ライフハッカー編集部 - 仕事術,働き方,編集長インタビュー,連載 10:00 PM
「全社員がリモートワークで幸せに働く会社」が考えたことすべて
ソフトウェア開発を独特の形で行う会社「ソニックガーデン」では、多くの企業が導入を検討するはるか以前、2011年頃から全社的にリモートワークを実践してきました。離職率はほとんどゼロで、社員の満足度の高さがうかがえます。
今回は同社の代表取締役である倉貫義人さんに、ライフハッカー[日本版]編集長の米田智彦がインタビュー。蓄積されたリモートワークのノウハウと、どのようなマインドのもとに先進的な働き方を実現できたのかをうかがいました。
倉貫義人(くらぬき・よしひと)
1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープン ソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTIS株式会社からのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンの創業を行う。
社員1人のためにリモートワークは始まった
米田:リモートワークはたまたま始められたのだとうかがっています。導入するきっかけを教えていただけますか?
倉貫:初期メンバーの中にフリーランスながら会社の経営に深く関わっていた人がいたんです。フリーランスとはいえ経営会議にも出席するなど、社員と変わらない立場でした。
彼は人生において何かに縛られたくないという人生観の持ち主で、あるとき「海外に行って働きたい」と言い出したのがきっかけです。ほかのメンバーもいいじゃないかと応援ムードで、まずは在宅勤務から始めることになりました。
2週間ほど彼だけ家で仕事をしてみたら、そこそこ上手くいったんです。それで次は3カ月、バンクーバーに行って働いてみることになりました。その頃、ちょうど東日本大震災がありまして...。
米田:震災があった当時は毎日何が起こるか分からない状況が続いて、在宅で家族の近くから働くことを多くの人が希望するようになるきっかけの1つになりましたよね。
倉貫:家族の近くで仕事ができれば、何かあっても安心できますしね。
メンバーの1人が在宅勤務や海外からのリモートワークを実践したことで、オフィスから離れたところにいたとしてもちゃんと仕事をするし、できるんだということがわかりました。それでしばらく出社せずに仕事をしてみたりしました。
リモートワークでも「雑談」が必要である
ソニックガーデン社が開発したデジタルオフィスアプリ「リモティ」。現在、同社内でも勤怠管理やコミュニケーションのために利用している。
米田:最初はどんな風に社内のやりとりをしていたんですか?
倉貫:最初はSkypeでテレビ会議やチャット、常時つなぎっぱなしの音声チャットなどでコミュニケーションをとっていました。ところが、採用をするなどして在宅勤務者が増えると、音声チャットをつなぎっぱなしにして常時コミュニケーションをとるという手法は破綻してしまいました。
米田:ライフハッカー[日本版]でもリモートワークを実験的に導入して、リモートワークのやり方をいろいろと試しているのですが、通話をつなぎっぱなしにするのはちょっと無理がありますよね。
倉貫:音声チャットに複数人が参加しているときに、誰かが誰かに話しかけたとします。すると会話が参加者全員に聞こえてしまいます。オフィスなら、その会話に関係ない人はうるさいなら距離を取ればいいだけなのですが、音声チャットだと耳元で会話が聞こえてしまうので自分の仕事に集中できなくなってしまうんですよね。それで音声チャットをつなぎっぱなしにするのは厳しいなと。
かといって常時コミュニケーションが取れる環境をなくしてしまうと、一緒に働いている感が出なくなります。
何より、雑談がなくなってしまう。普通、ミーティングなどの後には「これからお昼に~を食べに行くんだ」とか「今日のミーティングは良かったね」とか、雑談をするじゃないですか。テレビ会議だと仕事の話はできるんですが、こういう雑談は発生しないんです。
米田:会話にはフォーマルとインフォーマルがあって、インフォーマルな会話もコミュニケーションにおいて重要ですよね。
倉貫:オンラインの場合、インフォーマルな会話ってだいたい通話を切ったあとにやるんですよね。だから先に通話を切ってしまった人は「今日は良かったね」みたいな雑談を聞くことができない。そういう雑談の機会がなくなっちゃうなぁと。オフィスにいると放っておいてもその辺で雑談をするものですが、離れているとインフォーマルな会話をしにくいので、どうしようかと。
それでリモートで十分なコミュニケーションをとれるツールを探したんですが、「仕事のためのツール」は山ほどあるのですが、どれもインフォーマルな会話には向いていませんでした。『Slack』や『チャットワーク』も検討したのですが、どれも仕事のためにデザインされているので通知機能がしっかりしていて「流されたチャットが全部ちゃんと読めるように」作られていました。
ところが、インフォーマルな会話って全部通知がくるとうざいんですよね(笑)。それもあって、10人くらいでチャットをしていると、しょうもないことを書けなくなってしまう。「お昼に行ってきます」のようなことを書こうとしても、全員に通知が行ってしまうので「書かなくていいかな...」という風になってしまう。
それで「通知のないチャットツール」を作ればみんな雑談できるんじゃないかと思い、「リモティ」というツールを作ってしまいました。
仕事用と雑談用でチャットルームは分けない
米田:今、チャットルームを仕事用と雑談用で分けていますか?
倉貫:物理的なオフィスと同じにしようというコンセプトで、そこは敢えて一緒にしています。オフィスでは会議室でも雑談するし、喫煙室でもするじゃないですか。でも、チャットを仕事用・雑談用で分けてしまうと、雑談する人はするし、しない人はしないという感じになってしまう。
米田:仕事の案件の話に今日食べたカレーの話が割り込んだりすると、話が混線しませんか?
倉貫:チャットに関しては混線するようにしています。その一方でチャットとは別に掲示板を用意して使い分けています。
仕事の話だろうが雑談だろうが、流れてもいい内容はチャットにどんどん書いていくようにして、瞬発的な会話はその場で済ませてしまいます。
これに対して、主に業務上、後で連絡や返事が必要なときは掲示板に書くようにしています。メールの代わりになるものですね。
中途採用者は「リモート徒弟制度」で伸ばせる
米田:大きな疑問として、画面越しに社員をどう教育して伸ばしているのでしょうか?
倉貫:会社に入ってくる人には、中途と新卒がいます。
まず、中途に関してはある程度スキルもあるので、採用の時点でふるいにかけます。採用プロセスの中にE-ラーニングを導入し、自分で社員として働く上で必要なスキルを学んでもらっています。
とはいえ、そのまま入っても社内のトッププレイヤーとは一緒に働けないので、徒弟制度のように先輩社員がついて、良いプログラムの書き方やお客さんとのやりとりの仕方を教えていきます。
中途採用者に関しては、こういった教育が同じオフィスにいないとできないかというとそうではなくて、テレビ会議をしながら一緒に仕事をしていれば伸ばしていけます。
新卒は誰が育てるべきか?
ソニックガーデンでは、雇用形態も都合に合わせて社員、フリーランスなどから選ぶことができる。どのような雇用形態でもボーナスや労災の支給などの待遇は同じである。副業もOK。とにかく社員の自由度が高いのが同社の特徴だ。離職率はほとんどゼロに近く、メンバーの満足度は非常に高い模様。
米田:新卒社員はどうやって指導をしているんでしょうか?
倉貫:新卒社員はスキルがなくポテンシャルで採用するので、仕事に必要なスキルから会社のカルチャー、一般的な社会人として必要なことを教える必要があります。いきなりリモートで働くのは難しいので、弊社のワークプレイスに出社してもらって、経営メンバーが師匠となって対面で教育するようにしています。
今、来ているインターンは私が直接、社会人1年目のメンバーは役員の1人が担当し、2年目のメンバーは副社長が面倒を見ています。
普通の会社では、1つ上のポジションの社員が1つ下の社員を教育していくと思うのですが、ソニックガーデンではそうはしていません。というのも、うちで働いているのはずっとプレイヤーとして働きたい人たち、ずっとプログラミングをしていたい人たちなので、教育なんてしている場合じゃないんです。
米田:中間管理職を省いているということですよね。
倉貫:そうです。ベテランになるほど教育や管理をしなくていいようにしています。腕が立てば立つほど自由になり、プログラミングに集中できます。
では、教育や管理は誰の仕事になるのか? そこで浮かび上がってくるのが経営者です。経営者とは会社のために投資をするのが仕事です。そして今、うちの会社にとっての投資とは何か、それは若い人に時間をかけて教育することだなと。
こんな風に、経営者による教育と徒弟制度の二本柱でやっています。
「同じオフィスで働く」は「良いチーム」の条件ではない
聞き手を務めたのは、ライフハッカー[日本版]編集長 米田智彦(左)
米田:ソニックガーデンではリモートワークを「リモートチーム」と呼んでいますよね。チームには一体感のようなものが必要だと思いますが、それをリモートでどのように作り上げていますか?
倉貫:僕らはバラバラになって働いているからチームではないと思われがちなのですが、チームワークは大事だと思っています。ですが、物理的に同じ場所にいないとチームとしての一体感が生まれないかというとそんなことはありません。
米田:働き方に関する通念が揺らいでいる今、ソニックガーデンのそうした考え方は突出しているなぁと思います。私は、一緒にいないとチームワークができないという固定観念をどうひっくり返すかが、これからリモートワークを考えていく上で大事なのではないかと思っています。
倉貫:SNSで近況を見せ合ったり、いいねし合っていたら、友だちになれますよね? 離れているからといって、友情や信頼関係が育めないわけではありません。
勘違いしている人が多いと思っているのですが、オフィスで一緒に働いていても良いコミュニケーションが取れていないということはあるでしょう。会話もできていないし、頼り合いも助け合いもなく、雑談もない。もちろん、笑顔も失われている。
それを考えたときに、「一体感を持ったチーム」のカギはオフィスで一緒に働くことではないなと気づいたんです。
最近のGoogleの調査によると、助け合い・頼り合いがあり、一体感を持ったチームに大切なのは「心理的安全」が確保されているかどうかなのだそうです。心理的安全とは、「この人には自分の考えていることを話しても大丈夫」とか「この人になら頼っても大丈夫」と思える安心感のことです。
これが正しいとすると、離れた場所で働いていても心理的安全さえ確保されていればチームとして成立しますよね。働く人同士の物理的な距離が近いか遠いかという軸と、心理的安全が高いか低いかという軸が同一視されてはいないでしょうか?
そしてテクノロジーを活用すれば心理的安全を確保できるのではないかと思うのです。
たとえば、僕たちが社内のやりとりに使っているツールでは、各社員のアイコンはリアルタイム更新される写真になっています。PCのカメラで何分かおきに写真を撮ってそれを使います。
米田:みんな身支度はきちんとしないといけないと。
倉貫:そうです。家にいるなら、自分の背後はきれいにしておかないといけないし、身だしなみも整えておかないといけません。でもそれは出勤するならみんな当たり前のようにやっていることですよね。
リアルタイムの写真を表示することで、まるでオフィスのデスクで顔を上げたときに、向かいの席の人の顔がちらっと見えるのと同じような、心理的な近さを醸成することができます。
こういった工夫によって、高い心理的安全を保てるのではないかと思っています。
経営者が合理的でなければ社員は動かない
米田:ソニックガーデンの働き方や制度も、倉貫さんの経営者としての考え方も、徹頭徹尾、合理的だと感じます。そんな会社運営を意識したのはいつからなんですか?
倉貫:最初からずっとです。ソニックガーデンはもともと社内ベンチャーで、それを買い取って独立させました。僕はそのときからずっと経営をしているのですが、その前はエンジニアだったので、始めたときは経営のことなんてまるでわからなかった。経験もないし、周りに経営者仲間がいるわけでもなく、誰にも頼れなかったので、自分で考えるしかなかったのですが、自分で考えるとプログラマーとしての癖が出てしまった。
会社のやることなすこと、その全部が合理的じゃないとやりたくなかった。
米田:以前、ご自身が良しとするやり方を「チート」という言葉で表現されていましたよね。『スーパーマリオ』を1面2面と順番にクリアするのではなく、2面からいきなり最終面に飛んでしまうようなやり方、「ズルをしてでもうまくやる」とでも言いましょうか。ハックという言葉と似ていて、まさにプログラマー的な発想だと思ったのですが、倉貫さんの根っこにはそういう考え方があるということですよね。
倉貫:そうなんですよ。それに、社員全員がプログラマーなので会社の施策も合理的じゃないと社員の誰もやってくれないんです。とはいえ逆に、合理的でさえあれば、いちいち説得なんかしなくてもみんなすっとやってくれます。
「会社の成長」は本当に社員を幸せにするのか?
米田:ソニックガーデンには「経営的な数字目標がない」とのことですが、なくてやっていけるものですか?
倉貫:やっていけますよ。経営目標なんてなくてもいいんじゃないですかね(笑)。食っていく分は稼がないとダメですが、給料分稼いでくれれば安泰なので、会社としてはそれ以上がんばれとは言いません。それ以上稼げたら、ボーナスで山分けするだけです。
...そもそも会社が成長しなければいけない理由ってなんでしょう?
米田:株主や投資家に言われるとか、社員に子どもが生まれてお金が入り用になる、といったことでしょうね。
倉貫:まずソニックガーデンには株主も投資家もいません。
米田:なるほど、経営的に成長曲線を描く必要がないと。
倉貫:昔は若いうちは薄給で働き、年功序列で50代から急カーブを描いて給与が伸びていきましたが、そういった給与観は現代では幻想だと思うんです。
薄給でみんなが働いていたのは「将来給料が上がる」という幻がそうさせていたのでしょうが、今は給与がそんな上がり方をするなんてありえないというのはみんなわかっていると思うんです。だから、給与が上がるという幻で社員を支配する必要はもうないのではないでしょうか?
僕らの会社では、社員を「一人前」と「修行中」に分けていて、修行中のうちは給料は安いのですが、一人前になったらぐっと上がります。ちょっとずつ上げるようなことはしません。ただ、それ以上上がることはないんですが(笑)。もっと欲しいならそれこそ副業をしてくださいという感じですね。
米田:無理しないというのもソニックガーデンのテーマかなと思います。よく見られる、右肩上がりの成長を目指す経営計画を立て、社員に無理を強いるというような経営スタイルの真逆ですよね。
倉貫:会社を成長させたいという思いは、社長や創業者のエゴじゃないかなと。それに付き合ったとして、社員は幸せになれるんでしょうか?
僕は社員が幸せじゃないと意味がないと思っています。僕らは全員一生プログラミングの仕事をしたいと思っています。一山当ててIPOしたり、南の島で暮らしたりしたいわけではありません。一生という長い期間働き続けるためには、短期的に無理をしてもしょうがないですよね。
会社を「社長の持ち物」だと思っていないんです。便宜上、株主は僕ですが、社員がいるから会社がある。会社は社員のものだと思っているし、私のものじゃないからコントロールもしていません。会社のKPIは「会社が長く続くこと」なんです。
いい人がいたら「入ってきちゃう」んです。応募はたくさんあるので自然と大きくなっていくでしょう。大きくなったら案件は取ってくればいいので、無理せず自然と大きくなるようにしたほうがいいんじゃないかなと。子どもに「3年経ったら背は20cm伸びないとアカンぞ!」と言って、ご飯を大量に食べさせてもお腹を壊すだけだと思うんですよね。そんなことをしても子どもは不幸じゃないでしょうか。
米田:働くスタッフの幸福、賃金も含めたQOLが重要ということですね。
倉持:そうです、それが一番大切です。賃金はそこそこ出してはいますが、抜群に高いわけではありません。「お金より時間が大事」と考える社員がほとんどだから成立しています。
なぜ時間が大事かと言うと、エンジニアには自分が遊ぶ時間が大事だという人やライフステージによっては家族との時間が大事だという人もいます。「第二の人生が待っているんだ!」と考えて50代でそこそこのお金を手にしたとしても、働き過ぎた身体に残った余力でやっていけるほど、先は短くないんですよね。今の時代はみんな100歳まで生きるわけですから。
それより、今を楽しむことのほうが価値があるよね、と思っているんです。なので、働き過ぎないという方向性でやっています。
米田:ソニックガーデンが実践しているようなことって、すでに出回っているツールなどで実現できることだと思いますが、多くの企業では実践できていないように感じます。倉貫さんはどうしてだと思いますか?
倉貫:価値観やカルチャーの問題が大きいのではないでしょうか。
たとえば、社長が大金持ちになって外車を乗り回すという夢は諦めています。経営メンバー内では「来世で目指そう」ということになっています(笑)。どうして大金持ちになるのを諦めているかと言えば、自分たちの働き方や希望を踏まえて考えていくと上場する必要はどう考えてもないからです。諦めきれずに無理して上場を目指すと、そこで会社のあり方が歪になってしまいます。だから、うちはそこを諦めているんです。諦めたほうが筋が通るんですよね。
米田:サトリ世代的な考え方ですね(笑)。
倉貫:こんな風に割り切って諦められるのは「本当は何が幸せなのか?」を追求したからだと思いますけどね。
「問題解決するプロダクトを売る」のではなく「お客さんの問題を解消」したい
米田:倉貫さんは「問題解決ではなく、問題解消せよ」という考え方を示されていますよね。「問題を問題だと思っていること」がもう問題だと。
倉貫:お客さんからあれをしたい、これをしたいと思いつきで言われるのですが、僕らはよく「それは本当に必要ですか?」と返します。
プログラマーの価値はたくさんコードを書くことではなく、短いコードで価値を実現できることです。究極的には手を動かさずにお客さんの問題を解決できれば、それが最高のプログラマーなのではないかと。だから「本当に必要かどうか」を追求しているんです。
米田:それが利益になるいいお仕事だったとしても、要らないものは要らないと言ってしまうということですね。
倉貫:そうです。たとえば、スタートアップのお客さんから「集客するサイトがほしい」と言われたら、「まずはWordpressで作って、お客さんから問い合わせが増えてきたら本格的なサイトを作りましょう」と言ってしまいます。受託開発の会社なのに作らないんです(笑)。
お客さんには「お金がかからなくて良かったですね」と言い、社内では「わざわざ作ることにならなくて良かったね」と言い合う(笑)。お客さんは僕らのアドバイスを試してみて、本当に良いと思ったら僕らのところに戻ってきてくれます。次の機会には一緒に仕事ができるかもしれません。
米田:倉貫さんは「お客さんを財布としてみない」というポリシーをお持ちとのことですが、どのような意味なのでしょうか?
倉貫:僕らは全員プログラマー、職人集団です。良いものを作りたい。お客さんが成長するから僕らもお金をいただけるというようにしたいんです。
納品型のビジネスをするとどうしても「これ買いませんか?」と言ってしまいがちです。お客さんが困っているのを見つけたら、少し盛った営業資料を持っていってしまいます。作らないと儲からないからですね。お客さんにとって本当に必要なものではないかもしれないけれど、「サーバーを2台増やしましょうよ」なんて言ってしまうわけです。モノを作ったら作ったで、本当にそれが使われるかはわからないけれど、そこで去って行く。これってお客さんが不幸ですよね。
エンジニアにしても、納期があるからとガワだけ良いものを作らざるをえないなんてことになると心が痛みます。良いものを作りたいのに締め切りがあるから作れない。それは嫌だなと。
米田:単純に利益を上げることを目指していないんですね。
倉貫:そうなんです。僕らは「作らない提案」をよくするんですが、それが一番お客さんに喜んでもらえます。「普通、開発会社に『あれが欲しい』と言うと提案書を持ってくるけれど、ソニックガーデンさんはすぐに作ってくれないから気軽に相談できる」と言ってもらってます。
こんな風に「なるべく手を動かさない」「本当に必要でないなら作らない」という方向でお客さんともお仕事をさせていただいています。
倉貫さんによる会社紹介スライド「『管理』をなくせばうまくいく」。同社では自社のサービスを「納品のない受託開発」と呼んでいる。「顧問プログラマー」が月額定額で顧客のニーズに合った開発の指針をコンサルティングするとともに、開発も行うというサービスで、お客さんのニーズを常にヒアリングしつつ本当に必要なものだけを作っていけるのが特徴的だ。スライド後半では、同社の経営哲学や自立型組織マネジメントも紹介されている。また、倉貫さんは2冊の著書でも、自身の考えを詳しく紹介している。
米田:今、働き方改革が叫ばれており、倉貫さんが意見を求められることも増えるのではないかと思います。実際、2月15日(水)には「働き方を考えるカンファレンス2017」に登壇されますよね。飄々と自分たちに合った働き方を追求されている倉貫さんから見て、日本企業は今後こうなっていけばいいと思うことはありますか?
倉貫:働き方改革も使命感に突き動かされているような感じがしています。「生産性を向上させないと」「子育てや介護、地方の問題を解決しなきゃ」と、みんな苦しそうにやっているように見えます。苦しそうに働き方改革するのは正直、やめてほしいです(笑)。僕らは自分たちが楽しく働くためにリモートワークや新しいビジネスモデルを導入してきたので、もっと楽しそうにやればいいのになぁと思っています。苦しそうにやると続かないですしね。
「プログラマーとして一生楽しく働き続けたい」という自分の軸をブラさず、必要なことを実践してきた倉貫さん。ソニックガーデンにとってリモートワークは手段であり、リモートワークをすることが目的ではありません。企業においては手段が目的になってしまうという本末転倒が起こってしまうものですが、倉貫さんは持ち前の合理性でそれを避けるようにソニックガーデンを作り上げていったということなのでしょう。
こうしたあり方は、私たちが「働き方改革」を実現していく上で大いに参考になるのではないでしょうか?
働き方を考えるカンファレンス2017
「働き方のあり方」が変化し、企業・個人それぞれにとっての理想の働き方の実現が企業にとってもっとも大きな課題となっている今開催されるイベント『働き方を考えるカンファレンス2017』が2017年2月15日(水)に開催されます。
今回インタビューした倉貫さんをはじめ、経済産業省大臣 世耕弘成氏、慶應義塾大学名誉教授・東洋大学教授 竹中平蔵氏など、著名な企業、スタートアップ、政府関係者などが登壇し、テーマである「人と企業の『これからの働き方』や『理想の働き方』を考え、実現する」について語ります。今後の働き方に関する最新の知見や考え方を知りたいという方はぜひ会場を訪れてみてください。
開催要項
- 日時:2017年2月15日(水)10:00-18:30
- 会場:虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区虎ノ門1丁目23番3号 虎ノ門ヒルズ森タワー5F)
- 公式サイト
※ライフハッカー[日本版]は同イベントのメディアスポンサーを務めています。
(聞き手/米田智彦、文・構成/神山拓生、撮影/神山拓生・城岡来奈)
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