サマソニ2017も来る!SUM41に想いを馳せて
キレのある数字ってのがある。
フットボールでは10番とか14番とか18番とか。
野球では1番とかバスケでは23番とか。
それだけで意味を持つ、カッコいい番号。
外国はふとした数字の使い方がかっこいい。
ニューヨークとかロンドンの何番街とか、フィラデルフィア76sersとかシャルケ04とか字面がいい。
バンドでもそうで、最近だとthe1975とか、Blink182とか+44とか。
なにかと絶妙なバランスでカッコいい数字を使ってくる。かと思えば理由が意外と大した事なくて面白かったりもする。
SUM41もそうなのだ。
高校最後の夏休み、ワープトツアーのNOFXのステージを見に行った少年たちが、俺たちもやろうぜ!とバンドを結成するというストーリー。
それが夏休みの41日目だったから、サマー41でSUM41になった。
青春映画みたいな始まりをしたバンドは、大きな成功とそれを超える特大の挫折を乗り越えて、今シーンに復活してきた。
PUNKSPRING2016に続いてSUMMERSONIC2017の出演も発表されてファンとしては嬉しい流れ。
ほぼリアルタイムで歩みをともにしてきたバンドの一つ。
そんなSUM41に想いを馳せるレビュー。
普通じゃないバンド
意外とパンク処のカナダ出身のサム41は、1996年に上で書いた様にワープトツアーを見に行って結成する。
ディセンデンツからバッドレリジョン、ノーエフはもちろん聞いていて、その後のグリーンデイやオフスプのデビューを思春期に目の当たりにした世代の彼等は、新世代としてオルタナティブにパンクを鳴らし出した。
ニューファウンドグローリー、シンプルプラン、グッドシャーロットなんかがチャートの上位まで食い込み、メインストリームに躍り出た。
その中でサムは一躍セールスを伸ばし、世界中で一歩抜きん出た存在でありながら、もとからどこか外れたグループにいた様な印象も強かった。
怒髪天の金髪に、柔和な表情の中でもキレそうな眼。
vo.デリックの見た目の雰囲気は、どことなくシドヴィシャスの様だった。
ふざけた子供の様に振舞っていても、冷めた冷徹な目を時折見せて、違和感を孕む危険な魅力を醸し出していた。
思えばベースのジェイソンも長身でやたらオシャレだし、ギターのデイヴはムキムキの黒人でメタル臭ムンムン、ドラムは本当に危険な香りがするやばいやつ。
今思えば、そういうパンク色は元来強い普通じゃないバンド感は抜きんでていただったのだ。
パンクキッズの心を掴む危険なバンドサウンド
2000年のEP'Harf Hour of Power'、2001年の1stアルバム'All Killer No Filler'のスピーディーなポップパンクをまくし立てる様にぶつけてくる、解放感この上ない爽快さに、パンクキッズ達は一瞬で虜になったわけだが、裏に擦れたささくれ具合が感じられて、その危うさみたいなモノに引っ張られている感じもあった。
ガムでも噛みながら歌ってる様なデリックの不遜でアグレッシブなボーカルは、まさしくパンクボーカルのそれで、多彩な陽のパワーを感じるポップネスもあれど、その奥から押し寄せる攻撃成分が皮膚をチリチリと焦がすように煽ってくる。
パンク次世代の王子の様であり、全てを壊す革命の旗手の様でもあった。
その姿はバンドのシンボルでシーンのシンボルにもなった。
デリックが後に語ったように、ギターのデイヴのバンドサウンドにおけるウェイトは、かなり大きかった様だ。
そのメタリックなギターを最大限に活かす方向に舵を切り、バンドの音を変貌させながらポップパンクの枠に囚われない、更に大きなケミストリーを起こす事になる。
気を遣って曲を書くデリックにも大きなフラストレーションがあった反面、それが絶対的な曲の数々とバンドサウンドの爆発を産んだとも言える。
2002年の2nd'Does This Look Infected?'は彼等の印象をガラリと変えて尚、更に多くのコアなファンも獲得した攻撃的なアルバムとなった。最もSUM41を世に知らしめたアルバム。
タフでメタリックなサウンドの超重力の中でも、メロディックなセンスを保ちつつ鋭く軽やかに歌い上げる。
陰陽が逆転した様に攻撃的な面が前面に出ても、根本にあるメロディーの強さは変わらず、そのバランスとサウンドセンスであまりにも自然にSUM41としてのネクストレベルにアップデートを果たした。
いつも巨大な成果を残したバンドケミストリーの裏には、確実と言っていいほどその反動が残る。
成功のからくる多忙さだったり、葛藤だったり、バンドらしい不協和音だったり。
彼等もよりメタリックな音に2004年3rdの'chuck'後、硬質なサウンドのエネルギー源となっていたギターのデイヴの脱退という形で、それは表面化した。
ひとつの音源を失った彼等は、また違うケミストリーを探す事になる。
同じカナダのポップパンクバンド・GOBのフロントマンをリードギターに加え、2007年4th'Underclass Hero'はデリックのポップパンクセンスが全面に出た、爽やかでスピーディーなパンクサウンドに重きを置きつつ、哀しみを歌い上げる様な艶っぽいロックバラードも披露しシンガーとしての幅も見せた。
2nd、3rdの暴力的なまでのギターは鳴りをひそめた分、コアなファンからは批判を浴び、当時の妻アブリル・ラヴィーンが後任のギターに入るだの突拍子もない噂を立てられる羽目になったが、むしろ1stの延長線をまっすぐ捉え、幅を広げたような音楽性は評価されるべきだと思う。
少なくとも僕はそう感じた。
この目で見たSUM41 彼らはいなくなった
ここからバンドはさらに活動のペースを落とす事になる。
世界を回るツアーをが多く、新作と言うよりは、過去をなぞりながら払しょくするようなライブに重きを置き続ける。
サマソニ2010に来日中、大阪のバーで喧嘩したり、アブリル・ラヴィーンとの破局があったりと、音楽以外のゴシップが日本にも届いていた。
2011年、前作から4年後に5th'Screaming Bloody Murder'を発表する。
僕がSUM41を始めてライブで目撃したのもこの辺りからだ。
2009年、パンクスプリングで憧れのノーエフの後のオオトリを務め、さんざんノーエフのファットマイクに茶化された後でも、観客を煽りまくり常に温度の高い圧巻のパフォーマンスだった。
2011年の単独公演でも新曲を含め更に濃いライブを観れた。
力強く切れ味のいい音で、絶対的なパンクソングを緩急を強弱を使い分けてくるセットリストに、巧さみたいなものも感じたし、ステージ上で僕らを煽るデリックは、その日だけは僕の中でビリージョーを超えたパンクスターの姿だった。
久々の充足感に満ちたライブを終えて、SUM41という存在を解ったつもりでいた。
2012年のパンクスプリングまでは。
2012年も続けて来日したSUM41のステージはめちゃくちゃだった。
ステージに出てきた瞬間から泥酔してるとわかるデリック。
演奏もボーカルもめちゃくちゃで、オーディエンスに歌わせようとしたら急にキレたような表情を見せて、その後はピエロみたいなニンマリの笑顔を見せる。
ジャックダニエルを会場で進めていたお姉さんをステージに上げて、口移しで飲ませる。
ベースのジェイソンが演奏を促すように弾いても、怒って制止しニヤニヤと観客を見つめるだけ。
他のメンバーも匙を投げながらステージに立っているようだった。
40分くらいのステージでまともに歌ったのは3曲くらいだと思う。
もうオーディエンスみんな、ハ、ハハッ。。。みたいな刃牙みたいなリアクションだった。多分このステージはある意味忘れない。
パンクロッカーっていうのは、破天荒でギリギリでめちゃくちゃでって聞いていたけど、それを目の前で見たことはあまりなかった。
ロックでかっこいい姿ってのは数々ライブで見てきたが、これ大丈夫か?ダメなんじゃないのと心配したくなるようなハチャメチャな感じはなかったので、昔の幻想なのかなぐらい思っていた。
デリックはまさにそれだった。
その後デリックはアルコール中毒で倒れた。あと一滴でも飲んでたら死んでたっていう様な状態だったようだ。
カムバックした普通じゃないパンクロッカー
文字通り死にかけたパンクロッカー、デリック・ウェンブリー。
僕の中にリアルなパンクを刻み付けた。
それでも落ちるところまで落ちた人間味あふれる下降線を描いた後、アルコール以外にも体中の毒素を抜いたデリックは、恥も外聞もかなぐり捨てて、立ち上がる事を選んだ。
死の恐怖と戦いながら、誰も死を望んでいないフォロワー達(イギーポップやアブリルも)に支えられながら必死に曲を書いて、ステージの上に帰ってきた。
2016年のパンクスプリング、その姿を目に焼き付けた。
ちょっと痩せたように見えて、逆立った金髪も若干白髪に見える様なドラッギーな姿だったが、カッコ悪さを跳ねのけて戻って来た笑顔は何処かはにかんでいるようにも見えた。
ギターのデイヴもバンドに復帰し万全の態勢での復活劇。
ステージに客を上げまくり、まくし立てる様なライブ。
デイヴのギターの滑らかな重みにビリビリしながら、爽快な声でパンクロックが僕らに飛んでくる。
暴風の様で心地いいパンクは、まさに1stや2ndで感じたそれだった。
それでもデイヴのギターアレンジが所々炸裂して、パンキッシュにメタリックを火に油を注いだような灼熱の迫力は、持てる力を結集したサウンド感が強い、前に進んで凄みを増した姿だった。
倒れようが、恥ようが、タフに今最高な音を届けるマキシマムなステージ。
後ろの時間が迫る事に苛立ち、時間ギリギリに'Fat Lip'をバシッと終えて、'Bye!!'とだけ言ってギターをステージ横に放り投げながら颯爽と去る姿も、キマっていたのだ。
おかえりデリック。
41は彼らのもの
結成を決めた夏休みの日から何日経ったんだろう。
ノーエフを観たばっかりに、パンクを始めて、喧嘩したり、嫁と別れたり、死にかけた。
それでも2016年、6th'13 Voices'でGoddamn I'm Dead Againと真に笑い飛ばして歌うほどタフな姿は、フラフラでもまっすぐ歩いてきたデリックの姿だ。
凄みと親しみが同居するような不思議なリスペクト感。
僕は一生41って数字を聞いたら彼らを思い出すだろし、合言葉に近い。
41と言えば?SUM41だ!
そういう人がもっとこの世の中に増えていいと思うのだ。
ソングレビューは、後篇で!