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「コメダ珈琲」にみる名古屋の喫茶店文化とは

スズキ 経営ノウハウ 飲食店業界特集

2016年6月、コメダ珈琲店を運営する株式会社コメダホールディングスが東証一部に株式上場を果たしました。同年8月に国内で700店舗を達成し、スターバックスコーヒー、ドトールコーヒーショップに次いで、店舗数で国内第3位の巨大コーヒーチェーンの仲間入りとなりました。

コメダ珈琲をはじめとする名古屋の喫茶店といえば独特の文化がありますが、今回は、名古屋市出身の筆者がそれらをご紹介します。


名古屋の喫茶事情について

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調査!名古屋の喫茶店数&年間消費金額

平成26年度と少し古い情報ですが、全国の喫茶店事業所数(69,977店)のうち、人口1000人当たりの事業所数は、高知県、岐阜県に次ぐ第3位の8,428店。喫茶店従業者数は、全国で東京をしのぐ第1位です。
 
年間の喫茶店消費金額においては、平成25年~27年の家計調査(2人以上の世帯)によると、全国平均は5,770円。さらに県庁所在地、および政令指定都市別に見たとき、名古屋市は14,301円全国平均から2倍以上の金額となっており、突出しています。
参考:統計トピックスNo.95 経済センサスから分かる日本の「いま」 喫茶店の「いま」

 

独自の喫茶店文化

なぜ名古屋には喫茶店が多く、消費も多いのか?調べてみても諸説あり、明確なことは分かりませんでした。しかし、喫茶店が多い激戦区であるからこそ独自のサービスが生まれ、名古屋、あるいは愛知県特有の文化として認知されたのだと思います。

  
分かりやすい大きな特徴でいえば、 
1つ目は、モーニングサービス(単にモーニングともいう)です。
 
f:id:tentsu_media:20170210180816j:plain画像引用:https://www.atpress.ne.jp/news/81479 
 
早朝の時間帯にコーヒー1杯を注文すると、トーストやゆで卵、デザートなどがついてくるお得なサービスです。コメダ珈琲では「選べるモーニングサービス」を実施しており(開店~11時まで)、定番のゆでたまごの代わりに、手作りのたまごペースト、名古屋名物のおぐらあんと、3種類から選ぶことができます。
※2017年2月現在。一部の店舗では「選べるモーニング」を実施していません。

名古屋では当たり前となっているサービスですが、発祥の地は愛知県の一宮市、豊橋市ともいわれています。
 

2つ目は、コーヒーチケットです。

f:id:tentsu_media:20170210181444j:plain画像引用:チケット | 珈琲所コメダ珈琲店
  
多くの店では11枚つづりになっており(1枚はコーヒー1杯の値段)、10杯分の値段で購入ができます。つまりコーヒー1杯分お得になる回数券のようなもので、次回の来客を促す仕組みです。

私の実家近くの喫茶店では、常連客の名前が書いてあるコーヒーチケットが壁の一角に貼り付けてあり、飲み屋でいうところの“ボトルキープ”のようなサービスをしていました。これらの特徴を考えると、お得感があるサービスを好む傾向があるのではないか、と考えておきます。


地域密着型の出店

コメダ珈琲の立地を見てみると、駅前の一等地での出店は少ないです。かといって、国道のような大きな道路沿いを集中的にねらっているとも思えません。郊外の生活道路沿いに出店しているケースが多く見受けられ、地域に根付き、そこに暮らす人々の生活の一部として溶け込んでいます。当然、駅前の一等地より家賃などのコストは安く、店舗周辺に一定の人口があれば成り立つという勝算があるのでしょう。
 
特定の飲食店(居酒屋、カレー屋、寿司屋など業態別で)にはたまにしか行かないが、喫茶店は一定の頻度で通うという人が私の周りには多くいました。それぞれの家庭で行きつけの店があり、このような考えの人々をコメダは取り込んでいます。

 

喫茶店の本質は”貸し席屋”

f:id:tentsu_media:20170210184109j:plain画像引用:珈琲所コメダ珈琲店
 
喫茶店の本質は「貸し席屋」とよくいわれます。
 
企業の応接間の代わりとしての利用をはじめ、隙間時間での利用、仕事などちょっとした軽作業での利用など、どのように使ってもらうのか=どのような顧客層をターゲットとするのかを店舗側が考えていると思います。
 
名古屋に限りませんが、回転率を上げるために客席の椅子を固くて長時間座りにくいものに変えたり、冷暖房で極端な温度に設定したりといった喫茶店も一時期は増えていたそうです。現在は、長居できる居心地のいい喫茶店が増えています。
 

私にとっての喫茶店とは…

特別においしいコーヒーがあるわけではなく、なんとなく落ち着くところ。カフェなどに見られるオシャレすぎて入りづらいという事もなく、いつでも気軽に入れるところ。日常生活に溶け込み、地元の方をはじめ固定客に愛される安心できる空間が、コメダをはじめとする名古屋の喫茶店の魅力だと私は思います。

 
≪参考≫
株式会社コメダHP:http://www.komeda.co.jp/index.php#
東洋経済オンライン:http://toyokeizai.net/articles/-/126473
総務省統計局家計調査:http://www.stat.go.jp/data/kakei/5.htm
経済センサス基礎調査:http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001068220&cycode=0
「なぜコメダ珈琲店はいつも行列なのか」高井尚之

 


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