サーフ・ロック from テルアヴィヴ!! Boom Pam、そしてその周辺のイスラエルの音楽シーンとは? サラーム海上に訊く

これがBoom Pamだ (写真提供 : Tuff Beats)

見てくれよ、この広々とした砂浜、ここはどこか? ここはイスラエルなのである。

このたび紹介するのはイスラエルのサーフ・ロック・バンド、Boom Pamのアルバム『ALAKAZAM』と、そして彼らを含むイスラエルのアーティストたちによるコンピ『Mediterranean Grooves And Raw Sounds』の2作品だ。「イスラエル? サーフ・ロック?」と、"?"の嵐である。さらにはコンピを聴き出せば、ぴっしりとしたファンク・バンドもあればロウなブレイクビートもある。そのサウンドを取り巻く空気感は、一見欧米の音楽っぽくもありながら、ジプシーっぽいホーン?、いやアラビアンな雰囲気もなんだか…。ともかく不思議な魅力を妖しく放っているのだ。しかも、なんと今だけ、イスラエルの熱いグルーヴを感じられるトラック「Surfing Tuba」をフリー配信中(2月20日まで)。まずは、聴いてみる、それが早い。

さて、OTOTOYではこのイスラエルの、その概要を知るべく、識者に登場願った。今回の2作品にさまざまなかたちで関わっているライターのサラーム海上だ。現地も訪れ、そしてここに収録されているアーティストたちととともに実際にイスラエルで、そして日本で交流した経験をもつサラーム。この2作品、そしてイスラエルのモダンなシーンの紹介に適任の人物と言えるだろう。

>>「Surfing Tuba」のフリー・ダウンロードはこちら

Boom Pam / ALAKAZAM

【配信フォーマット / 価格】
WAV : 2,000円 (単曲は各200円)
mp3 : 1,500円 (単曲は各150円)

【Track List】
01. Alakazam
02. Surfing Tuba
03. Sabale
04. Top
05. Hamdulila
06. The Fall (Feat. Kutiman)
07. U R Mine
08. Pulsa Denura
09. Harlem Nocturne
10. Rambo (Feat. Uzi Feinerman)
11. Uniton
12. Light Up
13. Bulgarock
14. Malibu
15. U R Mine Remix By Beno Hendler [Bonus Track]
16. Uniton Feat. Dr. K [Bonus Track]
V.A. / Mediterranean Grooves And Raw Sounds

【配信フォーマット / 価格】
WAV : 1,800円 (単曲は各200円)
mp3 : 1,500円 (単曲は各150円)

【Track List】
01. Sabale [Boom Pam]
02. Hijazz Chaser Remix [BTA Vs. UBK]
03. Loosing It (Featuring Karolina) [Kutiman]
04. Computers Singing (Alfomenga Remix) [Radio Trip]
05. Thang [The Apples]
06. Voyage To The Sun [The Koliphones]
07. Soleil Couchant [Les Hippies]
08. Lo Avater Al Atzmi (I shall not give up on myself) [Uzi Navon & Acquaintances]
09. Cactus [The Ramirez Brothers]
10. Today's Funk [Soulico]
11. Tni Li Hizdamnut (Give me a chance) [Yoram Arbel]
12. Back Road Funk [Funk'n'stein]
13. Tosha Baritosha (Edit) [Marsh Dondurma]
14. Hashsh [Boom Pam Vs. Radio Trip]
15. Ne' imat Pop Oud [Lehakat Tzliley Ha'oud]
16. Apple Sauce (Edit) [Shmemel]
17. Girl Don't Lie [Uzi Ramirez]
18. Say what?! (Edit) [B&B]
19. Shuv um Atzmi (Extended Version) [Karolina]
20. Glitch Hope [Audio Montage All-Stars]

イスラエルの音楽シーンとは? サラーム海上を直撃

イスラエルという国名を聞いて、何を思い浮かべるだろうか? 「嘆きの壁で祈りを捧げるユダヤ教徒」「3つの宗教における聖地」「民族対立の紛争地域」…。恐らく、そうしたイメージが、普通に報道を見ていれば思い浮かぶのではないか。しかし、いま現地の音楽ファンが聴いている、モダンなポップ・ミュージックはどうだろう? なかなか想像がつかない。地域を考えればアラブっぽい音楽かもと思うが、しかし、よくよく考えればこの国は、第二次世界大戦の後にできた、ユダヤ人がその人口の8割を占める新しい国だ。インタヴュー中にもあるが、彼らはディアスポラからの集合という歴史を経て、北は東欧から南は北アフリカまで、さまざまな出自を持つ“ユダヤ人”からなる。果たして、その音楽とは?、ということで、モヤモヤしているのなら聴いてみよう!

ここに紹介するはイスラエルのバンド、Boom Pamの2010年サード・アルバム、そして彼らを含めたイスラエルのアンダーグラウンドな音楽を集めた2011年の現地コンピ『Mediterranean Grooves And Raw Sounds』だ。前者は、イスラエルで活躍するバンドでエレキ・ギターとチューバとドラムスという編成の“サーフ・ロック”バンドだ。そしてコンピは彼らを含めたさまざまなバンド、イスラエルのアーティストを集めたもので、その多くをバリバリのファンクが占めている。ファンクに、サーフ・ロックと、おおよそ、あの砂漠地帯の真ん中にある都市から出てきた音楽とは想像できないのだが。

今回は前述の様に、この謎に包まれたイスラエルの音楽の道先案内人に、音楽ライター、料理研究家として中東やインド亜大陸、アジア、ヨーロッパなど世界中を飛び回るサラーム海上氏を迎え、これらの音楽の魅力や、その後ろにある文化やさまざまな人々の流れ、それを語ってもらった。

ある地域に華咲く音楽から、その先に広がる文化を知り、読み解くおもしろさ。そしてその後ろには様々な地域、そこにある文化がツリー状に、互いに影響を与えながら広がっている。それを辿ればまたさらに音楽の驚きに出会える。これだから知らない音楽との出会い、その探求はやめられない。

テルアヴィヴの空と海

インタヴュー&文 : 河村祐介
写真提供 : サラーム海上

イスラエルのサーフ・ロックとの出会い

――まずは、今回解説も書いてらっしゃいますが、現地に行ったこともあるサラームさんに、Boom Pamとその周辺というところでお話を聴きたいんですが。

サラーム海上 (以下、サラーム) : 僕は以前に『21世紀中東音楽ジャーナル』という本を書いてるんだけど、あそこにはイスラエルのことは書いてないんだ。その段階でバルカン・ビート・ボックス(註1)すら忘れてて(笑)。1回しか行ってないからどういう状況かもわからなくて。その段階でBoom Pamは2枚アルバムを持ってたんだけど、それはシャンテル(註2)がプロデュースしていて。でも、それはワールド・ミュージックにありがちなオーヴァー・プロデュースという感じで、あまり良さが伝わらなくて。2年くらい前に、日本とイスラエルの国交60周年パーティでBoom Pamが来るって聞いたんだよ。で、そのときすでにBoom Pamに注目していた久保田麻琴(註3)さんに話したら「え、Boom Pam来るの!」っていう話になって。たしか、それはムーチー(註4)が山のなかでやってるイヴェントのときで…。

――ワンネス?

サラーム : そうそうワンネス・キャンプ。もう、携帯が通じないところで。イヴェント前、山に入る前に最後に久保田さんが「Boom Pam来るならライヴやらせよう、サラヴァ東京でブッキングしたから」っていう話をした後、山のなかで、久保田さんとは連絡できなくなって。それで2日後に帰ってきたら、すでにフライヤーまでできてたっていう。

――さすがですね。

サラーム : 久保田さん相変わらず素早い! って感じで。そのライヴはすごく盛り上がって、日本のベリー・ダンサーが出たりして。それはYouTubeにもうあがってるんだけど。で、さっき言ったイスラエルの大使館系のパーティのときに、イスラエルのCDを売ってたんで、今回出た2枚もそのときに買ったんだ。やっぱりシャンテルがプロデュースした作品よりよくて、さらにライヴも良くて。それが2012年の9月だった。それから毎年11月下旬にエルサレムとテルアヴィヴで世界各国のジャーナリストや音楽フェスのプロモーターやオーガナイザーを呼んで、イスラエルの音楽を世界に広めるための見本市を現地でやっていて。イスラエルの若いバンドを見せるショーケースで、1週目がジャズとワールド、2週目がロックとインディーズっていう感じ。僕はそこに招待されて。ジャズはもともと、やっぱりニューヨークのユダヤ人コミニティと深い関わりがあったりして、技術もすごいし、先日来日したアヴィシャイ・コーエンをはじめ、すでに国際的にも人気があって。ロックなんかも含めて、僕は40組くらいとにかくいろいろ観たけど、レベルが高いんだよね。

――どのあたりですか?

サラーム : ワールド・ミュージックが逆に弱い感じで、ロックとジャズがすごいレベルが高いんだよね。国のなかだけだと商売できないから、アメリカとすごい繋がってるし。ロックに関しては、現地っぽい音階があるバンドもいれば、普通に欧米っぽいバンドがいたりで。イスラエルはメジャーな民族のグループが3種類に分けられる。アシュケナジムっていう東ヨーロッパとかロシアから来た“白いユダヤ”、セファルディムという地中海、イタリアとかトルコとか、わりと肌が茶色い人たち、それとミズラヒムっていう、東を意味するアラブとか中東からきている人たち。例えば、ミズラヒムの人たちはイエメンの音楽を持って来たり、ギリシャの音楽を持って来たりしてて。その昔は、そういう民族音楽は、イスラエルの民族同化政策のなかでラジオなんかでの放送は禁止されてたんだけど、でもギリシャ系のコミニティのパーティーに行くと、そういう音楽が流れてたり。Boom Pamはリーダーのウリ(Uri Brauner Kinrot)が、バルカン・ビート・ボックスのファーストとかセカンドでギターを弾いていて。あのギリシャっぽいギター・フレーズはウリが弾いていて。バルカン・ビート・ボックスの初来日のときに、ウリも来ていたので、僕はそのときにも彼に会っていたんだ。

Boom Pamのウリ、自宅スタジオにて

実はサーフ・ロックのルーツは中東にあり?

――このBoom Pamってどういう意味なんですか?

サラーム : ギリシャ系の移民のアリ・サンというおっちゃん歌手がいて。1960年代にイスラエルに渡ってきて、ギリシャのブズーキ(註5)という楽器を使うレンベーティカという音楽があるんだけど。それをエレキ・ギターに置き換えて演奏してイスラエルで人気者になったんだ。彼のヒット曲に「Boom Pam」って曲があって、このバンド名はそこから取ってる。チャック・ベリーみたいなロックンロールと、エジプトのウンム・クルスームを取り入れてたりとか。だからロックンロールとミズラヒム要素を足した感覚の音楽なんだけど、アリは1980年代まで活動するんだけど、最後はオーヴァー・ドーズで死ぬんですよ(笑)。


これがミズラヒムの若大将ことアリ・サンの「Boom Pam」だ

――ダハハ(笑)。波乱!

サラーム : で、ウリに「ミズラヒムの音楽なんて小さい頃から聴いてたの?」って訊いたら、やっぱり10代の頃は「ださい」と思っていたらしくニルヴァーナとかそういうのを聴いてたらしい。で、20歳ぐらいになって、ミズラヒムの音楽を聴き出したら「やっぱり自分たちの音楽をやりはじめたのはアリ・サンなんだな」って気づいて、敬意を示してBoom Pamっていう名前にしたそうです。「Boom Pam」はイスラエルでヒットしただけではなくて、インドのボリウッドでもカヴァーされてて。だから知らないところで国際的にヒットしてて。

――欧米じゃない文化圏で、なぜか。

サラーム : で、話が大きくなっちゃうんだけどサーフ・ギター、しかもイスラエルでって言うと吹き出す人がいるんだけど。やっぱりイスラエルってガザ地区とロケットが飛び交っているイメージがあるから。でも、実際は西岸は地中海に面したカリフォルニアみたいな気候なんだよ。

――いまリゾート開発もすごいんですよね。

サラーム : そうそう。でもそこにロケットが飛んでくるんだけどね(笑)。1年中サーフィンできるの。ウリの家に行ったら、家の前にサーフ・ボードがあって、海辺で。

――アメリカのサーフ・カルチャー映画とかでよく見る様な。そうなるとむしろサーフ・ロックやるのが普通ですね。

サラーム : そうそう。サーフ・ロックの始祖って言われているディック・デイル(註6)はお父さんがレバノン系で、お母さんがポーランド系とかでルーツ的には中東と東欧なんですよ。彼の「Misirlou」という最も有名な曲があるんだけど。映画『パルプ・フィクション』のテーマ曲として使われたアレね。「Misirlou」っていうのは「エジプトの女」って意味なんだよ。

――あ、でもいまこの流れで言われるとちょっとアラブとかそっちの旋律っぽいすよね。エキゾチックな旋律というか。

サラーム : あれはもともとトルコとかギリシャ、イスラエルとかあの地域の民謡なの。現地に行けばみんな知ってて。あの「トクゥ、トクゥ、トクゥ、トクゥ」っていうのはウード(註7)の弾き方をギターでやってるんだよ。そう考えると、アメリカ発だと思われてたサーフ・ロックが、実は中東のメロディー、中東の弾き方があってできたわけで。今回とはちょっと話がずれるけど、イギリスの80'sニューウェイヴにおける、中東や東欧やユダヤ人の影響って誰も言ってないけど、とても重要だと僕は思っていて。例えばスペシャルズのテリー・ホールは東欧のユダヤ系移民で、スペシャルズの「Ghost Town」や「Gangstars」は東ヨーロッパのポルカやジプシー音楽と共通するでしょう。話を戻すと、サーフ・ロックって、ロックの中でも歌詞のないインストの音楽だったから1960年代に世界中でヒットした。その後ベンチャーズが日本に来て。それで寺内タケシ(註8)が出てきて。寺内タケシが『レッツゴー、運命』ってバッハの「運命」をエレキでカヴァーしているアルバムがあるんだけど、テルアヴィヴ南部のヤッフォにあるウリの家に行ったら、それを自慢気に見せてくれて(笑)。

――テルアヴィヴで寺内たけし、しかも「運命」!!!! 「日本人と言えば」って感じで出してきて(笑)。

サラーム : その瞬間、僕の中で全部つながった感じがあって。サーフ・ロックってアメリカの西海岸だけじゃなくて、彼らは地中海の西海岸でサーフ・ロックをやっている。「いま、西海岸って言ったらテルアヴィヴ」なんだよって。

テルアヴィヴの海岸線、これはサーフィンに良さそう(やったことないけど)。ホテルや高級そうなマンションなどリゾート地の趣

――是非はともかく、イスラエルの国の成り立ちによって、いろいろな民族が集まっておもしろい文化が生まれていると。

サラーム : 新しい国で自分たちには文化がないって、彼らは謙遜して言うんだ。僕たちは寄せ集めのミクスチャーしかないと。でも、もう100年経てばね。イスラエルのジャズはすでにアメリカのユダヤ人コミニティとつながって世界的になってるし、ロックもそれを追ってるし。

――Boom Pam自体は、本国ではどんな存在なんですか?

サラーム : インディーの人気バンドっていう感じだね。イスラエルのおもしろいところは800万人しかいないのと、(紛争とかテロで)先のことはわからないからだろうね、今目の前のことにフォーカスしていて、有名人とかに電話して「明日、取材したい」って言っても「OK」って言ってくれて、かなりオープンなんだよね。だから逆にイスラエル人の知り合いが「坂本龍一さんの電話番号わかる?」と聞いてきて。「わかったって教えられないよ」って(笑)。でも、彼らにはそういう日本的な閉鎖した感覚がわからないんだよ。

――アーティストは上から下までつながってるというか。

サラーム : すごくオープンだよ。必ず誰かと誰かはつながってる。でも、Boom Pamみたいにミズラヒー音楽、いわば田舎っぺ的な音楽要素を前面に出している人はそんなには多くない。中東メタルとかもあって、日本にも来てるよ。

ひとつの“ユダヤ”民族、だけど多様な文化

――あと、こちらのコンピに関しても聴きたいんですけど、音としてはファンクが多いですよね。

サラーム : それも流れがあってね、10年前とかは、やっぱりテクノ、サイケデリック・トランスばっかりだったんだよね。

――イスラエル・トランスって有名ですよね。

サラーム : いまでもあるんだよ。おもしろいのがさ、旧市街とかにいくと、トランスがバキバキに流れてるサウンド・カーがあって、そのまわりに踊ってるやつらがいるんだよ。「なんだろう?」って見てたら、ユダヤ教の超正統派のとあるセクトの若者たち。聖職者だから働かなくていいんだよ、そういうやつらがガンジャ吸って、トランスでガンガンに踊ってるの(笑)。

――ダハハ(笑)。

サラーム : で、現地で「アレはなに?」って聞いたら、セクトの名前は忘れたけど、音楽を通じて祈りをして、ユダヤ人を幸せにするみたいな教義。でも彼らは聖職者だから働かなくていいんだよって(笑)。まぁ、そういうのは音楽的にどうでもいい部類だと思うけど、10年前はトランスで、いまはバンド系がやっぱりたくさんいて。ファンクのバンドはものすごいたくさんあって。でもこのコンピを聴けばわかるけど、サウンド的には完全にファンクに聴こえるけど、キメのフレーズはベリー・ダンスだったりして(笑)。そういうところで、彼らの感覚が出ちゃうんだよね。このコンピが出てから、もう2年経ってるからここに入ってるアーティストが別のテイストのアルバムを出したりもしたし。ロックとかファンクとか、この後も新しいアーティストも出てて。イスラエルのクレイジー・ケン・バンドみたいなのも出てて。それにしてもテルアヴィヴって街が日常的にものすごく快楽的なんだよね。

――やっぱり、さっきみたいな刹那的なところが結びついてるんですかね。

サラーム : そういうのもあるかもね。TwitterとかFacebookでよく出てくるけど、世界で住みやすい街ベスト10とか出てくるじゃん。それにパーティーの街っていうと必ずテルアヴィヴが上位に入ってるもんね。

――わりと音楽が近しいところにあるという感じなんですね。

サラーム : でもみんなそれぞれにいろんな出自があって、Boom Pamのウリも両親はチェコとウズベクで、子供の頃からウズベクの音楽とか、ミズラヒムの音楽が身近にあったって。このコンピにも入ってるクティマンはトルコ系だけど、そういう音楽は聴かない家庭で育ったと、だから出自はそれぞれだよね。

コンピにも参加しているクティマン、スタジオにて

――ユース・カルチャーも普通にあるみたいですね。

サラーム : サーフィンはあるし、スケートボードはあるしね。あとね、女性がタンクトップとショート・パンツでジョギングできる国って、中東でイスラエルだけじゃないかな。貧富の差があるから犯罪率は高いけどね。あとは同性愛者も認められてるし。ヨーロッパから移住してきたイスラエル人にとっては生活自体はヨーロッパと変わらないって感じみたい。

――イスラム圏に囲まれてる国でそれはすごいですね。

サラーム : 友人のイギリス人の夫婦で、移住して10年という人がいるんだけど。イギリスだと階級社会がガチガチで、できることが決まってて息が詰まるけど、イスラエルのほうがよっぽど自由な国だって言ってたな。でもミサイル飛んでくるし、車も盗まれて、空き巣も2回入られたけど(笑)。

――ある意味で、現代にできた実験的な国ですよね。近代以降のすごい状況で生まれた国ですし。

サラーム : そういう国だよね。パレスチナ人を追い出して、砂漠を町や農場に作り替えて作った国。パレスチナというと、日本ではガザ地区のことばかり思い浮かぶかもしれないけど、ラマラのような他の地域もあるし。イスラエルの中に住んでいるアラブ系のイスラエル人もたくさんいるんだ。もちろん、差別はあるんだろうけど、それを全部ガザの問題と一緒にすることはできないと思う。それ以上に、税金や兵役を逃れている超正統派の宗教者や、ヘブライ語を話せない新たな移民などのほうが国内の大きな問題だ、と言っている人も多かった。

テルアヴィヴの市街

――そんな生活しながら、一部は大麻キメてトランス踊ってる(笑)。

サラーム : そうそう(笑)。ごく一部だけどね。彼らは新聞もテレビも見ないし、インターネットも使わない。年金で暮らしている。中には外国人を見ると金をせびってくるような宗教者もいた。とにかくイスラエルという国は国の中にすごい矛盾がある。もちろん、外側にはパレスチナに対する矛盾もある。不謹慎かもしれないけど、そういう所こそおもしろい音楽が生まれてくるのかもしれない。3.11と失われた20年、原発問題などを通じて、大きな矛盾が明るみになった現在の日本で、音楽が面白くなっているのと同じように。

編集部註

註1
BALKAN BEAT BOX
NYのアンダーグラウンド音楽シーンで活躍するイスラエル人3人を中心としたバンド。ジプシー、クレズマー、アラブ、トルコ、ブルガリアン・ヴォイスなどの音楽をジャックしたファンク・ブレイクス、ラガなどをプレイする。日本でも高い人気を誇る。

註2
SHANTEL
BALKAN BEAT BOXと並ぶ、東欧のジプシー音楽をミックスしたクラブ・ミュージック、“バルカン・ビート”のプロデューサー。ドイツはフラクンクフルト出身。

註3
久保田麻琴
1970年代より、裸のラリーズへの参加、自身の夕焼け楽団、ソロなどで活動するこの国の伝説的アーティスト / プロデューサーの1人。ワールド・ミュージックや沖縄や阿波踊りなど日本の伝統音楽を積極的に紹介している。

註4
Moochy
日本のDJ。JUZU a.k.a. MOOCHY、J.A.K.A.M.などの名義、バンド・プロジェクト、NXSなどで活動。

註5
ブズーキ
リュート属のマンドリンに似た弦楽器。ギリシャを中心に、セルビアやボスニア・ヘルツェゴビナといったバルカン半島の民族音楽でも使用される。現代ではアイルランドのバンドが取り入れ、アイリッシュ・ミュージックでも改良したものが使われることがある。

註6
Dick Dale
1960年代より活躍するサーフ・ロック・ギタリストの大御所であり、“キング・オブ・ザ・サーフ・ギター”。文中にもあるように、映画『パルプ・フィクション』や『TAXI』などの映画で使われリヴァイヴァル・ヒットした「Misirlou」(1962年)が代表曲。

註7
ウード
中東、北アフリカのモロッコなど、アラブ音楽文化圏で使われる弦楽器。マンドリン、リュートや日本の琵琶などに近い。

註8
寺内タケシ
日本における通称「エレキの神様」。自身のバンド、ブルージーンズを率いて、1960年代中ごろのエレキ・ブームを牽引。そのブームの起爆剤となったザ・ヴェンチャーズも、その演奏力には白旗をあげたという伝説が残っている。1960年代後半からは、民謡のエレキ・カヴァー、エレキ民謡を大成させるなど、サーフ・ロックにとらわれない表現を探求。1967年に文中にもある『レッツゴー運命』(ベートーヴェンの「運命」のリメイク)でレコード大賞を受賞した。

『ALAKAZAM』発売記念!! 久保田麻琴×サラーム海上の対談公開

PROFILE

写真提供 : Tuff Beats

Boom Pam
東地中海のギターを持った渡り鳥!? 知られざる中東の音楽大国イスラエルを代表するサーフ・ギター・ロック・トリオ、日本初上陸! エレキ・ギターとチューバとドラムスという珍妙な編成で、エキゾティックなギリシャ歌謡、中東ベリーダンス音楽、マカロニ・ウェスタン、バルカンのジプシー・ブラス、そして、どこか日本の昭和歌謡にも通じるイスラエルならではの少々イナタく懐かしいメロディーをザ・ヴェンチャーズ直系のサーフ・ロックに仕上げている。(サラーム海上)

サラーム海上
1967年2月12日生まれ、群馬県高崎市出身。明治大学政経学部卒業。伝統音楽とエレクトロニック音楽の出会いをキーワードに、 中近東やインドを定期的に旅し、現地の音楽シーンをフィールド・ワークし続けている。ラジオやクラブのDJ、中東料理研究、海外ツアー企画など、その活動は多岐にわたる。

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by 梶原 綾乃
JariBu Afrobeat Arkestra『AfroSoundSystem』text by 渡辺裕也
[FREEDL]・2009年07月31日・ フェラ・クティの魂はここにもある フェラ・クティが自身の作り上げた音楽を「アフロビート」と名付けてから40年以上、そのフェラが亡くなって10年以上の月日が経った今でもなお、アフロビートは世界中で支持され、受け継がれてきている。 先日のフジ・ロック・フェスティバルでは、フェラの実子シェウン・クティが父のバンドであるエジプト80を率いて来日公演を果たした。そしてフェラと並ぶアフロビートの第一人者トニー・アレンも今年新作を発表したばかりだ。彼らのようなフェラと直接的な関係で結ばれた者がアフロビートを現在まで引率しているのは確かな一方で、この音楽に魅了される若い世代のミュージシャンは、欧米そして日本でも後を絶たない。アフロビートのルーツを辿ると、どうしてもポリティカルな側面を避ける事は出来ないし、そこには苦い歴史も少なからずあるのだが、それ以上にこの音楽には他にはない享楽性、自由度の高さがある。フェラの意志はそのサウンドに宿る事で未だ求心力を保っているのだ。ジャリブ・アフロビート・アーケストラが演奏するのも、その名に冠している通りアフロビートだが、彼らはこのハイブリット・ミュージックを方法論として用いるのではなく
by 渡辺 裕也