防衛省は南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊部隊の日報などの一部を公開した。

 昨年7月に首都ジュバで発生し、270人以上が死亡した政府軍と反政府勢力の銃撃戦について、政府が否定してきた「戦闘」との表現を使っている。

 現場が伝える危険性を政府はやはり過小に見せていたとの印象が強い。国会で派遣の是非を巡る仕切り直しの議論を求めたい。

 「自衛隊宿営地周辺での流れ弾や、市内での突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要」

 「衝突激化に伴うUN(国連)活動の停止の可能性がある」

 「戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘があった」

 日報などに記載されたジュバの情勢だ。当時派遣されていたのは北部方面隊第7師団(千歳市)が中心の第10次隊約350人。緊迫した部隊の様子が目に浮かぶ。

 PKO参加5原則の柱である紛争当事者間の停戦合意は崩れたと読み取るのが自然だろう。

 それでも政府は派遣をやめず、現在活動している第11次隊に駆け付け警護の任務を付与している。

 反政府勢力は組織性や支配領域がなく紛争当事者に該当しない。ジュバは紛争の一環としての戦闘ではなく「武力衝突」だった―。

 これが政府の見解だ。稲田朋美防衛相はきのう、日報の「戦闘」は「一般的、辞書的な意味で使ったと推測している」と説明した。

 だが、政府がいくら「戦闘」という言葉を避け苦しい答弁を続けようと、自衛官が危険にさらされたという事実は隠しようもない。

 南スーダン情勢は現在も好転の兆しを見せず、国連の事務総長特別顧問は7日、「大虐殺が起きる恐れが常に存在する」と警告する声明を改めて発表した。

 安倍晋三首相は今国会で、派遣隊員に死傷者が出た場合は辞任する覚悟を持たなければならないと明言した。

 5月にも派遣される第12次隊は北部方面隊第5旅団(帯広市)が主力となる。犠牲者が出る前に自衛隊を撤収させるのが、最高指揮官としての責任ではないか。

 日報発表に至る経緯も問題だ。防衛省は昨年12月の時点では「廃棄した」と説明していたが、自民党の河野太郎衆院議員の指摘などを受け、統合幕僚監部内に電子データが見つかったという。

 防衛省は否定するものの、意図的に隠蔽(いんぺい)していたとの疑念が拭えない。徹底調査が必要だ。