韓国経営者総協会(経総)が9-10日の2日間にわたり開催した研鑚会で、参加者の間から「経済を殺す政治」への懸念が相次いだ。「政治家は国民を貧しくする法律ばかり制定している」「ポピュリズムにはまった政治家が先進韓国の最も大きな障害だ」といった発言はその最たるもので、中には「政治家は薄情だ」「企業をあそこまで苦しめたらみんな倒れてしまう」といった叫びにも似た発言もあった。
崔順実(チェ・スンシル)問題で表面化した韓国社会の病弊を改革することは、政治に突きつけられた大きな課題だ。古い制度や体制を見直して新しい仕組みを築き上げるため、与野党の議員や大統領候補者たちが語る構想に国民は大きな期待を持って耳を傾けてきた。ところが彼らが語る内容や方向性は聞くに堪えないものばかりで、これでは問題を改善するどころか、むしろ悪化させかねないとの懸念が少しずつ大きくなってきた。国会では経済を活性化させるとの建前で数々の新たな規制法案が提出されており、議員らはそれによって「若年失業問題を解決する」とは言っているが、その内容は雇用を提供する側である企業の活動を制限するものばかりだ。これらのいわゆる経済民主化に向けた法案は、世界のどこの国も導入していない過剰な規制ばかりの「企業規制法」へとすでに変質してしまった。またサービス発展基本法など経済活性化にプラスになりそうな法案は握りつぶされたが、ヘッジファンドによって大企業の経営権が奪われるリスクの高い商法改正案はこのまま成立しそうだ。
また大統領候補者たちの言動も問題だらけで、彼らは実現の可能性が低いポピュリズムに染まった公約ばかりを今もなお連発している。たとえば文在寅(ムン・ジェイン)元共に民主党代表は税金を使って81万人の公務員を新たに採用するという公約を掲げたが、これについては身内で文氏の選対本部長を務める宋栄吉(ソン・ヨンギル)共に民主党議員からさえ批判の声が上がった。ところが文氏はこれを何としても実現させるとして未だに公約を取り下げていない。大衆から一時的な人気を得られるなら何でもやるということだろうか。しかしその一方でどの候補者も「規制を緩和することによって雇用を生み出す」とは誰も口にしない。上記の経総の研鑚会では「(政治家は)社会主義経済を作ろうとしているのか」といった指摘も出た。これも間違った言葉に聞こえないのが恐ろしいことだ。