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映画「パーソナル・ソング」見ましたか?
音楽がヒトにもたらす効果を映像で捉えた素晴らしいドキュメンタリー映画です。
原題は、「Alive Inside」。
内側では記憶は生きている。
 
ひとりひとりが生きてきた背景には音楽があり、かつてのお気に入りソングを聴くことで当時の空気や感情までも引き連れて記憶がフラッシュバックする経験は誰もがお持ちでしょう。
きっとお気に入りソングを聴くという行為は、こころシアターで自分史の断片を上映するようなことなんでしょうね。
音楽と記憶の関係 。これがまずひとつ映画で印象に残ります。
 
そしてもうひとつ。
それは患者さんが能動的に音を選択するという行為です。
病院の中で決められた時間に決められた量の薬を飲み投与され、決められた時間とルールのなかで生きてゆく、そんなリズムを繰り返す中で人間は次第に活力を失い、ただただ従うしかない世界で人間らしさをも失っていくのではないでしょうか。
 
そこに好きな曲を聴くというとてもシンプルな「自由」がもたらす効果を考えさせられます。
人間において能動的に何かを選ぶということはとても重要な意味を持つのです。
 
映画を見てから、日本でもこういった活動ができるかどうか模索しています。
病院で実施するにはなかなか高いハードルがあります。
 
もっとも現実的なのは、地域カフェとか、地域包括支援センターなどと組んで少しずつ実施することでしょう。
 
また、日本の場合ですと、現在90歳以上の方の場合、思い出のプレイリストはどんな音楽でしょうか?戦前戦後直後に少年/青春時代を送られた方々にとってはお伺いした限りでは軍歌や地域のお祭りの歌などのようです。データによると昭和7年においてラジオ聴衆者数は100万台を突破したとはいえ、世帯数で割ると、都会でさえ7世帯に1台、地方においては100世帯に1台の割合の時代です。いわゆる音楽が大衆の娯楽となり全国規模になったのは、それから数年ほどたった、1950年代(昭和23年あたりの”東京ブギウギ”ヒット)に突入してからだったのかもしれません。そう考えたときに、日本においては1940年代に生まれた方々(現在、65歳から75歳)がこのパーソナルソングをより有効利用できる最初の世代かもしれません。
 
現在、高齢者予備軍である1940年代以降に生まれた方々が音楽の大切さをふたたび認識するだけでも、より高齢者の方に向けた取り組みや姿勢は家庭においても医療/福祉の現場においては随分と変わるのではないかと期待します。さらに、自分たちが介護される側になったときの準備にも早くから取り組むことが可能です。
 
 
 
「音楽を聴く」ことによって患者さんに”生”を吹き込む2つの要素。
記憶と選択。
このふたつは人が前に進む時にとてもとても大切な要素にちがいないとこの映画を見て強く思いました。
それは薬ではなく音楽によってももたらすことができるのです。
 
「パーソナル・ソング」