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社説
2月10日付  南スーダン  戦闘でないと言えるのか  
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 現場の部隊が危険にさらされている実態が分かった。看過できるものではない。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の活動を記録した日報の一部を、防衛省が公開した。

 昨年7月11、12日分で、首都ジュバ市内で270人以上が死亡した大規模な戦闘が生じた時期のことである。

 現地情勢の厳しさが伝わってくる。「部隊の宿営地周辺での流れ弾や、市内での突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要」とあった。

 「宿営地南方向、距離200(メートル)、トルコビル付近に砲弾落下」「政府軍による国連施設方向への攻撃には引き続き注意が必要」との記載もある。

 日報で、派遣部隊や国連にまで及ぶ危険性が指摘されていたのは明らかである。

 「首都ジュバの落ち着き」を強調していた政府の公式見解との違いを浮き彫りにしたものだ。

 そればかりか、こうした情報が、安全保障関連法に基づく南スーダンでの「駆け付け警護」などの新任務の付与を巡る昨年の国会論戦に反映されず、国民に知らされなかったのは極めて遺憾である。

 意図的に情報を隠していたのではないかと疑われても仕方あるまい。

 衆院予算委員会で稲田朋美防衛相は、海外での武力行使を禁じている憲法9条を念頭に「(戦闘行為が)行われたとすれば9条の問題になるので、武力衝突という言葉を使っている」と答弁した。

 PKO参加5原則や憲法9条により、撤退が必要になる戦闘行為ではないと言いたいのだろう。

 しかし、戦闘を武力衝突と言い換えても、直面する現実が変わるわけではない。

 国連のアダマ・ディエン事務総長特別顧問は7日、南スーダンで「大虐殺が起きる恐れが常に存在する」と警告する声明を改めて発表した。

 昨年11月にもジェノサイド(民族大虐殺)に発展する可能性を示しており、危険な状況が続いているようだ。

 政府は、現状をしっかりと把握しているのだろうか。撤退を含め、国会で議論を尽くさなければならない。

 防衛省の情報公開の在り方も問題である。

 今回の日報は、フリージャーナリストが情報公開を請求し、防衛省が昨年12月に「廃棄済み」を理由に不開示決定としたものだ。

 ところが、河野太郎衆院議員(自民)から再調査の要求があり、捜したところ、統合幕僚監部に電子データとして残っていたという。しかも事実関係を公表したのは、判明してから1カ月以上もたってからだ。

 なぜ、当初の請求段階で廃棄済みとしたのか。防衛省の対応に疑念が残る。

 隠蔽(いんぺい)体質がはびこっているなら、言語道断だ。経緯を徹底して調査し、情報管理と公開の在り方を再考しなければならない。

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