど
さがじょよりは、今のXXXXのほうがいいでしょって思うんだけど
なんで?
139 :実名攻撃大好き教育ママごんさん? :01/12/27 11:11 ID:2Cq8Iope 
>>138
  友人は、学校でいやな目にあったのでしょうか?
  さがじょとは比較しなくても・・。わかってることだし。
140 :実名攻撃大好き教育ママごんさん? :01/12/27 11:11 ID:iWCrSKs9 
XXXXと相模女だと、当然後者でしょ。
でも、XXXXとなった今では、こっちのほうが絶対イイよ。
相模女のコギャル達は下品でアホっぽい。
大野の駅前あたりを見れば、あぁやめようって思うよ。
〜(略)〜
141 :実名攻撃大好き教育ママごんさん? :01/12/27 11:15 ID:2Cq8Iope 
さがじょ、やばいですよね。
〜(以下略)〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.2.       個人情報

     会員のカード番号、住所、氏名、電話番号などが公開される、

     懸賞つきのアンケートに回答したユーザーの個人情報が別のページで公開される

     閲覧記録などから、個人の嗜好をデータベースとして記録(クッキー)

     子供の閲覧情報や個人情報をデータベース化して将来の販売戦略にする場合もある

     近年の実例と個人情報の販売[1]

個人情報の侵害例

 

 

 

個人情報を販売しようとする案内メール

 

 

     CCCarbon Copy)とBCCBlind Carbon Copy)の問題

宛先欄やCC欄に複数のアドレスを書くと、場合によってはプライバシーの侵害に

→ BCCの活用

 

2.3.       ネットショッピング

     ページの閉鎖、電話連絡が取れない、商品が送られてこない、違う商品が送られてくるなど

     詐欺用架空口座の販売例[2]と警察庁のサイト

悪質商法への注意を行う警察庁のサイト

 

 

 

 

架空口座の販売メール

 

 

 

2.4.       有害情報

     危険物の販売

架空講座の販売サイト

 
薬物の無許可販売[3](自殺願望者のためのもの、大学院生によるもの、中学生も存在!)

爆発物の作り方(原子爆弾!)の紹介など

     有害情報の公開

わいせつ表現、暴力表現、個人に対する誹謗・中傷、

嫌がらせで個人情報を勝手に公開される、ネズミ講への勧誘

中学生の薬物販売サイト

 

 

 

自殺願望者のためののサイト。

 
 

 

 


2.5.       犯罪

     犯罪にインターネットが使われる例も

バスジャック、殺人、ストーキング等

バスジャック事件の犯人の書き込みとされるもの

 
 

 

 


2.6.       ウィルス関連

     コンピュータウィルス(コンピュータやデータの破壊、情報漏洩などを行う)

→ IPA(情報処理振興事業協会[4])やウィルス駆除ソフト販売メーカー(トレンドマイクロ社[5]、シマンテック社[6]など)にウィルス情報がある。

テキスト ボックス: IPAのサイト。左はウィルスの実例。右はウィルスデータベースと検索結果

 

 

     不当な自動架電ソフト(国際電話、Q2などに勝手に接続させ料金請求)


テキスト ボックス: 自動荷電のしくみ(警視庁による)

 

 

2.7.       メール関連

     迷惑メール(チェーンメールDM、嫌がらせメールなど)

     9人にチェーンメールを送る→メール2回で81人、5回で約6万人、10回で約35億人→再び自分のところに戻ってくる → チェーンメールは一旦転送されると異常な勢いで増大し、メールサーバーの破壊、ネットワークダウンにつながる

     チェーンメールの例[7]と注意を呼びかける警視庁のページ[8]

チェーンメールの例

 

 

 

警視庁のページ

 

 

 

2.8.       リンクの問題

     自分のページが知らないうちに不快なサイトからリンクを張られた

リンクを張る行為そのものはURL記述のみなので著作権法上の問題にならず

(他のHPの一部分だけを自分のHPの一部として表示する=フレームリンクは著作人格権侵害の恐れあり[9]

→ 「リンクを張るときには事前に連絡を」という意思表示をすべき

 


 

3.        なぜ起こっているか

3.1.       インターネットの特徴

@時間・距離の制約なし

(1) 時間感覚の相違: 長時間の没頭、主観的時間(あっという間)/客観的時間

空間感覚の相違: 内/外、公/私の区別の曖昧さ

A身体性の欠如

(1) 匿名性=他者の視線なし

(2) 自己/他者の身体的痛みの欠如

B対人関係の複雑性なし

いやならすぐ止められる

→ ネットワーク上での制約の緩さ

3.2.       倫理観の変容

     現実世界の制約条件が変容→倫理観も変容?

    「リセット症候群」、二分法的思考法、匿名性による二重の人格

     脳そのものの仕組みが変容してしまうという指摘(ビデオゲーム)

福島章の指摘:「ハードとソフトの変容」、森 昭雄の指摘:「ゲーム脳は若年性痴呆」[10]

     インターネットが単なるビデオゲームと異なる点

現実とのリンク (相手は現実存在、商取引も発生する)

     現実の倫理観は制約の上に積み重ねられてきたのでは?

A) 従来社会

場所によって各々の価値観の棲み分けがなされる

例えば芸術家、マスコミ業界という世界だけで通用する価値観

B) ネットワーク社会

仮想/現実の連続性(同一のパソコン上で異なる価値観が並立)

価値観の棲み分けのあいまいさ

   → 価値観棲み分けの曖昧さは、われわれの「現実」観、ひいては倫理観の変容を促す

     現実/ネットワーク関係の再構築

A) 従来社会

長い歴史の中で倫理観を形成(試行錯誤)

B) ネットワーク社会

未だ歴史浅きネットワークコミュニケーション

   → ネットワークリテラシー(現実/ネットの健全な付き合い方の基礎知識)の必要性

 


 

4.        どうすればよいのか

4.1.       ネットワークリテラシー

     メディアリテラシー(情報の一面性の教育)、ネットワークリテラシー(情報発信の仕組みの知識と体験)

自分でwebサイトを(ビデオ、TVなども)作ってみる

     個人情報の管理: アドレス、パスワードの変更(自分の事は自分で管理する)

どこまでの情報を公開してもよいのかを明確にしておく

4.2.       ガイドラインの参照

     明確なルールやガイドラインを参考に

Media Awareness Networkのガイドライン例[11]

 家庭でのオンラインルール

 

・私は、両親の許可なしでは、決して個人情報をオンライン上で教えません。教えない個人情報とは、私の名前、電話番号、住所、電子メール、私の学校の場所、私の両親の職場の住所と電話番号、クレジットカードの番号などです。

・私は、インターネットを使うときには、いつも偽の名前かニックネームを使います。

・私は、パスワードを作るときには、見破られにくいけれど私にとっては覚えやすいような、一枚上手のものにします。盗まれるのを避けるために、私は決してそれを誰にも漏らしません。

・私は、私を不快にするようなどのようなメッセージにも応答しません。私はすぐにログオフして、大人に伝えます。

・私は、両親のどちらかに知らせて同席してもらえるような場合にしか、インターネット上で知り合った友人と直接会いません。

・私は、オンライン上の誰にも、侮辱したり無作法だったりするメッセージを送りません。これは「フレーミング」と呼ばれ、良いネチケット(訳者注:ネットワーク上のエチケット)ではありません。

・私は、両親がコンピュータに入れたフィルタリングソフトを無効にしません。

・私は、インターネット上で読んだすべてのことを信じるのではありません。私は、いつも情報源をチェックし、それを私の先生、両親や図書館員に確認します。

 

     電子ネットワーク協議会によるさまざまなガイドラインの例[12]

ガイドラインのページ

 

 

4.3.       法律相談事例サイト

     著作権やプライバシーの相談室がある[13]

著作権・プライバシー相談室のページ

 

 

 

4.4.       不要な情報から身を守る

     不要な情報から身を守る: 情報のレイティング

Webページの内容のランク付けを行うサイト。接続前にこのサイトを通してフィルタリング

市販のフィルタリングソフトの導入

     電子ネットワーク協議会「レイティング/フィルタリング情報」[14]

レイティングを行う機関のページ

 

 


 

5.        演習

     Web上の様々なページを調べ、不快に思ったサイトについて以下のことをレポートしてください。

A)        ページタイトル

B)        URL

C)        作者(わかれば)

D)       内容

E)        どの点が不快か

F)        あなたはそのような情報に対してどうしたらよいと思うか

 

     ニュースサイト(http://www.mainichi.co.jp/digital/netfile/など)や新聞などでインターネットが関係した事件を調査して、それについて意見や対策を考えてみる。以下の項目を盛り込むこと。

G)       タイトル

H)       事件概要

I)          意見

J)         対策

K)       参考サイト・新聞の情報

 

 

 

 



[1] 情報教育学研究会情報倫理教育研究グループ(編),インターネットの光と影:被害者・加害者にならないための情報倫理入門,北大路書房,2000p.19. 参考サイトhttp://www.mainichi.co.jp/digital/netfile/ 毎日新聞社インターネット事件取材班,インターネット事件を追う.

[2] 河崎貴一,インターネット犯罪,文芸春秋,2001p,107

[3] 河崎貴一,インターネット犯罪,文芸春秋,2001p,97

[4] http://www.ipa.go.jp/

[5] http://www.trendmicro.com/jp/home/enterprise.htm

[6] http://www.symantec.com/region/jp/sarcj/index.html

[7] 辰巳丈夫,情報化社会と情報倫理(情報がひらく新しい世界3),共立出版,2000p.94

[8] 警視庁ハイテク犯罪センター http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/haiteku/haiteku/haiteku1.htm

[9] 久保田裕・佐藤英雄,知っておきたい情報モラルQ&A,岩波書店,2002.p.151

[10] 福島章,子どもの脳が危ない、,PHP新書,2001.(上智大学:犯罪心理学。脳のハードが環境ホルモンによって変容し、脳のOSが幼児期からのテレビによる絶え間ない情報の洪水にさらされて、最近の子供は言語情報ではなく、イメージ的な断片情報しか処理できなくなっているし、それゆえ言語的なルールに縛られるのは苦手で、倫理観も変容している、という議論)

森 昭雄,ゲーム脳の恐怖,NHK2002

[11] Mnethttp://www.media-awareness.ca/eng/med/home/medwise.htm。カナダのメディア・リテラシー関連NPOのなかでも特にインターネット上での活動を展開することに専念している。http://www.media-awareness.ca/eng/med/home/manmed/manweb.htmより、一部省略して橋場が翻訳。

[12] http://www.iajapan.org/rule/rule4business/index.htmlおよびhttp://www.iajapan.org/rule/rule4child/main.html

[13] http://www.askaccs.ne.jp/

[14] http://www.nmda.or.jp/enc/rating/index.html