昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算で前期比1・0%増と4四半期連続のプラス成長だった。政府は「緩やかな回復が続いた」とみているが、内需の柱である消費が減り、米国向けなど輸出で補う外需頼みは変わらなかった。
アベノミクスは消費など民間主導の持続的成長を目指してきたはずだ。輸出依存のままでは経済の好循環は見えてこない。対日貿易赤字を問題視するトランプ米大統領が理不尽な批判を強める恐れもある。外需頼みは危うく、脱却を急ぐべきだ。
消費不振の直接的な要因は天候不順による野菜高騰だが、背景には家計の根強い節約志向がある。
安倍政権は金融緩和に伴う円安で輸出企業の収益を高め、雇用や賃金を増やして消費を活性化させる好循環実現を掲げてきた。しかし、円安は消費回復に結びついていない。
安倍晋三首相は雇用改善を強調する。だが、主に増えたのは低賃金で処遇が不安定な非正規雇用だ。
昨年の実質賃金は5年ぶりにプラスに転じた。しかし、デフレから抜け出せず、物価が下がった分だけ実質賃金が押し上げられた。消費者にとって先行き不安が解消されたわけではない。
消費の弱さを反映して、昨年1年間の成長率も実質1・0%、名目1・3%にとどまった。安倍政権は、実質2%、名目3%の成長を目標にしているが、遠く及ばない。
一方、輸出で好調だったのは、景気拡大が続く米国向けの自動車などだ。最近の円安が後押しし、輸出はさらに増えるとの見方が多い。
先週末の日米首脳会談は日米同盟と経済関係強化を共同声明でうたった。トランプ氏は日本の自動車貿易や為替政策への批判を封印した。
今後の2国間協議でも、自動車貿易が不公正といった筋の通らない批判に反論することは必要だ。しかし、対米輸出に頼ったままだと、通商政策や為替政策でトランプ氏の強引な介入を招く恐れがある。
首相は今国会の施政方針演説で「成長と分配の好循環を創り上げる」と表明した。政権発足から4年以上も経過し、かけ声だけでなく、結果が問われている。
内需主導の息の長い成長に導くには、効果が一時的な金融緩和や財政出動に依存せず、経済の足腰を強くする構造改革の実行が不可欠だ。
具体的には、働き方改革で雇用や賃金の格差是正を急ぎ、消費底上げを図る必要がある。少子化対策を加速し、人口減を食い止め、消費や投資を拡大する環境整備も大事だ。
人工知能など第4次産業革命と呼ばれる成長分野に資金を呼び込む規制緩和にも取り組むべきだ。