いらすとやのランダム機能を活用して三題噺を作ったが、不評だった。
悔しかったので、リベンジしてみる。
3枚のお題
「いらすとや」のランダム機能で出てきた3枚の画像は次の通り。
- 1枚目、五輪書のイラスト
- 2枚目、店員さんのイラスト(男性)
- 3枚目、癒着のイラスト
それではいってみよう。
三題噺「発禁本」
1
一番笑顔の店員に言えば分かる。
そう言われたN氏は、店内を見渡した。あの男に違いない。
「この店なら、手に入れられると聞きました」
N氏が店員にそう告げると、満面の笑みは消え去った。こわばった表情の店員は聞き返す。
「誰に聞いたんですか?」
「それだけは、言えません」
店員のゴクリとつばを飲み込む音が聞こえた。用心深くあたりを見回し、おもむろに頷く。
「待っていてください」
そう言って店の奥へと消えていった。
N氏は思った。おかしくなったのはいつからだろうか。
2
今、あのイベント名を口にするのは禁止されている。許されるのは、莫大なスポンサー料を協会に収めた一部の大企業だけ。
中小のメディアはもちろん、ブロガーも、個人も、そのイベント名を口にすることは認められていない。
2020年までは、まだ許容された。
それまでもカタカナ表記のイベント名や、イベントを想起させるフレーズの使用は禁止されていた。しかし、日本語での呼称は問題なかった。誰でも使えた。
結果的に、日本語名での呼称が一般化した。スポンサー料を払えないウェブメディアがこぞって利用したのが要因だと言われている。
協会側は黙っていなかった。政治家に多額の賄賂で癒着し、日本語でのイベント名呼称も禁止にしたのだ。
それだけではない。イベント名の日本語呼称を含む商品名も書籍も、すべてが禁止された。もし破れば、多額の費用を請求されるだけでない。連れ去られ、国立競技場に収容されてしまう。
N氏は絶望に近い思いでいた。過度な言葉狩りが、世の中をおかしくしてしまったのだ。
「お待たせしました、こちらです」
店員の声で、N氏は我に返った。
その時だった。監視員たちが駆け寄ってきた。
3
「お前たち! それは、発禁本だな! ずっと監視していたぞ!」
二人は取り押さえられた。密告者がいたのだろう。組織は、巨額の費用を投じて、イベント名の不正利用を防いできた。巨額のスポンサー料を原資として。
暴れるN氏と店員。屈強な男たちに取り押さえられ、辺りは騒然となった。
堪りかねたN氏が叫ぶ。
「4年に1度の祭典がやってくる!がんばれ!ニッポン!負けるな!ニッポン!オリンピック万歳!五輪万歳!」
店員も叫ぶ。
「日本選手!目指せ金メダル!日本代表!応援します!オー・エル・ワイ・エム・ピー・アイ・シー!OLYMPIC!オリンピック万歳!五輪万歳!」
叫ぶ二人は連れ去られ、店に静寂が戻った。
カウンターの上には、五輪書が残されていた。
おわりに
オリンピック表記の使用制限をテーマに三題噺をつくってみた。
もちろんフィクションなのでこんなことにはならない。多分。