“ビジネス × デザイン” の世界に出会うための25冊(前編)
Podcastで告知した通り「ビジネスデザイナーのための25冊」を公開してみます。
知る → 考える → 作る → 伝える → 届ける → 育てる
デザインプロセスを、乱暴にこの6つに分けてみました。本もこの順番で緩やかに並べています。
書籍によっては、複数のプロセスを横断的に捉えている本もあります(むしろその方が多い)。個々の「本の重心」を見極めながら、一番重みがかかっているプロセスにプロットしてみました。
表の上部は、その分野の世界観を紹介してくれる本。表の下部に行くにつれて、実務・マニュアル本色が濃くなります(下記のリストの番号は上の表に対応しています)。ビジネスデザインに興味を持ち始めた方は、表の上の方からピックアップ頂いた方がいいかもしれません。
私の少ない読書歴からリストを作っています。知見のある方のフィードバックをもらいつつ、このリストがさらに充実したものになることを願っています。
1. The Meaning of Things: Domestic Symbols and the Self
数年前にフロー理論で名を馳せた、チクセントミハイの代表作の一つです。
ヒトは、日常的に触れている、何の変哲も無い”Object”に、どう意味を見出しているのか。徹底的なインタビューや観察に基づき、社会心理学的観点から語られています。
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訳書はこちら。
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2. Hidden in Plain Sight
元frogのリサーチャーが著したデザイン・リサーチに関する本。世界中を旅しながら、どういう方法でリサーチし、どういう方法でインサイトをまとめているか。ビジネス書というよりも、洞察に飛んだエッセイのような謙虚な語り口。
デザインリサーチャーの仕事ぶりや、価値観、世界観を知る入り口としては、最良の書です。
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訳著はこちらです(自然で透明感のある文体。日本語訳も素晴らしいです)。
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3. Interviewing Users: How to Uncover Compelling Insights
ユーザ・インタビューの実務ガイド。
事前の準備の仕方、当日のメモの取り方、カメラを回す時のコツ、質問集サンプル、当日心構え(トイレは先に済ませておきなさい)など「箸の上げ下げ」レベルのことまで、細かく書いてあります。ある意味、こういう書籍(コテコテの実務書)があることが、アメリカの”知の厚み”なのだ、と思い知らされるような一冊です。
これを徹底的に読み込めば、日本でも指折りのユーザインタビューのスペシャリストになれると思います。
Interviewing Users: How to Uncover Compelling Insights [Kindle edition] by Steve Portigal. Download it once and read it…amzn.to
4. 101デザインメソッド ―― 革新的な製品・サービスを生む「アイデアの道具箱」
著者のVijayは、Doblinというファームで何十年もデザイン・ストラテジーの分野でフレームワークを作り続けていた人です。私も、シカゴのデザインスクールで、彼に習っていました。
この本の価値は大きく2つあります。
まずはデザインプロセス。デザイン思考的な仕事がどのように進んでいくのか、大まかに把握することができます。
第2に、百数十ものデザインフレームワークやツール群。圧巻のリストです。細分化されたデザインプロセスごとに有用なフレームワークやツールがまとめられています。ただ、網羅性重視のため深堀りはされていません。いざ個別のツールを実務で使おうとすると、物足りなさを感じてしまうかもしれません。
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5. Sketching User Experiences: Getting the Design Right and the Right Design (Interactive Technologies)
ユーザ体験をどうビジュアライズすべきかについての本です。事例が古い、という批判がありますが、顧客体験をどうビジュアライズするか、というアプローチが微に入り細に入り語られています。
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6. Mapping Experiences: A Guide to Creating Value Through Journeys, Blueprints, and Diagrams
オライリーから出ているユーザ体験の構造化・ビジュアル化の教科書。ストーリーやカスタマージャーニー、体験フローの可視化の方法論がまとめられています。この手の分野で、日本語で流布しているほとんどの情報や体系をこの一冊で網羅できます。
ユーザージャーニーマップは、ランダムで多様な情報・アイディアの整理・統合のツールです。さらに、サービス検討の発射台となる、非常に重要なコンポーネントです。日本語でもいくつか書籍がありますが、理解と分析の解像度が粗く、あまり実務に耐えるものはありません。
その点、この本は網羅的な「原論」であり、この一冊で、ユーザージャーニー周りは全てが事足ります。
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7. 機会発見――生活者起点で市場をつくる
大学院(イリノイ工科大学Institute of Design)の先輩、岩嵜さんの著書。デザイン思考を「機会発見」と再解釈されています(素晴らしい翻訳の仕方だと思います)。実務と理論のバランスが取られ、デザイン思考プロセスの考え方の前提やそのプロセスが、日本語では最も高いレベルで咀嚼・解説された本だと思います。
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8. クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法
IDEOのケリー兄弟の最新著作。理論や考え方、というよりは実践のための本。マインドセットを変えるのみならず、行動への誘いをさせてくれる、素晴らしい読後感を与えてくれる本です。
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9. Making Meaning: How Successful Businesses Deliver Meaningful Customer Experiences (Voices That Matter)
「エクスペリエンス経済」の時代が到来した時代背景や、なぜ“意味”のデザインが必要かが、体系的に紹介されています。豊富なフレームワークが提供され、実務へのつなぎこみにも多くの示唆を与える良書です。
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10. Wired to Care: How Companies Prosper When They Create Widespread Empathy
著者は、自社を「IDEOとマッキンゼーの中間」と位置づける、Jump Associateというイノベーション・ファームの創業者。
事業における、ユーザとの“共感”の重要性を豊富なケーススタディで紹介。メルセデス・ベンツ、ディズニー(役員室にベンガル虎を持ち込んでアイズナーを説得したエピソードは圧巻ものです)、マイクロソフトのXbox…。ユーザとの共感の作り方だけでなく、その共感を、凝り固まった大企業内で伝播させて行く方法についても、豊富な事例で紹介されています。
私は、この本を読んで、いろんな意味でマインドセットが変わりました。このリストの中で、個人的に一番好きな本です。
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11. 21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由
こちらも大学院の先輩、佐宗さんの著書。佐宗さんは、P&Gという、論理思考が重んじられる環境でキャリアをスタートさせます。そこから、デザインスクールで新しい思考方法を獲得された過程をベースに、デザイン思考とは何か、デザイナーがどのように行動し、発想するかが紹介されています。
ビジネスからデザインの世界に踏み込まれようとしているビジネスマンの方にとっては、共感されるポイントが非常に多い本なのではないかと思います。
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かくいう私も、昔に佐宗さんのブログに触発されてデザインの世界に踏み込みました。こちらのブログも非常にお勧めです。
アメリカのDesign School、D School留学記です。IDEOで有名な人間中心デザインやイノベーションの手法idllife.blogspot.jp
12. Business of Design
著者のロジャー・マーティンは、カナダのトロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネジメントの元学長。デザインと経営の融合、という思考の潮流を世界的にリードした一人です。実際、同校ではデザイン思考的なプログラムを世界のビジネススクールに先駆けて導入し、大きな成功を収めています。
イノベーションを起こすには、分析的・還元主義的思考では不十分。デザイン思考がなぜ、21世紀型のイノベーションに必要なのかが、アカデミックな視点から整理して書かれています。
(後編は追って公開します)