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政治コラム「だまってトイレをつまらせろ」でわかる朝日新聞の落日

降旗 学 [ノンフィクションライター]
2016年3月12日
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 先月16日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた女子差別撤廃委員会の対日審査で、政府代表として外務省の杉山晋輔外務審議官が慰安婦問題に関する事実関係を説明した。

 杉山審議官は、慰安婦の強制連行を裏付ける資料がなかったことを説明するとともに、強制連行説は吉田清治氏(故人)による「捏造」で、それをさも事実のごとく朝日新聞が報じたことが「国際社会にも大きな影響を与えた」と指摘した。朝日の誤報問題を名指ししたわけですね。

 ところが、翌17日の朝日新聞は、国連で対日審査があったことは報じたが、記事には「朝日新聞」の「あ」の字も書かなかった。杉山審議官の発言は全てスルーされました。自分たちに都合の悪いことは報じないんです、朝日新聞は。

 朝日の偏りはとりあえず措いといて……、高橋次長サンは、トイレを詰まらせることを奨励しているわけではない、と綴る一方で、新聞紙を流されて詰まらされたくなければ「チリ紙を置いときな、という精神のありようを手放したくない」とも書く。まるで脅迫だ。

 〈他者を従わせたいと欲望する人は、あなたのことが心配だ、あなたのためを思ってこそ、みたいな歌詞を「お前は無力だ」の旋律にのせて朗々と歌いあげる。うかうかしていると「さあご一緒に!」と笑顔で促される。古今東西、そのやり口に変わりはない〉

 高橋次長サンの原稿の特徴は、脈絡もなくワケのわからない理屈が飛び出すことだが、どーしていきなり「お前は無力だ」という歌が出てくるのか? 他者を従わせたいと欲望する人というのは……?

 〈「ほかに選択肢はありませんよ――」

 メディア論が専門の石田英敬・東大教授は2013年、安倍政権が発するメッセージはこれに尽きると話していた。そして翌年の解散・総選挙。安倍晋三首相は言った。

 「この道しかない」

 固有名詞は関係なく、為政者に「この道しかない」なんて言われるのはイヤだ。近道、寄り道、けもの道、道なんてものは本来、自分の足で歩いているうちにおのずとできるものでしょう?

 はい、もう一回。
 だまってトイレをつまらせろ。ぼくらはみんな生きている〉

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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三面記事は、社会の出来事を写し出す鏡のような空間であり、いつ私たちに起きてもおかしくはない事件、問題が取り上げられる。煩瑣なトピックとゴシップで紙面が埋まったことから、かつては格下に扱われていた三面記事も、いまでは社会面と呼ばれ、総合面にはない切り口で綴られるようになった。私たちの日常に近い三面記事を読み解くことで、私たちの生活と未来を考える。

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