国会審議をめぐり、2人の閣僚の対応が混乱を招いている。

 金田勝年法相は、従来の「共謀罪」にあたる「テロ等準備罪」新設について、法案の提出前だとして質疑を封じるかのような文書を公表し、批判を浴びて撤回した。

 稲田朋美防衛相は、南スーダン国連平和維持活動(PKO)への自衛隊派遣をめぐる質疑で、憲法9条上の問題を避けるために「戦闘」という言葉を使っていないと説明し、野党の追及を招いた。

 世論の割れる問題で国会の紛糾を避け、政権の意向を押し通そうというのだろう。国民の疑問に誠実に答える姿勢を欠いている。

 国会は、閣僚の資質の追及に加え、テロ等準備罪やPKO派遣がはらむ問題の本質を、今後の審議で明らかにしてほしい。

 法相の文書は、テロ等準備罪の法案は検討中だとして「配慮」を要求。「国会に提出した後、所管の法務委員会において議論を重ねていくべき」だとして事実上、予算委員会での質疑自粛を求めた。

 要は、満足に答弁できないので質問は勘弁してほしいという泣き言だ。資質を疑わざるを得ない。

 確かに法案が固まらなければ説明しきれない部分は残るだろう。

 だがこれまでの質疑では、過去に廃案になった「共謀罪」との適用範囲の違いなど、根幹にあたる部分すらまともに答えていない。

 検討中の法案が、拡大解釈の余地を残していることも一因ではないのか。審議の環境が整わない以上、政府は提案を断念すべきだ。

 さらに重いのは、南スーダンの現状をめぐる稲田氏の答弁だ。

 「武力衝突はあったが、法的な意味での『戦闘行為』ではない。行われたとすれば憲法9条上の問題になるので、武力衝突という言葉を使っている」と述べた。

 派遣部隊の日報には現地の「戦闘」が明記されていた。これを「戦闘行為」と認めればPKO参加5原則や憲法9条に照らして撤退が迫られる。だから「武力衝突」と言い換えたのが実情だろう。

 稲田氏は、政府が戦闘行為の定義とする「国際的な武力紛争の一環」にあたらないと主張するが、その線引き自体が恣意(しい)的だ。呼び名を変えてその批判を回避しようというのなら、本末転倒だ。

 防衛省の河野克俊統合幕僚長がこの議論を受け、「戦闘」の言葉を「よく意味を理解して使うように」と指示したのも問題がある。

 南スーダンの戦況が覆い隠され、隊員がさらなる危険にさらされる事態を招いてはならない。