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【映画オタク記者のここが気になる】
認知症が懐メロで回復 “奇跡の動画”に週700万アクセス 映画『パーソナル・ソング』
音楽がヘンリーにもたらした“奇跡”を監督は目の当たりにし、1日だけのつもりだった取材が3年間に延びた。映画では、アルツハイマー病のほか、多発性硬化症などの神経疾患、双極性障害といった精神疾患の患者らが、懐かしのメロディー、いわゆる「懐メロ」に反応し、見違えるように元気になる姿をとらえる。まるでアニメ「アルプスの少女ハイジ」で、病弱な少女クララが自分の足でスックと立ったときのような光景の数々だ。
古代から精神的な治癒法に音楽(リズム)が利用されてきた。個人的にも、テレビCMで青春時代にはやっていた曲が流れれば、当時を懐かしみ若い力がみなぎってくるのを感じる。現代では「音楽療法」が広く活用されており、ダンの方法もその一種といえる。滞日中、ベネット監督は東京・中央区にある区立特別養護老人ホーム「マイホーム新川」を訪れ、音楽療法の現場を視察した。
テーブルを囲んで輪になって座った入所者たちに歌詞カードや楽器が渡され、童謡を歌ったり演奏を始めた。輪の中心でキーボードを弾いているのは、この施設で5年前から音楽療法を実施している加藤美知子さん。日本音楽療法学会の認定音楽療法士で同会常任理事の肩書を持つ。方法は違えども、音楽の力が高齢者に活力を与えていく様子を笑顔で見守っていたベネット監督は一言、「ビューティフル!」。