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知育ノート

赤ちゃん、幼児、子供の力を伸ばす知育、知育玩具、関わり方やそれらに関する知識を紹介しています。

社会的ジレンマとは?具体例は囚人のジレンマ?対策・解決策は?

心理学用語 心理学用語-社会的ジレンマ

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社会的ジレンマという言葉を知っていますか?

私たちが日常生活を送っている社会では、個人にとっては合理的で利益の出る選択が、社会にとっては良くない結果を招くことや、その逆のことがたくさんあります。

そうした現象を示す言葉の一つが「社会的ジレンマ」です。

社会的ジレンマという言葉よりも、囚人のジレンマやコモンズの悲劇など社会的ジレンマに関する実験や理論の方が有名になっているので、そちらを知っている人も多いかもしれません。

社会的ジレンマは、個人が集団の中で生活する中で避けて通れないものです。

この記事では、社会的ジレンマの概要と具体例(囚人のジレンマ、コモンズの悲劇)、対策と解決策について紹介します。

社会的ジレンマとは

社会的ジレンマとは、個人の利益を最大化する(個人にとっての合理的な)選択と、社会や集団の利益を最大化する(社会や集団にとっての合理的な)選択が不一致もしくは衝突する場合に生じるジレンマ(葛藤)のことです。

社会生活においては、ある社会や集団に所属する全員が協力することで、全員が一定の利益を得ることができる仕組みが整っています。

例えば、法律(刑法、民法、道路交通法など)、社則、校則などのルールを全員が守ることで、一定の安全安心な生活を送ることができます。

しかし、通常、個人にとっては、自分だけの利益を追求した方が、社会内(集団内)の全員で協力するよりも大きな利益を得られることが多いものです。

例えば、人の物を盗めばタダで欲しい物が手に入りますし、無賃乗車をすればタダで目的地まで行くことができるので、個人にとっては合理的な選択だと言えます。

では、社会内(集団内)の全員が協力せず、個人の利益を追求するとどうなるでしょうか。

全員が協力した場合よりも良くない結果が、全員に降りかかることになります。

例えば、あらゆる人が物を盗むようになれば、貨幣経済が成立しなくなりますし、全員が他人に対して疑心暗鬼になり、互いに監視しあう殺伐とした社会になります。

まとめると、次のようになります。

  • 自分だけの利益を追求して得られる利益>社会内の全員が協力して得られる利益>社会内の全員が自分だけの利益を追求して得られる悪い結果

 

つまり、「本音では、自分だけの利益を追求したい。でも、全員が自分だけの利益を追求した場合の悪い結果を考えると、協力した方が良いかもしれない。」というジレンマに陥るのです。

社会的ジレンマの具体例(囚人のジレンマ、コモンズの悲劇)

社会的ジレンマの具体例としては、囚人のジレンマとコモンズの悲劇という実験が有名です。

社会的ジレンマの具体例1:囚人のジレンマ

囚人のジレンマとは、他人の選択によって自分の利益に違いが生じる状況下で、2つの選択肢を与えられた場合に生じるジレンマです。

囚人のジレンマは、個人にとって最適な選択が、全体としてみると最適な選択にならないことを示す、典型的な例です。

この実験では、他人と協力した方が、協力しないよりも良い結果が得られることが明白な場合でも、協力しない人が利益を得ることが分かる状況下では、他人と協力しなくなるという結果が得られています。

囚人のジレンマ実験の内容は、次のとおりです。

  1. ある犯罪を起こした犯人2人が警察に逮捕される
  2. 犯人2人は、別々に取り調べを受けた後、検察官に送致される
  3. 検察官が、犯人(囚人)2人対して、次の3つの内容を伝える
  • 2人とも黙秘した場合は、2人とも懲役2年にする
  • 2人のうち1人だけが自白した場合は、自白した1人は釈放し、自白しなかった1人は懲役10年にする
  • 2人とも自白した場合は、2人とも懲役5年にする

客観的に見ると、犯人2人にとっては、互いに黙秘して懲役2年となる方が、2人とも自白して懲役5年となるより良いということが分かります。

しかし、囚人のジレンマ実験では、犯人2人は互いに自分の利益のみを追求し、2人とも自白して懲役5年を受ける結果になっています。

犯人の思考回路は、次のとおりです。

  • 相手が黙秘した場合、自分も黙秘すると2人とも懲役2年になるが、自白すれば釈放される
  • 相手が自白した場合、黙秘すると自分だけが懲役10年となるが、自白すれば2人とも懲役5年で済む

つまり、犯人2人はいずれも、「相手が黙秘しても自白しても、自分にとっては自白した方が利益がある。」と考えて自白したのであり、そこに相手と協力するという発想はありませんでした。

社会的ジレンマの具体例2:コモンズ(共有地)の悲劇

コモンズの悲劇とは、だれでも自由に利用できる共有資源が、個人が利益を追求して際限なく利用することで枯渇する現象です。

英語では「Tragedy of the Commons」と表記され、共有地の悲劇と訳されることもあります。

コモンズの悲劇の具体例としてよく用いられるのが、共有の牧草地です。

  1. 共有の牧草地に、畜産農家が牛を放牧する
  2. 畜産農家は自分の利益を追求し、共有の牧草地にできるだけ多くの牛を放牧する
  3. 牛が牧草を食べ尽くしてしまい、畜産農家全体が打撃を受ける

自分の所有地に牛を放牧する場合は、牛が牧草を食べ尽くさないよう放牧する牛の数を調整します。

しかし、共有の牧草地の場合、自分が放牧する牛を増やさないと、他の畜産農家がたくさん牛を放牧し、結果として自分の取り分が減ってしまいます。

そのため、全ての畜産農家が我先にと牛をたくさん放牧し、コモンズの悲劇を招くのです。

社会的ジレンマの具体例3:いじめ

日常生活の中でも、いたるところで社会的ジレンマは起きています。

例えば、学校生活の中で起こる社会的ジレンマの具体例としては、いじめを挙げることができます。

いじめとは、「児童や生徒に対して、同じ学校の他の児童・生徒が行う、心理的または物理的な影響を与える行為で、行為を受けた児童・生徒が心身の苦痛を感じているもの(いじめ防止対策推進法)」です。

クラスの中で特定の生徒がいじめ加害者といじめ被害者になっている場合、その他の生徒が介入していじめを止めることが、いじめ解消というクラス全体としての利益をもたらします。

しかし、多くの生徒が「口を出したら、次は自分がいじめられるかもしれない。」などと考えていじめを傍観し続けるというのが、日本の学校における現状です。

つまり、「いじめを受けない」という個人にとっての利益を追求して、いじめを止めずに傍観し、結果、クラス全体の雰囲気が悪くなったり、いじめの被害が拡大したりすることになるのです。

社会的ジレンマの対策・解決策

社会的ジレンマの問題は、社会や集団に所属する人が多くなるほど、解決が難しい深刻な問題として降りかかってきます。

社会的ジレンマの対策・解決策として考えられるのは、第1に社会や集団に所属する人が、協力して全体として良い選択ができるよう、話し合うことです。

社会や集団が大きい場合は、班単位、クラス単位、学年単位というようにまずは細かい単位で話し合い、それを統合していくことになります。

具体例で挙げたいじめの場合を考えると、第1歩は、クラス内にいじめが存在することを、誰かが公にすることです。

クラス内で話題に出したり、先生や家族に相談したりして、問題提起することです。

その上で、どうすればいじめ問題を解決できるのかについて、生徒、先生、保護者、学校が協力して話し合いを進め、個人としての利益も考えながら、全体として良い解決方法を模索していくことになります。

まとめ

社会的ジレンマについて紹介しました。

社会的ジレンマは、いじめをはじめ教育現場でもいたるところで見られる現象ですし、友達、家族、塾、習いごとなど、より小さな社会においても起こることがあります。

日常生活を送る中で、「あ、今、社会的ジレンマに陥っているな。」と意識することはそれほど多くないと思いますが、知識として持っておくことで、学校や家庭の問題を解決する糸口にできることがあります。