14日昼12時。発表予定の時間を過ぎても、東芝の2016年4~12月期決算の資料が出てこない。今日の決算発表は東芝の命運を決める大事なイベントなのに、想定外の遅れが生じてしまっている。東芝の決算に「お墨付き」を与える監査法人との協議が難航したとされている。
■「遅れ」の常習犯に
金融市場やメディア各社が注目していた東芝決算。昼12時という発表予定時刻が以前から周知されていたため、誰もが固唾を飲んで見守っていた。
ところが、予定の12時をすぎても、会社のホームページにも日本取引所グループの適時開示情報閲覧サービスにも決算資料が公開されない。その代わり、東芝のホームページを見てみると、素っ気ない一文が掲載されていた。
「2016年度第3四半期の決算を、本日公表することをお知らせしておりましたが、本日12時時点では開示できておりませんことを、お知らせします。(2月14日12:00現在)」
決算発表の延期のお知らせだった。
東芝は過去、経営にかかわる重要な発表案件について何度も発表時間の遅れがあった。アナリストやメディアからしばしば批判される「常習犯」だった。
しかし、きょう14日は東芝にとって「特別な日」。決して失態は許されない。この日に発表される決算数字を見て、投資家はもちろん、取引金融機関、さらには政府関係者も東芝の将来を判断していくからだ。
■債務超過は回避できるか
東芝は2017年3月期末時点で債務超過を回避できそうなのか。それとも、無理なのか。債務超過に陥れば、株式の上場市場が現在の東証1部から2部に変更される。さらには、金融機関からの資金調達に支障が出る恐れも膨らむだろう。東芝は、そんな瀬戸際に立たされている。
そもそも、東芝は、この日に向けて準備を進めてきたのではないか。債務超過を回避するため、「ドル箱」である半導体メモリー事業の分社にも踏み切る覚悟を決めた。
それもこれも日本のエレクトロニクス産業を支えてきた名門電機メーカーの命脈を保たせるためだろう。しかし、肝心の情報開示はゴタゴタが続き、投資家らに再び失態を見せてしまった。
経営首脳のいざこざに始まり、その後の迷走を決定づけた会計不祥事の発覚、そして原発事業の巨額損失。東芝の経営陣が投資家の信用を取り戻すのは簡単ではない。14日12時時点の東芝が投資家に再び見せてしまったのも、ただただ残念な姿である。
(武類雅典)