子宮頸(けい)がんを防ぐワクチンの接種が原因で健康被害を受けたとして、10~20代の女性28人が国や製薬会社を相手取り、1人あたり1500万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が13日、東京地裁であり、国と製薬会社は全面的に争う姿勢を示した。同様の集団訴訟は大阪、名古屋、福岡の各地裁でも起きており、原告は計119人にのぼる。
■転校を余儀なくされ
「以前のように皆と笑い合った日々を、体を返してください」。東京地裁の法廷に、車いすに座った原告の園田絵里菜さん(20)=千葉県白井市=の声が響いた。
最初にワクチンを接種したのは中学3年だった2011年8月。接種の助成を知らせる自治体の案内がきっかけだった。「はしかやインフルエンザと同じで、当然受けるもの」という思いだった。直後、腹部に痛みを感じたが、12年3月までに3回接種した。
高校進学後、頭痛や発熱が続き、徐々に全身が激しく痛むように。母小百合さん(53)が付き添ったが、車いすでも通学できなくなり、高校3年の秋、通信制の高校への転校を余儀なくされた。学校や病院が症状を理解してくれないことが何より、つらかったという。体の痛みから、「死んだ方がまし」とも思った。
大学で心理学を学び、それを生かした職業に就くのが夢だった。現在は10分以上立ったり、歩いたりできない。昨春、通信制大学に進んだが、激しい痛みで入院して点滴を受ける。
この日は別の原告女性が意見陳述する予定だったが、入院生活が長引き、急きょ、園田さんが法廷に。「国や製薬会社には、全国に同じ思いをしている人がたくさんいることを認めてほしい」
一方、国と製薬会社2社は請求棄却を求め、全面的に争う姿勢だ。法廷では2社がそれぞれ意見陳述し、「ワクチンの有効性や安全性は複数の研究で証明されている」などと反論した。(山本亮介)
■症状などを追加分析中
子宮頸がんワクチンをめぐっては、対象者にはがきなどで接種を促す「積極的な勧奨」が3年半以上、中止されている。
厚生労働省の研究班は昨年12月、「接種歴がなくても、(全身の痛みなど)接種後と同様の症状をもつ子どもが一定数存在した」とする全国調査の結果を発表した。子宮頸がんは若い女性で増加、ほかのがんと違って死亡率も増えており、勧奨中止で接種率が1%未満となったと懸念する日本産科婦人科学会は今年1月、早期再開を求める声明を改めて出した。世界保健機関(WHO)も「いかなる安全性上の問題も見つかっていない」とワクチン接種を勧めている。
ただ、12月の調査結果では、接種歴の有無で症状の出る割合に違いがあるかは「比較できない」とした。このため研究班が、年齢による症状の傾向などより詳しい追加分析を進めている。その結果次第では、勧奨再開に向けた議論が始まる可能性がある。
一方、厚労省は被害救済も進め、今月3日までに約250人が治療費などを認められた。医療的な支援だけでなく、生活や学校での支援を強化するため、全都道府県に相談窓口も設けている。(竹野内崇宏)
◆キーワード
<子宮頸がんとワクチン> 子宮頸がんは性行為によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染が主な原因とされる。厚生労働省によると、国内では年間1万人(上皮内がんを除く)が新たに診断され、約2700人が死亡する。ワクチンは約半年間に3回受けるのが基本で、子宮頸がん全体の5~7割の原因とされる2種類のHPVの感染を防ぐ効果があるとされる。
2010年に国が接種の公費助成を開始した。13年4月から小6~高1を対象とした定期接種が始まったが、接種後に深刻な被害を訴える声が相次ぎ、国は同年6月、積極的な勧奨を中止。厚労省によると、16年4月までに約340万人が接種を受け、副作用の疑い例が約2900件報告された。
◆主な争点と当事者の主張
◇ワクチンの有効性
<原告>子宮頸がんの予防効果は実証されておらず、効果が続く期間も不明。有効性は極めて低い
<製薬会社>大規模な臨床試験が有効性を証明
◇ワクチンの安全性
<原告>国内外で副作用の報告数が多く、重症例の割合も高い
<製薬会社>臨床試験で安全性は確立され、世界の保健機関も認めている
◇ワクチンと健康被害との因果関係
<原告>ワクチン接種後に症状が出ており、他の原因を合理的に説明できる知見もない。経験則上、優に因果関係が認められる
<製薬会社>ワクチン接種後に健康被害が出た事実だけでは、因果関係があるとはいえない。複数の試験によれば、因果関係はないとされている
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