体調を少し崩したこともあり、ブログ記事を書かない状態が続いてしまった。最後の記事は昨年の1114日なので、もう3ヶ月近く記事を更新していないことになる。その間に文科省の天下り問題が発覚した。文科省行政の問題点については後日しっかりとした記事を書きたいと思っているが、簡単に触れておく。問題の本質は、国立大学の運営交付金や私立大学の経常費補助金の減少と、それに対応して増加している競争的研究資金と大学教育改革推進のための補助金にある。国立・私立を問わず、大学とすれば競争的資金や教育改革補助金は喉から手が出るほど欲しい。ではどうすればよいか?研究および教育の競争的資金には審査があり、審査員は主に大学教員(場合によっては企業人も入る)であるから、文科省のさじ加減でこれらを左右することは基本的にはできない。しかしながら、申請書類をどう書いたら審査員からの評価がよくなるかといった点については、文科省の役人は熟知している。また、今後どのようなプロジェクトが立ち上がるのかについても文科省出身者ならいち早く情報を得る、あるいは予測することができる。評価される申請書を書くには、大学内での改革(私は改悪だと思うが)をある程度進めておく必要があり、それゆえどれだけ早く情報を取れるかは、申請書作りには非常に大きなポイントとなる。それゆえ大学は文科省から天下りを受け入れる。12,000万円の投資(人件費)で数千万〜数億円のプロジェクト資金を獲得できれば安い「買い物」ということだ。

 

 それにしても、「また早稲田か」である。120日の記者会見で、鎌田総長が文科省の吉田前局長の早稲田大学への天下りに関して「違法なあっせん行為を止められなかったことは反省している」との謝罪。しかしながら、早稲田は、天下り監視委員会の調査に対して、「事前に文科省から想定問答を渡され、「形式的な調査のため、この通り答えてもらえれば調査は終わる」と説明されたため、事実と異なる供述を行った」とのこと。これは「捏造」でしょう。小保方氏の博士論文のコピペよりももっと悪質な行為だ。彼女の場合は知らなかった面があるが、「事実と異なる供述を行った」人は、嘘を言っていることを自覚していたはずである。小保方氏の学位を剥奪したという懲罰を鑑みれば、「事実と異なる供述」を行った人は懲戒免職ものだろう。この大学の伝統なのか鎌田総長だからなのかはわからないが、早稲田には「倫理」などという言葉は存在しないのだろうか。早稲田生命理工の有志の先生方も、再度、大学にしっかり意見を言っていただきたいものだ。ところで、小保方氏のTissue論文の捏造疑惑については、その後、大学の研究不正告発窓口に訴えたのであろうか?

 

 さて、小保方氏が訴えていたNHKスペシャル「不正の深層」に対するBPOの委員会決定が昨日示された。ほぼ予想どおりと言えよう。2014729http://blog.livedoor.jp/pyridoxal_phosphate/archives/2014-07-29.html)と82日(http://blog.livedoor.jp/pyridoxal_phosphate/archives/2014-08-02.html)の記事を参照されたい。729日では「これは「放送倫理・番組向上機構」に通報した方がよいほど悪質な話ではないだろうか」と書いたがまさにそのとおりになった。また、82日の記事では「STAP論文」と「NHKスペシャル」の類似性を示した表を掲載したが、それも的確であった。表の「捏造の疑い」では、STAP論文では「STAP細胞による多能性(テラトーマ形成)を示す実験において、脾臓由来と記載しておきながら、実際は骨髄由来の結果(小保方さんの博士論文由来の図)を示す」であり、一方、NHKスペシャルでは「小保方さんのフリーザーに保存してあったSTAP実験とはまったく関係のないES細胞を画面全体に示すことによって、小保方さん捏造の印象を強める」であり、まさにこの点がBPOから「名誉毀損の人権侵害が認められる」という判断の根拠となった。男女の声で語らせた小保方氏と笹井氏のメールのやりとりは、729日の記事では「嫌らしい」と書いたが、BPOは「品位を欠く」という表現であった。

 

 理解できなかった点は、NHKヒアリング等で、遺伝子解析を行った遠藤氏の「元留学生のES細胞(前記のz)がSTAP問題に関連していなかったと言うことは科学的には出来ない」という指摘を使って弁明をしたということである。遠藤氏はLi氏の細胞については解析を行っていないはずなので、そのような指摘をしたとは考えにくい。科学者として発言するならば、少なくともSTAP細胞とLi氏の細胞の比較解析を行い、その上で「両者に顕著な差がなかった」という結論を得ない限り上のようなコメントはできないはずだ。遠藤氏が科学者特有の「可能性は除去できない」という「一般的」表現を、NHKが「科学的にはできない」と悪用したのではないだろうか。BPOの決定にNHKが反論したとのことであるが、「品位」がないどころか、常軌を逸しているとしか思えない。

 

 さて、「結論ありき」の科学者陣であるが、相変わらずとしか言いようがない。委員会決定文を読んで「申立人の主張の大半は退けられていることが分かります」とのこと。この表現を使えるのは、大半が「放送倫理上問題がない」と判定された場合であろう。少数意見の二人(奥委員と市川委員)も「放送倫理上は問題があった」と認めている。日本語がよく理解できないのか、あるいは「結論ありき」なのかはわからないが、いずれにしても文章をねじ曲げて伝えることは本当の科学者ならばやめるべきだろう。BPOのすべての委員が放送倫理上の問題があったことを認め、多数は「名誉毀損による人権侵害」の一線を超えたと考え、少数は一線は超えていないが、その近くまで行っているというのが結論なのだ。