極度の静電気恐怖症だ。俺より静電気が嫌いな人はかなり少ないのではないかと思う。
静電気というものを明確に認識したのは、俺が小学生の時、友達の家のベランダにいたとき、触ると必ずバチッとくる手すりがあって、そのとき嫌な感覚だなと思ったときが俺の静電気恐怖症の始まりだった。
小さい頃、俺が極端に静電気を嫌って、金属のものを素手で触れないものだから手袋とかはめていると、みっともない恥ずかしいからやめろと家族にたしなめられて、俺も克服したいと思いながらも、静電気との付き合いに少しは慣れたせいか昔より多少マシになったものの完全な克服には至っていない。
今まで俺の周りで俺みたいに挙動不審になるレベルで静電気を怖がる人を見たことがないのだが(毛皮モッコモコのコートを着てる人を見ると、お前死ぬ気か!と思ってしまう)、単に俺の辛抱が足りないだけなんだろうか。こんな状態で大人になって大丈夫だろうかと不安になることもあったが、なんとかかんとかだましだましやってきてしまった。
冬が来ると憂鬱になる。寒いからでもインフルエンザが流行るからでもなく静電気が来るからだ。可能な限り静電気に当たらないよう気を付けて生活しているが、今まで静電気の魔手にかからなかった年がなかった。
静電気といえば代表的なのが金属製のドアノブだが、てのひらでダイレクトに触るのはまっぴらごめんなので、誰も見てないときは接地面の少ない肘で開けたり(ひねるタイプは無理)、それが難しいようなら勢いよくドアの表面をバンと叩いて軽く放電させ、それからドアノブに触る。というかそういう触らなきゃいけない部分を木製にしてもらうのが一番なのだが、逆にそういうのは珍しい。
金属製のものは極力触れないようにしているが、ものによっては全然静電気が来ないものもある。だがそう思っていたらある日突然牙をむけられるときがあって、裏切られた!お前そういう奴じゃなかっただろうがよ!と思ってしまう。(最近のその代表例は金属でもなく「水」だった)
仕事選びにも支障が出る。たとえば俺には俳優の仕事はまずできない。ドアを開けなきゃいけないシーンなんて避けられないだろうから俺みたいな儀式をしてドアノブに触っていたらNG連発だろう。いやテレビに出る仕事自体無理だ。よく実験や罰ゲームで静電気に触ったりすることがバラエティ番組であるが、俺は全力で拒否して空気の読めない奴と罵られるだろう。できればでんじろう先生とは共演NGにしてもらいたい。こないだは料理研究家の人もテレビで電気ショックが来るゲームをやらされてて、料理研究家も楽じゃないなと思った。接客業はバイトでコンビニをやっていたがこれもあまり良くなかった。100人に1人くらいレジでお釣りを渡すときにパチッとなることがあって尻込みしてしまう。
静電気防止リストバンドってのもあるけど気休めにすらならなそうなので一度も買ったことはない。こんなにテクノロジーが発達した時代なのに、未だにレジ横とかにぶら下げられてる胡散臭いリストバンドしか発明されないのは本当に不思議だ。つけるだけで完全に静電気が抑えられる道具があってもいいだろうがよ。
完全に静電気と無縁な生活が出来ると思ってないので諦めてはいるが、まあ俺にできることは、年中高温多湿の国に永住するか、ゴムゴムの実を見つけて食べるくらいしかないんだろうなあ。