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これでいいのか!? 2016年のマンガベスト10 『このマンガがすごい!2017』『このマンガを読め!』<マンガ停留所> - 中条 省平

 2016年も終わり、マンガの世界でもベスト・ランキングが発表されました。

 主な媒体は、宝島社刊行のムック『このマンガがすごい!2017』と、季刊カルチャー誌「フリースタイル」の特集「THE BEST MANGA 2017 このマンガを読め!」です。例によって両者のベストテンを列挙します。ただし、『このマンガがすごい!』は「オトコ編」と「オンナ編」に分かれているので、それぞれベスト5作品です。

【『このマンガがすごい!』オトコ編】



1位 萩原天晴作/三好智樹・橋本智広画『中間管理録トネガワ』
2位 高野ひと深『私の少年』
3位 藤本タツキ『ファイアパンチ』
4位 うめさわしゅん『パンティストッキングのような空の下』
5位 堀尾省太『ゴールデンゴールド』

【『同』オンナ編】



1位 岩本ナオ『金の国 水の国』
2位 小西明日翔『春の呪い』
3位 永田カビ『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』
4位 尾崎衣良『深夜のダメ恋図鑑』
5位 やまもり三香『椿町ロンリープラネット』

【「このマンガを読め!」】



1位 スケラッコ『盆の国』
2位 大和田秀樹『疾風の勇人』
3位 岩本ナオ『金の国 水の国』
4位 高浜寛『ニュクスの角灯(ランタン)』

5位 ひらのりょう『FANTASTIC WORLD』
6位 深谷かほる『夜廻り猫』
7位 折口信夫作/近藤ようこ画『死者の書』
8位 藤田和日郎『双亡亭壊すべし』
9位 五十嵐大介『ディザインズ』
10位 雲田はるこ『昭和元禄落語心中』

 見事にバラバラです。

 重なりあったのは岩本ナオ『金の国 水の国』のみ。確かにこれはとてもいいマンガですが、3年前の代表作『町でうわさの天狗の子』に比べると、異国ファンタジーの政治寓話という特異なジャンルに完璧なまでに収まってしまい、子供っぽく小粒に見えてしまうところがちょっと不満です。でも、総体的に低調だった昨年のマンガのなかではすぐれたマンガといえるでしょう。

 リストに上がったなかで、私にとってのベスト級は、『パンティストッキングのような空の下』『ニュクスの角灯』『死者の書』『ディザインズ』『昭和元禄落語心中』です。
『パンティストッキングのような空の下』は、三上寛の往年の大スキャンダルアルバム『ひらく夢などあるじゃなし』を発想源にして、この閉塞したつまらない日本の世の中に悪趣味きわまる奇想を叩きつけた気骨のある力作。画力も恐ろしいほど高度です。

『ニュクスの角灯』は、異色女性作家・高浜寛が、今回は露悪的な陰鬱さを抑えて描いた、レトロな骨董趣味の横溢する明治文明開化もの。じつに上出来の人情ドラマにもなっていて、「この作者が…」とびっくりしました。

『死者の書』はすでに本コーナーで取りあげましたのでご参照ください。『ディザインズ』は、人間と動物の遺伝子をかけ合わせた新生物が武器に転用されるという設定のSFで、まだ1巻が出ただけなのですが、どれほどのスケールに拡大するか、大いに期待されます。また、五十嵐大介の鮮烈なアクション描写が冴えわたります。

『昭和元禄落語心中』は足かけ7年の長丁場がついに10巻で完結したもの。落語の世界の深さを描く感動的な人情話ですが、二重の謎解きをもつミステリーでもあり、2016年の大きな収穫となりました。

 最後に強調したいのは、『このマンガがすごい!』オトコ編で『中間管理録トネガワ』がベストワンになったことへの違和感です。これは福本伸行の絵柄と物語をほかの作者たちが意図的に模倣した「再現マンガ」です。福本マンガのパロディですらないこの作品が現代日本マンガのベストワンとは! 選ぶ人々の批評力の欠如をありありと物語っています。がっくりきました。

関連書籍

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10年前すでに戦争とテロと格差社会を描いていたマンガは、つねに世相の3歩先を映し出す予言の書である。そしてその後、何を予言し的中させてきたか。マンガを論じるとは、まさにこれを読み解くことでもある。『デスノート』『ソラニン』『すーちゃん』『へうげもの』『闇金ウシジマくん』『20世紀少年』『この世界の片隅に』『JIN-仁-』『PLUTO』『鋼の錬金術師』etc.からフランスのマンガBD【ルビ:ベーデー】まで、この10年間の数百冊を取り上げ、読み方のヒントを明示し、現代日本そのものを読み解く。

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マンガなど読んでいてはバカになる―そう嘆く世の風潮を激しく批判し、マンガと劇画を擁護した三島由紀夫は、かつてこう説いた。「若者は、劇画や漫画に飽きたのちも、これらを忘れず、突拍子もない教養を開拓してほしい。貸本屋的な鋭い荒々しい教養を」と。そして今、大学中心の教養主義が崩壊し、かつて「反」の象徴だったマンガが教養として語られる時代となった。ギャグから青春、恋愛、歴史、怪奇、SFまで豊饒たるマンガの沃野へ踏み出す第一歩のための、最適な傑作100冊とその読み方ガイド。

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