マンションや一戸建てなどを購入する際に、ほとんどの人が住宅ローンを利用します。住宅ローンは最長35年の個人向けローンで、借入額も他の個人向けローンと比較しても高額となります。そのため、早期に返済を完了する方法として、繰り上げ返済の話題がよく出てきます。
しかし、利用することで税制優遇措置なども取られている住宅ローンは、本当に早期に返済したほうがよいのでしょうか?
住宅ローンの繰り上げ返済について、検証してみます。
住宅ローンとは?
そもそも住宅ローンとはどういったものなのでしょうか? 家を購入するときに銀行からお金を借りるというざっくりとした内容でしか知らない人も多いと思います。中には、住宅ローンの選定まで不動産業者に任せっきりで、その本質を具体的に理解していない人もいるでしょう。ここで繰り上げ返済の前に、住宅ローンの基礎について、しっかりと理解しましょう。
住宅ローンの利息計算
よく住宅ローンの利息が話題になることがありますが、住宅ローンの利息計算はどのように行われるのでしょうか?
元利均等方式による返済額計算
住宅ローンの中でも最も一般的な月々の返済額が一定となる元利均等返済方式について考えてみます。月々の返済額は、借入額に利息分を加算した形で表されます。ここで注意しなければならないのが、銀行などで表記している金利は年利になることです。銀行表記の金利を12カ月で割った月利が月々の返済額に適用されます。
また、月々の返済で借入額は毎月減っていくため、その月の残っている借入額に月利の利息分を加算するため、毎月の利息分は返済が進むと減っていくことになります。
これらを考慮し、金利の変動がなければ、月々の返済額が一定となる住宅ローンの返済方式が「元利均等返済方式」ということになります。実際の計算は非常に複雑となるため、各銀行や住宅ローン協会などのホームページ上での返済額シミュレーションなどから計算することをおすすめします。
例として、4000万円の家を購入するのに、1%の金利で35年の住宅ローンを利用したという条件で計算します。その計算結果が11万2915円となります。これが月々の返済額となります。総返済額は月々の返済額×返済回数(35年×12カ月=420回)となり、4742万4300円となります。
金利利息支払い分は総返済額-借入額となります。4000万円で35年の住宅ローンを利用した場合、その計算結果が、742万4300円となります。これは、フラット35などのような金利が返済期間に一定であった場合にのみ適用できます。(本来の金利の計算方法は各銀行によって異なります。この計算方法は参考です)
金利が低い、または借入額が少ない方が、金利支払い分が少ない
上記の計算式より、金利が低いと利息支払い分が少ないことが言えます。また、借入額が少ない場合も利息支払い分が少なくなることが分かります。当たり前ですが、大きなお金を借りるとその分月々の返済額が多くなり、利息の支払いが多くなります。
返済額を少なくする方法としては、「借入額を少なくする」「金利が低くなる」という二つの方法があることがわかります。
住宅ローンの金利ってどうやって決まるの?
余談になりますが、各銀行の住宅ローンの金利はどのように決まるのでしょうか?
これは変動金利と固定金利での融資で異なります。変動金利の場合は、各銀行の短期プライムレートという融資金利を基に決定されます。これは、各銀行の基準がありますが、主に日銀の政策金利や金融政策に左右されます。フラット35など固定金利の場合、
10年国債の金利により決定されます。国債がマイナス金利となったことで住宅ローン金利が史上最低となったというニュースは、これに関連します。
また、銀行の形態によっても多少違います。都市銀行などの窓口を持っている銀行とネット銀行を比較すると、実店舗のないネット銀行の方が、金利が低い傾向にあります。このように金利については、住宅ローン利用者ではなかなか決められない側面が強いものとなります。
借入額を途中で減らす! 繰り上げ返済
では、本題の住宅ローン繰り上げ返済についてです。前項での住宅ローンの特性から、金利と借入額によって、月々の返済額や利息支払い分が少なくなることが分かりました。個人で住宅ローンの負担を減らそうと考えた場合、最も一般的な方法が、借入額を期日前に返済する繰り上げ返済です。
では、繰り上げ返済について、実際のシミュレーションも行いながら、検証していきます。
繰り上げ返済の種類
繰り上げ返済には、期間短縮型と返済額軽減型の2種類があります。それぞれの特徴についてです。
期間短縮型 繰り上げ返済
期間短縮型繰り上げ返済は、文字通り、繰り上げ返済をした際に金額に応じて、返済期間を短縮するというものです。例えば、一か月分の返済額に相当する金額を繰り上げ返済した場合、期間短縮型繰り上げ返済を行った場合、返済期間が1か月短縮されるというものです。月々の返済額は同じでも、返済期間が短くなっていくというものです。
返済額軽減型 繰り上げ返済
返済額軽減型繰り上げ返済は、繰り上げ返済を行うことで、月々の返済額を減らすタイプの繰り上げ返済です。月々の返済額は減りますが、返済期間は当初と変わりません。しかし、月々の返済額が軽減されていきますので、生活が楽になります。
どちらも一長一短
では、どちらがオススメの繰り上げ返済かということですが、どちらも一長一短があります。返済額軽減型は、月々の返済額が軽減されるため、選択する人が多いかと思いますが、返済期間は同じとなります。
一方で、期間短縮型は月々の返済額は変わりませんが、返済期間が短くなるため、その後の生活に安心を作ることができます。
どちらにしても、今ある借入額を軽減する方法であることには変わりありません。
繰り上げ返済には手数料がかかる?
そんな繰り上げ返済ですが、ちょっと浮いたお金で少しずつ返済をしていこうと考えている人も多いと思います。
しかし実際には、銀行によっては繰り上げ返済に手数料がかかることもあります。その手数料についてです。
都市銀行
みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行などの都市銀行については、繰り上げ返済を行う時の手数料はインターネットバンキングでの手続きの場合は無料としているところが多いです。電話や窓口で繰り上げ返済手続きを行うと、5000円程度の手数料がかかることが明記されています。
インターネットバンキングが主流となっている今では、窓口で繰り上げ返済を行うということも少ないかと思いますが、回数の多い場合は手数料負担も大きくなってきます。
地方銀行
各地方の金融機関では、一回の繰り上げ返済につき5000~10000円程度の手数料を請求されることが多いです。地方銀行での住宅ローンを考えている方には、繰り上げ返済を繰り返していくと手数料負担が大きくなっていきますので、まとまった金額で繰り上げ返済を行うことをお勧めします。
信用金庫
信用金庫などの金融機関の住宅ローンは、年間の繰り上げ返済の回数に応じて、無料回数を制限するといった形の手数料体系を掲示しています。年間2回まで手数料無料で、それ以降は5000円程度の手数料がかかるといった形となっています。
ネット銀行
ネット銀行では、繰り上げ返済には手数料はかかりません。1円から繰り上げ返済が可能という銀行も多いため、ちょっとした金額をコツコツと繰り上げ返済に充てるという人もいます。
マンションサプリ編集部 - 2017年02月13日