初心者に将棋の魅力を伝えたいと、駒の図柄でその動き方が一目で分かる「大明駒(たいめいこま)」を、アートディレクターの稲葉大明さん(38)がデザイン・制作した。女性からは「おしゃれ」、将棋愛好家には「初心者に教えやすい」と好評で、優れたデザインに贈られる「グッドデザイン賞」(2016年度)を受賞した。
「将棋を始めてくれる人が増えれば」と語る稲葉大明さん=東京都台東区で2017年2月9日、浜名晋一撮影
子供の頃から将棋が好きだった稲葉さんが、大明駒のアイデアを思いついたのは、初心者に将棋のルールを教えた時だった。最も難しかったのが駒の動き方を理解してもらうことで、漢字を一切使わず、駒が進むことのできる方向を視覚的にデザインすることを考えついた。14年に制作・販売を開始。商品名の「大明」は自分の名前と、「大変明解」の意味をかけたという。
デザインはいたってシンプルだ。例えば、前方に真っすぐだけ進むことのできる「歩兵」は駒の先端に黒で印を付け、左右の斜め後方だけ進むことのできない「金将」は左右の下端以外を金で塗りつぶした。また、駒が裏返しになった「成金」を表現するために、該当する駒の裏側にもそれぞれ「金将」と同様のデザインを施した。稲葉さんによると、初心者が往々にして見過ごしてしまう相手の駒の動きも大明駒では、視覚的にとらえることが容易で、次の一手も読みやすくなるという。
大明駒は、産地として知られる山形・天童産の駒を使用。使っている色は金、銀、黒の3色のみで、うるしに似たカシュー塗料を一枚一枚、手作業で塗る。カラフルな色を避けたのは、将棋のストイックな雰囲気に合わないと判断したからという。
稲葉さんは今後、漢字が分からない外国人に将棋を普及させるためにも活用できると期待しており、「この駒をきっかけに将棋を始める人が一人でも増えてくれれば」と話している。
価格は使用している木材により異なり、カエデが1セット9720円、斧折が同1万6200円(いずれも税込み)。デザインスタジオ、ファンダメント(東京都台東区、03・5825・4560)のサイト(http://fundament.jp/taimeikoma/)で販売している。【浜名晋一】