VR制作ソフトウェア開発のDVERSE(ディヴァース)、CADデータをもとに空間を再現・疑似体験できるVRブラウザ「SYMMETRY」α版をリリース
VR(バーチャルリアリティ)制作ソフトウェアを開発するスタートアップ DVERSE(ディヴァース)は14日、建築・土木分野向けの VR ブラウザ「SYMMETRY(シンメトリ)」のα版を公開した。SYMMETRY はゲーム配信プラットフォームの STEAM から無料でダウンロードでき、 Unity プラットフォームで開発されており、Oculus Rift や HTC Vive などで利用可能。将来的には、Android Daydream、Samsung Gear、Microsoft HoloLens などのプラットフォームにも対応させるという。
新しく生まれる VR のソリューションを言葉だけで伝えるのは難しいと思うのは毎度のことながら、それにしても SYMMETRY の実現しようとしている世界は素晴らしい。CAD データ(SketchUp ファイル)をインポートするだけで、ユーザはその空間に身をテレポートできる感覚を得られるのだから。CAD データをもとにパースを作成するしくみはこれまでにもあったし、設計事務所や建築士らはクライアントに説明するのに多用してきた。ただ、パースでは 3D を 2D で表現するのには限界があるし死角なども残る。SYMMETRY ではヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)を使い、オブジェクトの外観だけでなく、オブジェクトの中に擬似的に身を置いて、周囲を見渡すことが可能だ。
DVERSE は2014年10月の創業。2015年7月に BonAngels Venture Partners と Villing Venture Partners から(調達額非開示)、また、2016年6月には 500 Startups Japan、Colopl VR Fund、KLab Venture Partners、アドウェイズ(東証:2489)、ウィルグループ(東証:6089)、スローガン、および、エンジェル投資家の川田尚吾氏らから103.9万ドルを調達している。DVERSE の創業者で代表取締役の沼倉正吾氏によれば、同社は大手企業から業務トレーニング用の VR の企画開発を受託してきたが、昨年1月あたりから SYMMETRY の開発に特化しているのだという。
今日このプロダクトを出すのは、まさに世界へのバレンタインプレゼント。VR なので、特に日本語版、英語版といった区別はなく、SYMMETRY は世界中の人が言語障壁無しに使えるソリューションだ。
Adobe が Acrobat でとってきたのと同じ手法、つまり、まずはブラウザを無料を配って自由に使ってもらい、「業務で VR が使える」ということを啓蒙する。今年の第3四半期には、エディタ(オーサリングツール)を(有料で)リリースする計画だ。業務での VR は、これからの数年が本番になっていくと思っている。(沼倉氏)
沼倉氏によれば、VR のスタートアップが日本国内だけで資金調達したり、市場を求めたりするのはまだ限界があるようで、それらの問題を解決するために DVERSE は海外展開についても視野に入れている。年内には、アメリカの Silicon Beach LA(Santa Monica から Venice Beach 周辺)、ロンドンの Shoreditch(Tech City を構成する北部地域)にオフィスを開設したい考え。将来には、VR スタートアップの活躍がめざましい中国にも進出する計画を持っている。
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海外展開にもアグレッシブな姿勢を貫いており、また、このタイミングでのリリースだったことから、SXSW(サウスバイサウスウエスト)への出展の可能性があるのかと沼倉氏と尋ねたところ、今のところ、その予定はないとのことだが、4月くらいからは、日本内外のスタートアップ・イベントや VR に関するカンファレンスなどで広く披露していきたいとの展望を語ってくれた。
DVERSE が世界の建築や土木業界をどのように変えていくのか、今後の動向が期待される。