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2017年02月15日
東芝は本日(2月14日)正午に予定されていた2016年4~12月期の連結決算発表を、その直前になって見送りました。
その理由は「内部統制の不備を指摘する内部告発があり、新たな不適切行為の疑いが浮上したから」などと言われていますが、それは決算発表見送りの理由としては「奇妙」です。決算発表とはその時点で確定した数字をできるだけ早く公表するものであり、仮にあとから不適切行為が発見されればまたできるだけ早く公表すべきものだからです。
昨日(2月13日)夕方に配信したメルマガ「闇株新聞 プレミアム」で、東芝は本日の決算発表で昨年末に公表した原子力関連の巨額損失を計上してしまうと2016年12月末時点で債務超過となり、その時点で財務制限条項に抵触して1兆4000億円ある有利子負債の大半が期限前償還を求められてしまうため、東京証券取引所などが「何らかの配慮」をするのではないかと指摘していました。
昨年末の公表とは、原子力子会社の米ウェスティングハウス(以下WH)が2015年末に買収していた米原発エンジニアリング会社のストーン・アンド・ウェブスター(以下S&W)で数千億円規模の損失が発生するという「奇怪」なものですが、それでも公表された損失はそこから最速の決算で(つまり本日予定されていた決算で)計上しなければなりません。
東芝は稼ぎ頭の半導体事業を分社化し、その20%未満の株式を第三者に売却して2000~3000億円の資本を増強し、債務超過を解消しようとしていますが、それでも本日(2月14日)に巨額損失を計上してしまうと「いったんは債務超過」となり、財務制限条項に抵触してしまいます。
そこで金融機関は東芝に期限前償還を求めて回収に走らないと、今度は金融機関に株主代表訴訟のリスクが出てきます。
そこで本日に巨額損失を計上すべきと主張する監査法人と、「3月末までには資本増強で債務超過を回避するので、そこを何とか」と抵抗する東芝との間で、調整がつかなかったと考えます。
東芝の監査法人は昨年6月に「あの」新日本監査法人からPwCあらた監査法人に交代したばかりで、簡単に譲るわけにはいかなかったのでしょう。
そこで出てきた妥協策が本日の決算発表を1か月延期し、監査証明の必要な四半期報告書の財務局への提出も「許容されている限度いっぱい」の1か月延期し、ともに3月14日としたと考えます。
たぶんその3月14日までに半導体事業の分社化・一部売却による資本増強にめどをつけ、そこで2016年12月末時点の債務超過回避を再度監査法人に頼むか、あるいは一時的に債務超過となってもまもなく資本増強で解消できるので財務制限条項には目をつぶってくれと金融機関に頼むつもりなのでしょう。
とりあえずは「時間稼ぎ」しただけです。
いずれにしても資本増強がますます「待ったなし」となるため、本日夕方になってやっと記者会見した綱川社長は「分社化した半導体事業の過半数以上の売却」も言及しました。
東芝の半導体事業にはまだまだ競争力がありますが、支配権のない20%未満の株式売却では買い手にとって魅力が乏しいはずです。しかし支配権を完全に売り渡す過半数以上の売却となると世界中で「奪い合い」となり、かなりの高値(本日は1兆円を割り込んだ東芝全体の時価総額より高値)で売れるはずです。
ただそれでは東芝は唯一の有望事業である半導体事業を(たぶん)外国企業あるいは外国ファンドに売り渡してしまうことになり、ここからどれだけ損失が積み上がるかわからない原子力事業だけの会社になってしまいます。
確かに日米原子力協定があるため、東芝は(日立も三菱重工も)原子力事業を切り捨ててしまうわけにはいかず、日本政府も原発を止めてしまうわけにもいかず、結果的に東京証券取引所、(歴代3社長の刑事責任追及を頑として見送った)検察庁も官邸も経済産業省も財務局も、東芝に対しては徹底的に過保護で対応することになります。
そして今度は金融庁が金融機関に対して「東芝に対しては過保護に対応するように」と指導するのかもしれません。
かくして原子力事業会社となる東芝は、東京電力と同じように国策企業としてゾンビのよう生き残っていくことになりそうです。
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コメント
監査法人
監査法人は新日本監査法人から去年夏にpwcに変わっているようです。単純な事実誤認ですので指摘しておきます
去年5月から、あらた監査法人PwC
東芝の監査法人は2016年度から新た監査法人に交代しています。さすがに「あの」新日本監査法人の続投はありえないです。
もう少し長い目で見ると、個人的には今後東芝の半導体ストレージ事業が儲かる事業であり続けるとは到底思えないので、高値が付く内に売っぱらえて結果オーライな気がします。
ご指摘いただいた皆様方へ
ご指摘ありがとうございます。確かに昨年交代しており、事実誤認でした。
本文を訂正させて頂きました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
闇株新聞編集部
ご指摘ありがとうございます。確かに昨年交代しており、事実誤認でした。
本文を訂正させて頂きました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
闇株新聞編集部
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さみしいねぇ~
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