南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に昨年派遣された陸上自衛隊の第10次隊が現地で記した日報の一部が公表された。
外部からの情報公開請求に対して防衛省は「廃棄済み」を理由にいったん不開示とした。その後、電子データとして保管されていたことが判明したとする。
日報は、部隊の行動を記録した貴重な資料だ。「内容を上官に報告して廃棄した」という当初の説明に首をかしげる声は多かった。
今回は国会議員から再調査を求められ、範囲を広げて探した結果、別の部署で見つかった-。耳を疑う話である。事実ならあまりにずさんな文書の取り扱いというしかない。
陸自の第10次隊は昨年5月下旬から約半年間、南スーダンに派遣された。7月になって大統領派と反政府勢力の対立が再燃し、戦車や迫撃砲を使用した大規模な戦闘で270人以上の死者が出た。
公表された日報は、戦闘が続く同月11、12日の分で、宿営地の近くで銃撃戦が展開され、砲弾の着弾を目撃した様子が報告されている。政府軍による国連施設方向への攻撃について「引き続き注意が必要」と書くなど、戦闘に巻き込まれる可能性が高いと認識していたことが分かる。
当時、安倍政権は自衛隊の新任務として、国連関係者らが武装集団などに襲われた際に武器を持って救出に向かう「駆け付け警護」の付与を目指していた。最終的に付与に踏み切った際、南スーダンについて「状況は比較的落ち着いている」との見解を示したが、現地の部隊は異なる状況判断をしていたことになる。
リスクの増大を否定する政府の姿勢は、隊員の懸念と向き合う誠実さに欠けているのではないか。
そもそもPKOは、紛争当事者間の停戦合意が大前提となる。日報は戦闘の激化など治安情勢の悪化を詳細に伝えており、自衛隊派遣への反対世論の高まりを恐れて意図的に情報を隠したとの見方がある。
自衛隊では、過去にも護衛艦で起きた隊員のいじめ自殺に関し、「存在しない」とした暴行の実態を調べたアンケートの原本が内部告発で見つかったことがある。
「日報の隠蔽(いんぺい)はしていない」というのなら、今後の政策検証のためにも、PKO派遣に関する重要情報は基本的に全て公開とすべきだ。