自宅でSOHOをはじめるにあたって、購入するか非常に悩んだのが断裁機(裁断機とも言われるがプラスのウェブサイトにならって断裁機と呼ぶ)。ドキュメントスキャナーを買って自炊を始めるまではそんな道具があるとは知らなかったが、分厚い本を一刀両断してスキャン可能にする強力なカッターである。情け容赦なく本を切る目的以外に使ったことはないが、丁付けした印刷物をカットするのが本来の利用法なのだろう。
プラスのPK-513Lを長年使ってみた感想
これまでは会社でプラスのPK-513Lという最強クラスの断裁機を購入して、こっそり私用にも使わせてもらっていた。カッターでぎこぎこ切断していた苦労に比べると、一瞬で切断できて切口も美しく感激した覚えがある。それもそのはず、PK-513は刃の交換もできるプラスの最上位機種で、どっしりした重量と長いハンドル(てこの原理)のおかげで、ちょっと体重を乗せればわずかな力でハードカバーの本も断裁できる。
プラス 断裁機 PK-513L 裁断幅A4タテ 26-106
- 出版社/メーカー: プラス
- 発売日: 2009/09/01
- メディア: オフィス用品
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さすがに厚みが3cm以上あるような本は、いったんカッターで縦に切って厚み半分にしないと断裁機の切り口に入らないが、「光るカットライン」機能で切断位置が赤くライト照射されるなど、使い勝手は問題なかった。ちなみに断裁機の裏面を見ると、ライト用の乾電池から導線がむき出しでつながっていて、見えないところにはコストをかけない潔さを感じさせる。
ミニマリズムに反する断裁機の圧倒的存在感
PK-513Lがあまりに気に入っていたので家でも使いたかったが、後継機のPK-513LNはアマゾンで56%オフでも30,399円もする。
プラス 断裁機 かんたん替刃交換 PK-513LN 裁断幅A4タテ 26-309
- 出版社/メーカー: プラス
- 発売日: 2012/04/23
- メディア: オフィス用品
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実は値段よりも問題なのが、断裁機の大きさと重さである。せっかく本を持たない生活にしようと思っているのに、それを解体する専用機だけで電話帳数冊分くらいのスペースが占有されてしまう。斜めに突き出たハンドルをヒモで縛ってたたんでおくこともできなくないが、結構な力で抑え込む必要があって、使うときにまたほどくのも面倒だ。
かなり重量があるので、押し入れから頻繁に出し入れするというのも気が進まない。部屋の床にでも置いておくと、鈍器のような台座に足をぶつけて痛い思いをするのは目に見えている。高級断裁機は便利なのだが、4.5畳の部屋にカラーレーザー複合機を置くようなオーバースペック感があるのを否めない。
プラスのPK113やカールのディスクカッターなど、小型の断裁機も存在するが、スペックが劣るわりにそれなりに場所を取る。やはりこの手の大型事務用品はオフィスや学校でシェアするのが望ましく、自炊ヘビーユーザーとはいえ自宅に置いて眺めて過ごしたいとは思わない。
スキャナーは上位機種のScanSnapS1500で正解
その点、ドキュメントスキャナーの方は昔買ったScanSnapのS1500でちょうどよいと感じる。その前は同じ富士通製のS1300というモバイル型を使っていたが、頻繁に自炊するようになってS1500に乗り換えた。スキャン速度が段違いだし、専用シートに挟めばA3もスキャンできる。S1500も電話帳2冊分くらいは場所を取るのだが、断裁機に比べれば空間的に投資する価値はあると思う。現行機種ならフラグシップのiX500に相当するだろう。
富士通 FUJITSU ScanSnap iX500 (A4/両面/Wi-Fi対応) FI-IX500A
- 出版社/メーカー: 富士通
- 発売日: 2015/02/06
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個人事業のSOHOならコンビニのコピー機で十分
ドキュメントスキャナーは持っているのだが、いまだに自宅にプリンターやスキャナーは置いていない。最近はPDF ファイルをUSBメモリで運んでコンビニのコピー機で書き出せるので、ちょっとした散歩も兼ねてコンビニで済ませることにしている。スマホに付属のカメラも解像度が増してきたので、ちょっとしたイラスト程度ならスマホで撮ればスキャナーも不要なくらいだ。
プリンターはインクジェットだと品質が微妙だしインク代もかかる。かといって自宅に大型のレーザープリンターを備える気もしない。たまに雨の日に急ぎの資料を印刷する必要があると、小型のプリンターくらい買おうかなと思うが、モノクロ限定ならコンビニで出力する方がプリンタ本体・インク・用紙代を合わせて費用的に安いと思う。
USBメモリ不要で、LAN経由でコンビニコピー機に直接データを送れるネットワークプリントも便利だが、富士ゼロックスはセブンイレブン対応で、シャープはそれ以外のコンビニと分かれているのが面倒だ。法人向け料金は数万円もするが、住民票印刷できるくらいのセキュリティもあるハイエンドなコンビニプリンターをシェアするのはおもしろそうだ。問題は他の人が使っていたら待たないといけないことだが…。
初心に帰ってカッターで本を切断
最近はなるべくKoboの電子書籍で本を読むようにしているが、古い本で電子版が出ていないことが度々ある。その場合はアマゾンで古本を買うことが多く、たまってきた本をとうとう自炊してみた。
断裁機なしの生活に逆戻りで、カッターで何度も切り刻んで分解した。1.5cmくらいの厚みで20回くらい切ったと思う。最初は30度鋭角刃のNTカッタープロシリーズAD-2Pを使ってみたが、やはり事務用の安いカッターよりはよく切れる。今月の日経トレンディ「文房具大全200」にも取り上げられていたカッターの名機だ。
そういえば段ボールを切ったりするとき用のL-500GRもあったのを思い出して、使ってみた。さすがにこちらの方が刃が大きくて荷重をかけながらカットできるので、裁断スピードも速かった。
カッター断裁のコツとしては、2~3回刃を入れるごとに切った紙を外した方がよい。そうしないと上の紙を何度も切って細い短冊状のゴミが出てしまう。あとは1回で枚数多めに切ろうと力むとケガしそうなので、軽い力で何度も刃を入れる方が安全だ。断裁機に比べると切口は汚くなるが、マニュアル作業でページを丁寧に分離できるので、後のスキャン工程での紙詰まりを防げると思う。
時間はかかるが、カッターで問題なかった
自炊初心者の頃、丁寧に装丁された本をバラすのに最初は罪悪感を感じた。何か人類が築き上げてきた英知のようなものを破壊する感覚だ。手塩にかけて育ててきた家畜を絞めるときも、こんな気持ちになるのかもしれない。ギロチンのような断裁機であれば痛みを感じる時間も短そうだが、切れ味の悪い刃物で何度も切り刻むのは、本に対する拷問のように思われてくる。読み終わった本が自分の血肉になるように、五観の偈でも唱えながら作業すると気がまぎれるだろう。
特に目新しいノウハウはなく、不便な時間も逆に楽しもうという発想だが、カッター自炊の費用対効果は高い。以前は断裁機の一つでも持っていないと自炊派としてはカッコ悪いくらいに思っていたが、改めて考えると趣味のレベルで自宅に常備するほどの道具ではない気がしてきた。いずれ断裁機に代わって、超コンパクトなのに一瞬で本を解体できる野菜皮むき器みたいな道具が発明されたらいいと思う。