ストレスと上手に付き合い
「燃え尽き」を防ぐ5つの方法

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大病院の医療責任者らに訊く、ストレス管理法。本記事が示す5つの習慣はどれも、心の知能(EQ)に直結している。


 ストレスと燃え尽き(バーンアウト)は同じではない。たしかに、ストレスが燃え尽きにつながることはよくある。とはいえ、長時間労働、強いプレッシャー、仕事上のピンチなどに対し、燃え尽きの症状から自身を守りながら対処することは可能だ。燃え尽きの症状とは、(1)感情の消耗、(2)他者への虚無的・非人間的な対応、(3)個人的達成感の欠如、である(心理学者クリスティーナ・マスラークの定義による)。

 カギは、心の知能(EQ)の活用にある。

 これは筆者らの1人(ウィーンズ)が、35の大病院で働く35人の最高医療責任者を対象とした最近の調査で明らかにしたことだ(英語論文)。我々は、彼らのストレスのレベルを検証したうえで、燃え尽きへの何らかの対策をしているか、答えがイエスならばそれは何かを調べた。

 その結果には驚かされた。医療責任者の大多数(69%)は、現在のストレスレベルは「高い」「非常に高い」または「最悪」と答えた。にもかかわらず、過半数は「マスラーク・バーンアウト尺度(MBI)」で燃え尽きの状態を示さなかったのだ。医療責任者たちへのインタビューのなかで、ストレスをコントロールする共通の要因が見つかった。それがEQである。

 筆者らのもう1人(マッキー)が以前にも書いたとおり、EQは慢性的なストレスに対処し燃え尽きを防ぐうえで有効であることが、研究で示されている(本誌論文「EQの高いリーダーが生み出す組織活力」)。

 たとえば、EQの一要素である「感情の自己認識」によって、フラストレーションや不安の原因を理解でき、他の反応による対処を考えやすくなる。また「自己コントロール」によって、ストレスに直面しても平静を保ち、衝動を抑制し、適切に行動できる。「対立管理」のスキルがあれば、不安や感情を問題解決モードに転換できるため、一晩中眠れないほど悩むこともない。

「共感」もストレスとの闘いに役立つ。他者を積極的に理解しようとすれば、おのずと相手に配慮できるようになるものだ。「思いやり」は他のポジティブな感情と同様に、ストレスの生理学的影響に対抗できる。そして他者の視点、態度、信念に寄り沿う「同調」は、信頼の獲得と他者への影響力につながる。これは多くの場合、きわめて実際的な意味を持つ。ストレスが燃え尽きに至ってしまう前に、周囲から必要な助けを得られるということだ。

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