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元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

「韓国人に生まれなくて良かった」元駐韓大使が心底思う理由

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
【第18回】 2017年2月14日
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徴兵制が生んだ男女格差
過酷な韓国人男性の実態

 これは番外編である。意外と知られていないが、昨年、韓国外務省の合格者の7割超が女性であった。一般的に筆記試験の成績を見ると女性の方がいい。しかし、韓国の状況は驚きである。他の国家試験についても資料はないが、同様な傾向だと聞く。

 その一つの要因は、男性に科された徴兵制ではないか。男性が兵士に取られている間に女性は試験準備をしている。ある時、韓国の人に、女性についても同じ期間、社会奉仕活動に従事してもらうかしないと、男性はますます不利になるのではないか、と問うたことがある。その時の先方の答えは、そのようなことを言えば、女性団体の激しいバッシングを受ける、「それならあなた、子どもを産んでごらんなさい」と言われれば、答えようがない。

 韓国ではますます女性が男性よりも高い地位に就いていくのではないか。

 男性にとって何より不幸なことは、「キロギアッパ(雁になった父)」と呼ばれる現象である。子どもの教育のため、母子で幼少期から海外留学をする。父親は韓国内に残り、インスタント食品を食べながら、せっせとお金を稼ぎ仕送りをしているのである。それでなくても子どもができると家の中で居場所のない父親がいるのに、幼少期から子どもと離れているとますます、家庭の中で存在感をなくしていく。

超競争社会に対する不満が
日本に飛び火

 このように、韓国の中で、競争し成功を収めていくことは並大抵のことではない。韓国ではなく日本に生まれたことをつくづく幸せに思う。

 競争社会の中で必死にもがいても報われないとの不満。その不満が朴大統領に向いているというのが今の韓国の状況である。さらに、その不満の対象である朴大統領が在任中、日韓関係を改善しようとしてきたことから、攻撃の先が日本に飛び火しているのであって、朴大統領とはかかわりのない歴史問題、政治問題以外について韓国人の対日感情は決して悪くない。

 次期大統領については、今の候補者の顔ぶれから見て、誰がなっても日韓関係は一層厳しくなると思われる。しかし、朴大統領という不満の対象がなくなれば、あるいは現在の格差問題が多少でも和らげば、そこから別の可能性が芽生えてくるかもしれない。

 いずれにせよ、韓国をより客観的に、より深く理解することが重要である。

(元・在韓国特命全権大使 武藤正敏)

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質問1 韓国と日本、生まれ変わるとしたらどちらの国民がいいですか。



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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

冷え込んだままの日韓関係。だが両国の国民は、互いの実像をよく知らないまま、悪感情を募らせているのが実態だ。今後どのような関係を築くにせよ、重要なのは冷静で客観的な視点である。韓国をよく知る筆者が、外交から政治、経済、社会まで、その内側を考察する。

「元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」」

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