- 2017年2月11日(土)
派遣決定過程の検証を/PKO日報問題
防衛省が南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報の一部を公表した。首都ジュバで昨年7月、政府軍と反政府勢力がぶつかり270人以上が死亡した。日報には「戦闘」という表現があった。現地情報に基づくPKO派遣の延長の判断に疑義を生じさせるものだ。
政府は昨年10月に部隊派遣の延長を決定した。さらに安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」などの新たな任務も付与している。
これらの決定の前に日報の内容が明らかになっていれば、国会での議論も異なったものになっていたと思われる。派遣決定過程を検証するとともに、今後の派遣継続の是非を再検討すべきだ。
防衛省は、外部からの情報開示請求に対して、日報は「廃棄済み」として不開示を決定した。しかし、その後一転して、電子データとして保管されていたことが判明した。ところが約1カ月間、稲田朋美防衛相にその事実を報告していなかった。意図的な情報隠蔽(いんぺい)と言われても仕方がないだろう。
日報は「市内での突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要」「UN(国連)ハウス周辺では戦闘が確認されている」などと緊迫した情勢認識を伝えていた。
ところが当時の中谷元・防衛相は「発砲事案の発生」と表現。後任の稲田氏も「武力衝突」だとし「法的な意味での『戦闘行為』ではない」と説明してきた。
日本政府は戦闘行為を「国際的な武力紛争」と規定。さらに「武力紛争」は「国または国に準ずる組織(国準)の間で行われる争い」と定義している。南スーダンの反政府勢力は「支配領域や系統立った組織がない」ために国準に該当せず、政府軍と衝突しても「戦闘行為」にはならないとの論法だ。
紛争当事者間の停戦合意などPKO参加5原則も満たすとの立場を貫いている。しかし、日報から伝わる緊迫感とずれていないか。
現在、南スーダンでは第9師団第5普通科連隊(青森市)を中心とする350人体制の11次隊がジュバ市内の宿営地などで活動している。
日報は現地の情勢を判断する重要な1次情報だろう。法律上のつじつま合わせではなく、派遣隊員の安全を確保するための情報収集と分析、判断が最優先されるべきなのは言うまでもないはずだ。