「政権の関与はない」 大阪の国有地は「神道の小学校」に「9割引」で売られたのか、財務省に聞く

売却された土地には、「日本で初めてで唯一の神道の小学校」ができる予定だ。購入した森友学園には、安倍政権の関係者や、改憲運動を目指す保守団体「日本会議」が関わっている。

1. 学校法人「森友学園」は、大阪の国有地を適正価格の1割で購入していたのか?

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2月9日に朝日新聞が報じた特ダネ「森友学園が大阪の国有地を適正価格の1割で購入していた」。その土地の小学校の名誉校長が安倍晋三首相の妻・昭恵さんだったことなどから、売買の透明性に批判や疑念が集まっていた。

財務省はこれまで価格を公開していなかったが、報道を受け、突如公開に転じた。その中で「埋設物の撤去・処理費用である8億円を控除した」と説明。BuzzFeed Newsの取材に「適正な取引だった」と強調している。

では、どういう経緯で「非公表→公表」の判断が下されたのか。なぜ、8億円もかかるのか。

2. これまでの流れを振り返る。

件の学校法人「森友学園」は2016年6月、大阪府豊中市野田町の国有地約8770平方メートルを購入している。原則として公表されるはずの売却額は、非公表だった。

朝日新聞が2月9日に報じた「学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か」という記事では、土地の価格が「売却額は同じ規模の近隣国有地の10分の1だった」と指摘している。

この土地には、森友学園が運営する「日本で初めてで唯一の神道の小学校」である「瑞穂の國記念小學院」が開校する予定だ。

小学校のサイトによると、名誉校長は安倍晋三首相の妻、昭恵さん。校長を務める籠池泰典氏は、政権にも近く、改憲運動を目指す保守団体「日本会議」の大阪支部役員だった。

なお、BuzzFeed Newsは朝日新聞の記事を引用する形で、「『愛国心』と『天皇国日本』が教育理念 9割引で国有地を買った小学校、名誉校長はあの人」という記事を掲載している。

3. これまで、財務省は豊中市議や朝日新聞の情報開示請求に応じていなかった。しかし報道の翌日、突如として公開に転じた。

共産党の宮本徹衆院議員が公開した発表資料によると、土地の価格は報道の通り「1億3400万円」だ。ただ、これは地下埋設物(廃材及び生活ごみ)の撤去・処理費用である「8億1900万円」を控除した金額だという。

これまで価格を非公表にしていた理由としては、「地下埋設物の存在が周知されることにより小学校に入学する保護者等への風評リスクが懸念」され、学校法人から「契約金額を公表しないよう要請があった」と説明。

また、今になって価格を公表した理由は、「今般マスコミに報道された結果、非公表を継続した場合、国有地を不当に安く取得した等の誤解を受けるおそれがあると判断」した、としている。

4. BuzzFeed Newsは、改めて財務省国有財産審理室に取材した。

財務省が「国有財産の売払等結果の公表について」出している通知では、「契約後原則として1ヶ月以内に財務局等のウェブサイトにおいて公表する」とされている。「行政の透明性及び公正性の確保を図る」目的だ。

取材に応じた担当者はこう説明する。

「契約金額などは、法人が有する企業情報になります。情報公開法5条2項イに該当する『不開示情報』でもあり、公開には同意が必要です。本件については、相手方に『公表しないでほしい』と要請を受けたため、非公表にしています」

しかし、先ほどの通知を見ても「合意がなければ非公表」とのルールは明文化されていない。

「たしかに、相手が非公表を望んだ場合のルールはありません。一般論として契約金額は出すものではないという考え方があることに加え、相手方に公表しないでほしいと言われたために非公表にしました」

5. 随意契約で売却された国有地を過去3年間で見ると、2013年に北海道でも同様に「非公表」だったものがあるという。

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北海道財務局の資料を見ると、たしかに2013年7月、札幌市の宅地が公益法人に売却されているが、契約金額や用途などは非公開になっている。

担当者は、法人名などが「公表できない」としたうえで、BuzzFeed Newsの取材にこう語る。

「2012年11月21日に通達が一部改正して、12月以降から『原則公開』が適用されるようになりました。それまでは、公表にあたっては相手方からの同意が必要という取り扱いだったため、この場合は非公表にしています」

6. では、8億円についてはどうか。そもそも「埋設物の処理」にそんな大金がかかるのだろうか。

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財務省の担当者はいう。

「2010年に所有者である大阪航空局が調査したところ、表層部分に家庭ごみ(ビニール片、陶片、ガラス)や木材片が埋まっていることがわかりました。その後、建物を建てる際の基礎工事に入ったところ、さらに大量のごみが出てきたそうです」

この土地は伊丹空港のすぐ近くにある。昔は民家などが建っていた土地で、騒音対策の一環として、大阪航空局が買収したものだ。もともと虫食い状にあった画地を豊中市が区画整理し、2005年にいまの形になったそうだ。

埋まっていたごみは、産業廃棄物のように危険性が高いものではないという。

7. 誰が処理・撤去費用を「8億円」と見積もったのか。「大阪航空局が国交省の積算基準に従って算定をしています」

BuzzFeed Newsは、大阪航空局に経緯を取材を申し込んだが、「補償課の担当者が2日ほど不在のため、15日以降に別途連絡させていただきたい」との返答があった。

また、森友学園側もBuzzFeed Newsの取材依頼に「折り返し連絡をする」としているが、2月13日現在、担当者と連絡は取れていない。

8. 財務省の担当者は「政権などの関与は一切ない」と強調した。

そもそも、政権幹部の関係者がかかわっている法人だとは「把握していなかった」という。

「適正な価格で処分をしています。財政法の規律ではそうしないといけないとなっている。行政マンですから、当然それに従わざるを得ません」

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