一方、90年代以降、資本主義の発展を検証する右派の経済学的アプローチも活発になりました。そこでは、統計など比較的数値に基づいた研究が行われ、李氏朝鮮時代にはなかった資本主義経済が日本植民地に根付き、“漢江の奇跡”と呼ばれる70年代の急速な経済発展の基礎になったという認識が普及します。経済史学者、安秉直(アン・ビョンジク)ソウル大名誉教授の研究によると、統治時代、農林水産業の生産比は8割から4割に減少し、工業生産比率は2割から4割に増え、朝鮮半島の近代化が始まったとします。
しかし、残念ながら、現在の韓国で力を持っているのは左派の歴史観です。しかも、日本統治時代に良い面があったとは、何があっても認めてはならないという風潮はさらに強固になっています。韓国が経済発展して、自国に自信を持てるようになれば、自然と反日は消えていくだろうと、考えていた日本人の考えは甘かったのです。
歴史学者の韓永愚(ハン・ヨンウ)ソウル大教授は、最近韓国で出版した近現代史の本で、植民地近代化論に立つニューライトの学説を批判しています。驚いたことに、その根拠として挙げたのが、“金王朝”の支配が続く北朝鮮の経済状況です。「南と比べて産業施設の多かった北朝鮮が戦後経済的に立ち後れたのは、日帝強占期に近代化がなかったからだ」という内容からは、歴史の実相を見ようという姿勢は伺えません。
80年代に教育を受け、左派の教師やテレビ、新聞、出版物を通じて、戦前の日本がいかにひどくアジア各国に迷惑をかけたかという贖罪史観をすり込まれた者としては、できるだけ韓国の人々に理解を示そうとしてきましたが、正直ここまで来ると、あきれるほかありません。