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【首都スポ】

[ラグビー女子]2020年東京五輪の切り札は陸上からの転向組 寺田&大竹

2017年2月11日 紙面から

 東京五輪目指し、猛ダッシュだ!! 2020年東京五輪でメダル獲得を目指す女子7人制ラグビーに、陸上競技から期待の新星が現れた。100メートル障害の元日本チャンピオン、寺田明日香(27)=東京フェニックス=は日本協会のトライアウトに合格して、昨夏の全国高校総体(インターハイ)七種競技で6位だった東京高3年の大竹風美子(18)は運命的な“事件”から、それぞれラグビーに転向。東京五輪を目指して、トラックから芝に舞台を移したスプリンター女子が3年半後の晴れ舞台でのメダル取りで切り札になる。 (文&写真・大友信彦)

6つに割れた見事な腹筋を披露した寺田。サクラセブンズの切り札になるか?=東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで

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◆元ハードル女王27歳1児のママ・寺田明日香 リオで戦う桑井の姿見て燃えた

 「見ます?」。寺田は少し照れながらシャツをまくった。現れたのはシックス・パック(6つに割れたの意味)と言われる美しく盛り上がった腹筋。この筋肉には、長い物語があった。

 100メートル障害で日本選手権3連覇を誇るハードルの女王が引退、結婚、出産を経てラグビーで五輪を目指す決意を固めたのは昨夏。かつて陸上の北海道選抜で仲良くなった桑井亜乃(27)=アルカス熊谷=がリオ五輪で戦う姿を見て、その桑井から以前、「明日香もラグビーやろうよ」と何度も誘われたことを思い出したからだ。

 「そのときは断ったんです。でも、リオの亜乃たちを見たら…」。頑張って前進しても、ボールを奪われると一気に相手のスピードの前に振り切られる。そんな桑井らの姿を見て悔しがっている自分がいた。そして、自分の持ち味スピードが力になれるかもとの思いが湧く。一線から離れて3年半が過ぎていたが、「(2歳のまな娘・果緒を)産む前は『東京五輪を一緒に見たいな』と思っていた。でも、五輪に出る姿を子どもに見せられたらもっといいなと思った」。アスリートの炎が燃え上がった。

 現実は厳しかった。昨年9月に測った50メートルのタイムは7秒2。自己ベストより1秒も遅かった。「ゲッ!! こんなんじゃ世界をとか言っていられないよ」。早朝から母親&主婦業に取り組み、合間を縫って個人練習、そして所属チームの練習へ。同11月には日本協会のトライアウトを受け、13人の受験者で唯一合格。今年1月からは中高生主力のアカデミーに練習生として参加している。

 「今心掛けているのはしっかり食べること。体をつくらないとラグビーはできない」。ご飯は毎食3杯。筋トレに打ち込み、昨年9月時の体重47キロ、体脂肪7%から57キロ、10%に増量した。その結果が冒頭の腹筋につながった。「でも、重い感じはない。50メートルは6秒52。3カ月にしては取り戻せたかな」と笑った。

 ラグビーの勉強も欠かさない。最高の教材は米国男子代表のエース、ペリー・ベーカー(30)。長い脚でタックルを飛び越えて疾走するスタイルは「私の目標。ステップを切る間合いやプレー選択を研究しています」。身長168センチで股下84センチ。モデル級のプロポーションと驚異の脚力が日本の秘密兵器になる。

<寺田明日香(てらだ・あすか)> 1990(平成2)年1月14日、札幌市生まれの27歳。東京フェニックス所属。168センチ、57キロ。恵庭北高時代に100メートル障害でインターハイ3連覇。2008年から日本選手権3連覇。09年の世界選手権で日本代表。10年広州アジア大会5位。13年に競技を引退し、14年に結婚。同年に早大人間科学部に入学し、現在4年。昨年9月からラグビーを始め、同年12月の日本協会実施のトライアウトで合格。今年1月から同協会女子セブンズアカデミーに参加。

スピードに加え、明るいキャラクターも武器の大竹=埼玉・熊谷ラグビー場で

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◆七種競技全国6位 東京高3年・大竹風美子 名伯楽・森監督が電撃スカウト

 競技との出会いは、ラグビーの始祖・エリス少年の伝説を思い起こさせる。「体育の授業でバスケットボールをやっていて、ボールを持って走り出したんです。そしたら笛が鳴って」。「ちょっと来い」と先生の声。恐る恐る歩み出た大竹に掛けられた言葉は、まさかの「君、いいもんもってるね。ラグビーやってみないか?」だった。

 大竹の通う東京高ラグビー部は全国大会出場12回、昨春の選抜で4強に進んだ強豪校。体育の先生は同部を率いて17年の名伯楽、森秀胤(ひでつぐ)監督だったのだ。

 「それからインターネットで女子ラグビーの動画を見たり、リオ五輪を見たりして、この競技で輝きたいという気持ちになってきた」。当時は陸上の七種競技に打ち込んでいたが、高3時の高校総体6位を集大成にラグビー部の練習に参加。やがて「面白い子がいるよ」という情報が回り、今年1月には五輪で戦うサクラセブンズ育成を目指すユースアカデミーに招集された。

 50メートル6秒7の走力と砲丸投げ11メートル86のパワーがコーチ陣の目を奪った。身長195センチ近いナイジェリア生まれの父エディさんから受け継いだ長身(171センチ)はなお成長中。体重も「ご飯を毎食350グラム(1合強、中盛り2杯強)食べた。陸上時代の67キロから74キロに増えました」。東京五輪まで3年半。伸びしろ無限のダイヤの原石は20年には21歳になっているが、ラ組女子としてどこまでスケールアップているのか、楽しみだ。

<大竹風美子(おおたけ・ふみこ)> 1999(平成11)年2月2日、埼玉県川口市生まれの18歳。東京高3年。171センチ、74キロ。父はナイジェリア出身で母は日本人。足立十四中で陸上競技を始め、昨夏のインターハイで七種競技6位。大会後にラグビーに転向。50メートルのベストタイムは6秒7。今年1月から女子セブンズアカデミーに練習生として参加。今春から日体大。

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<サクラセブンズの転向組> 寺田をラグビーに誘った桑井は帯広農高から中京大まで円盤投げに打ち込んだ元陸上ガール。リオ五輪ではほかに主将の中村知春(アルカス熊谷)がバスケットボール、竹内亜弥(同)がバレーボールからの転向組。エースの山口真理恵(ラガールセブン)は小学校時代からタグラグビーをしてきたが、中学では陸上部へ。山口と同級生で小中時代から一緒にプレーしてきた鈴木彩香(アルカス熊谷)は高校でも陸上部に在籍した。

◆日本選抜メンバー発表 桑井、鈴木ら22人

 日本ラグビー協会は10日、沖縄県の残波岬ボールパークで開催される沖縄セブンズ(18〜19日)に参加する日本選抜メンバー22人を発表。リオ五輪メンバーから桑井亜乃、鈴木彩香、小出深冬(アルカス熊谷)ら6人、高校2年生の小西想羅(国学院栃木)、平野優芽(ラガールセブン)らも名を連ねた。

 寺田明日香、大竹風美子、松田凜日(ブレイブルーパスジュニア)の3人は練習生として12日からの事前合宿に参加。

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